世界の感じ方が少し変わるかもしれない
旅があるなら、行ってみたいと思いますか?

いろんな地域の方と関わる「ほぼ日あっちこっち隊」。
北海道では、増えすぎているシカの話をきっかけに
道東の西興部(にしおこっぺ)村にたどりつき、
さまざまな方と仲良くさせていただいています。

狩猟、釣り、きのこ狩りや山菜採りなど、
豊かな自然とともに、思い思いに暮らす人々。
あいまのおしゃべり。都市とは違う時間の流れ方。
固まっていた考えがほぐれてゆきます。

この魅力をいろんな方に紹介できたらと思っていたら、
エゾシカ旅行社さんのツアーへの企画協力のかたちで、
ほぼ日も関わらせてもらえることになりました。

知らない方も多い土地だと思うので、
ずいぶんしっかりめに紹介してみます。
あなたもぜひ、西興部に出かけてみませんか。

(写真=幡野広志)

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4. 西興部村にたどりついた理由。

 
そもそもなぜほぼ日が、西興部村にたどりついたのか。
経緯をあらためて紹介させてください。
きっかけは、ほぼ日あっちこっち隊の
山を愛するやすなが、近年ずっと、
ある問題について気になっていたこと。
それが、増えすぎたシカによる「食害」です。
食料が足りなくなったシカたちが、
山の木々や貴重な高山植物まで食べてしまい、
植生に影響を与えてしまっている状況があります。

 
またシカの増えすぎはほかにも、
「農作物被害」「交通事故」
「人の生活圏への出没」など、
日本のあちこちで大きな問題を生んでいます。
昨年からのクマ出没のニュースも象徴的ですが、
現在、人々の暮らし方の変化にともない、
野生動物と人間の世界の境界線が曖昧になって、
多くの問題が発生する事態が起きています。
(より詳しくは、以前の掲載記事
「野生動物の問題、みんなで知っておこうよ」
お読みください)

 
この「自然とどう共生していくか」は、
わたしたちがこれから考えていかなければならない
大切な社会問題のひとつです。
自分たちとしても基本的なことを知っておきたいし、
手伝えることがあるならお手伝いもしたい。
とはいえこれ、そもそも、
どのように考えていったらいいんだろう‥‥?
そういった意識から、ほぼ日あっちこっち隊が
まずお話を聞かせていただいたのが、
狩猟管理学の第一人者、
酪農学園大学の伊吾田宏正先生でした。

伊吾田宏正先生。(撮影:ほぼ日) 伊吾田宏正先生。(撮影:ほぼ日)

 
「シカが増えすぎている話が気になりながらも、
なにから学べばいいのかわからないのですが‥‥」
とお伝えしたところ、
野生動物との関わり方についての基本を
教えていただくと同時に、
伊吾田先生がおっしゃったのが、このことでした。
「まずは取り組んでいる現場に行ってみるのが、
いちばん理解が進むかもしれません」
そして教えていただいたのが、
「猟区」として、エゾシカの問題について
先進的な取り組みをしている
北海道の西興部(にしおこっぺ)村。

 
「猟区」とは、地域の管理者の方々が
猟のルールを自分たちで独自に決めていける区域のこと。
西興部村は、鳥獣対策の意識が高く、
必要な施設の建設なども積極的に行われています。
そこからみんなで現地を訪れ、
この記事でもすでに何度も登場している
西興部村のハンター・伊吾田順平さん
(実は伊吾田宏正先生の弟さんでもあります)を
中心とするさまざまな方に出会って、
いろんな話がすすんでゆきました。

 
都会や町に住んでいると、
「狩猟(ハンティング)」と聞いても、
自分たちの生活とはかけはなれたものに
感じられる方が多いのではないでしょうか。
お肉はスーパーマーケットで買ってくるもの。
ニュースで流れるクマの話も、怖いばかりで、
何を考えていけばいいのかよくわからない。
「ハンター」という人たちも、
まったく違う世界の人たちという認識かもしれません。
ですが順平さんをはじめ、西興部村で出会う
ハンターの方々は、狩猟が生活と地続き。
「日常で出会う人が、普通にハンティングもされている」
といったイメージ。
狩猟免許をお持ちの方も、多くいらっしゃいます。

