その6 Mr.マリック
  Mr.マリックさんってデパートの
手品売り場の人だったんですよね。
 
  あ、そうみたいですね。  
  で、そのあとホテルオークラのバーにいて、
「ちょっといいですか」って言いながら
テーブルを回って、
マジックを見せてた人だったんですけど、
やっぱりこうなんか、同じ血を感じましたね。
 
  彼とは、ふたりでじっくり
話したことがあるんです。
それこそ同世代ですし、デパート出身ですし。
 
  うんうん。  
  その当時、日本ではマジシャンは
おまんまが食えない職業だったんですね。
だからデパートのマジック売り場で
実演販売人として働いてたりしたわけです。
でも、デパートのマジック売り場って
おもちゃ売り場なんですよ。
するとどうしても
子ども相手の商売になっちゃう。
 
  なるほど。  
  当然、同業者の僕のほうが
売り上げがいいわけです。
同じような仕事なら売り上げがいいほうがいい。
ということでこっちの世界に流れて来ちゃった
やつっていうのがけっこういるんですよ。
 
  あ、そうなんですか。  
  そういうやつらがマリックさんなんかと
いっしょにやっていたもんで、
紹介を受けたんです。
でも、彼なんかでも
現代になってすごく苦労しているみたいですよ。
 
  それはどういった部分でですか?  
  規制だとかそういう部分はもちろんなんだけど、
いやらしい客が増えてね(笑)。
どうも「知ってる知ってる」って言っちゃう
お客さんが増えてるみたいなんですよ。
 
  ははぁー、なるほど。  
  マジックって、知ってても言わない
暗黙のルールみたいなものがありますよね。
 
  ありますあります。  
  そのルールを平気で破るお客がいるわけです。
それこそまたこの話になっちゃうけど
洒落が通じないんですよ。
 
  でも、彼はうまくやってるというか。
底力があるというか、うまくやってますよね。
 
  すごいですよ。  
  名前変えたときがあったじゃないですか。
あぁいうの見てるとね、やっぱり
現場踏んできた人だって気がしますよね。
 
  でも、テレビに出られるようになるまでは
相当苦労なさっていると思いますよ。
あの方の手の平のタコ、見たことあります?
 
  いや、ないです。
何があるんです?
 
  あの人、手の平でものをつかめるんですよ。  
  へぇー。  
  知らん顔して、ものに触れると吸いつくように
くっついてるんです。
こう、必要に迫られたんじゃなくて
自然とそうなったってところがね、
やっぱりたいしたもんだよね。
 
  岡田さんには、マリックさんの
手の平のタコにあたるようなものって
何かあります?
 
  なんかあるかなぁ。
うーん‥‥なんにもないですね。
 
  しゃべり過ぎて唇が厚くなったとか(笑)。  
  もともと厚いんですけどね(笑)。  
(続きます)
2008-12-18-THU

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