お話を聞かせていただいたり
外から見たりしていて思うのは、
糸井さんのところもロフトさんも
じょうずに場を作っている、というところなんです。
といいますと?
僕らは明日のご飯を食べなくちゃならないから、
場を作っている時間がないんです。
その切り口だけで見せて勝負している。
そのほうが手っ取り早いというわけです。
で、横着してたら
場を作るのを忘れちゃった(笑)。
いや、でも、それはそれで
スゴイじゃないですか。
いえいえいえ、
いい商品はいい場があれば
放っておいても売れちゃうわけです。
もちろん開発やその場を作るまでの苦労は
あったでしょうけど、正直申し上げまして、
ものすごくうらやましい品物です。
(笑)
僕なんかだと、
朝から晩までずっと置いておいても
誰も買っていきませんからね。
1個売れるとかじゃなくて、
「誰も買わない」んですよ。
それがまさに場を作ることを
忘れちゃったという意味なんです。
それって、落語みたいな話ですよね。
大工が大工道具を質に入れちゃう
「大工調べ」そのものじゃないですか。
そういう経験は現実にたくさんありましたよ。
たとえば、
「大根切ったり、にんじん切ったり」の
大根ですが‥‥。
商売道具ですよね、大根。
その大根を買うお金が
なくなっちゃうところまでいったりとか。
‥‥うわぁ。
そういう経験はたくさんしてますよ。
笑っちゃ悪いんだけど、笑っちゃうね(笑)。
ほかにもスーパーとかで金庫代わりに使う
替え銭(かえせん)を100円玉が1本、
1000円札が10枚のような感じで
全部で3万円をスーパー側からお借りするんです。
もちろん、帰りにお返しするお金ですよ。
最初に釣り銭を準備しておく、
ということですよね。
そうです。
ですがね、その‥‥このお金で
大根買っちゃうわけです。
(笑)。
ついでにお茶もそのお金で飲んじゃう。
あ、いや、これ、すごい昔の話ですからね。
えーっと、
100年以上まえのお話ですもんね(笑)。
そうですね‥‥あ、100年経ってますね(笑)。
でも、そういう具合にそのお金から
お茶したりメシ食ったりしちゃうんです。
でも、ちゃんと商品を売り上げて、
最終的にスーパーに3万円返せば
いいわけですから。
そうですもんね(笑)。
だけどね、そういうときに限って‥‥
雨降って来ちゃうんですよ。
うわぁ(笑)。
店頭販売ですからね。
雨が降っちゃったらもう1個も売れないんです。
さて、さっきのお釣りのお金どうしよう(笑)。
こんな経験はいくらでもしてますよ。
もうね、気の毒ですけど
おもしろいって言わざるを得ないですね。
(笑)。
僕も人に言えないようなことしてきましたからね。
まぁ、そういうことって年取ってから
ツケが回ってくる気がしてるんです。
きっとそうですよね?
えぇ、極端な話でいえば、
僕らの同業者で60歳過ぎまで生きてるのは
ほんのわずかですよ。
僕、いま64歳なんですけど、
これが早く死ぬのなんのって。
もうやることデタラメで、
めちゃくちゃ不規則不摂生。
僕なんかこれでも真面目なほうですよ。
ははぁ、そうなんですか。
それこそ、昔の芸人さんっていうのは
デタラメやって、いろいろ悪さしても
許されちゃうような部分ってあるじゃないですか。
ありましたよね。
でも、いまはそれを世間は絶対に許してくれない。
我々も同じです。
デタラメやっても冗談やっても
お客様が許してくれないんです。
うんうん。
ほかの商品と比較したりよくするんですよ。
「こんないろんな面倒くさいしかさばるものは
燃えないゴミの日にでも出しちゃえ!」とか
「こんなもの、裏山に埋めちゃえ!」とかって
やるわけです。
そうするとね、それを見ていたお客さまから
「裏山に埋めたら公害ですよ」っていう
ご意見が来るんですよ。
‥‥洒落、ぜんぜんないですね。
もうまったく通じないんです。
僕らもいろんなこと言われてますよ。
でも、いろいろな方が
いらっしゃるわけですから。
そうなんですよ。
でも、そういうことを言ってくるのが
僕らを受け入れてくださるデパートさんだとか
テレビショッピングのバイヤーだったりすると
これが少しカチンときますね。
そういった方たちってある意味、
味方とも言える存在ですよね?
そうですそうです。
それなのにそういうこと言ってくるんです。
たとえばあるものを掃除して
キレイにしたとします。
「キレイになりました」って言いたいんですけど、
そういう方たちから
「キレイになったという根拠を示せ」と
言われるんです。
えぇ?
しかたないからそういうときは
「ほら、見て!
キレイなんていうもんじゃない」って言うんです。
あぁ、なるほど(笑)。
ひとひねり入れるわけですね。
でも、いちいちいま抱えている問題が
すべて入ってますよね。
でも、そうやって戦うよりしょうがないんです。
(続きます)
2008-12-17-WED
(C)Hobo Nikkan Itoi Shinbun