順平さんの愛犬、アイヌ犬のチュプ君。
(この日は知らない人が多く、落ち着かないため、
いったん檻の中に避難中) 順平さんの愛犬、アイヌ犬のチュプ君。 (この日は知らない人が多く、落ち着かないため、 いったん檻の中に避難中)

革細工職人をされている、奥様の良子さん。
革なめしはなかなか大変な作業だそうですが、
エゾシカのやわらかい革から生まれる
アクセサリーはとても素敵です。 革細工職人をされている、奥様の良子さん。 革なめしはなかなか大変な作業だそうですが、 エゾシカのやわらかい革から生まれる アクセサリーはとても素敵です。

ゲストハウス「ガコッパー」の和さんも、
狩猟免許を持っているハンター。 ゲストハウス「ガコッパー」の和さんも、 狩猟免許を持っているハンター。

 
順平さんをはじめ、西興部村の人たちと話していると、
「狩猟」や「自然とともに生きること」について、
地に足のついたお話をたくさん聞くことができます。
一気に理解が深まる感じがあり、
野生動物の問題についても、
ただ怯えるだけではない向き合い方を
しやすくなる感じがあります。
「野生動物の問題について考えはじめるなら、
まずは行くといいと思います」
そうおっしゃった伊吾田先生の言葉について、
まさにそのとおりだったと感じました。

 
このあたりが、今回のツアーの背景です。
ですから今回の西興部村ツアーは、
いろんな方に実際に村に来てみていただき、
体全体で「野生動物との付き合い方」
「自然の恵みをいただきながら生活すること」
についての理解を深めてもらえたら。
そんな思いもあって、生まれているツアーです。
‥‥とはいえ。
参加してくださる方に伝えたいのは、
そうした「学び」の部分だけではありません。
「あっちこっち隊」をはじめ、
ほぼ日の地域プロジェクトのおおもとには、
「おもしろい場所だから知ってほしい」
「いいところだから行ってみて」
といった純粋な気持ちがあります。
西興部村であれば、なんといっても
エゾシカ肉をはじめとする、
自然の恵みのおいしさのすごみ。

 
シカ肉について「固くておいしくないのでは」
というイメージの方もいるかもしれません。
ですが、適切に処理された野生のエゾシカ肉は、
イメージを覆すおいしさ。新鮮でヘルシー。
本当にフレッシュなエゾシカ肉を食べてみたい方にも
おすすめしたいツアーです。
また、自分たちで釣った川魚の天ぷらや、
採取した山菜やきのこ料理などのおいしさも
ぜひ味わっていただきたいところ。
その土地の自然の恵みを、
暮らす人々たちがやっているように味わえるのは、
貴重であり、とてもたのしい時間だったりします。

 
同時に、緑あふれる北海道の山間の村で過ごす時間は、
それだけで非日常の嬉しさがあります。
森のなかを歩くだけで頭がすっきりするし、
人や建物が少ない場所で夜を過ごし、
朝を迎えるのも、元気が湧いてくる。
合わせて、アクティビティの途中、
ゲストハウスの「ガコッパー」に戻る途中に
「セイコーマート」(北海道のコンビニ)に
ちょっと寄ってなにか買ったり、
村のホテルにある温泉に立ち寄ったり、
そういう時間もたのしい。

 
そもそも、別の地域から訪れる場合は
「北海道に降り立つ」というだけで、
すがすがしい気持ちを味わえます。空が広い!
ですので、このツアーは
「野生動物の問題や生きることと食について
知る・考えるきっかけ」という部分が
ありながら、同時に
「そもそもおもしろい体験」が
いろいろ組み合わさったツアーなのだと
思っていただけたらうれしいです。

 
そんなたのしさを、参加者の方がみずから、
それぞれに見つけてもらう機会を作れたらと、
制作しているツアーです。

(つづきます)

2026-04-05-SUN

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