
世界の感じ方が少し変わるかもしれない
旅があるなら、行ってみたいと思いますか?
いろんな地域の方と関わる「ほぼ日あっちこっち隊」。
北海道では、増えすぎているシカの話をきっかけに
道東の西興部(にしおこっぺ)村にたどりつき、
さまざまな方と仲良くさせていただいています。
狩猟、釣り、きのこ狩りや山菜採りなど、
豊かな自然とともに、思い思いに暮らす人々。
あいまのおしゃべり。都市とは違う時間の流れ方。
固まっていた考えがほぐれてゆきます。
この魅力をいろんな方に紹介できたらと思っていたら、
エゾシカ旅行社さんのツアーへの企画協力のかたちで、
ほぼ日も関わらせてもらえることになりました。
知らない方も多い土地だと思うので、
ずいぶんしっかりめに紹介してみます。
あなたもぜひ、西興部に出かけてみませんか。
(写真=幡野広志)
- この西興部村ツアー、つづいてお伝えしたい
「ハンティング」や「釣り」などと並ぶ
大きな魅力のひとつが、独自の魅力を持つ
ゲストハウス「ガコッパー」での滞在です。
- 西興部村の中心部から少し離れた場所にある
中学校の校舎だった建物を改装したゲストハウスは、
どこか別世界のような趣もある宿泊施設。
職員室が食堂になっていたり、
黒板のあるワーケーションルームがあったり、
この場所ならではの空気で満ちています。
- ごはんがおいしいのもポイントで、
旅の途中に「ごはん+おかず+汁物」といった
日常的な献立を味わえてほっとします。
さりげなくエゾシカやクマのジビエ、
地元の牧場のおいしいチーズ、
裏庭でとれた野菜が登場するのも嬉しいところ。
- オーナーの浅野さん夫妻は
DIY精神に溢れた人たちで、
建物の中も外も「これはなんだろう?」と
思うものがあちこちに。
行くたびにちょっとずつ、
新しい工作が増えているのもおもしろい。
- この場所の独自性をあらわす象徴的なものとして、
裏庭にはなんと、中にも入れる
本格的な「竪穴式住居」があります。
この前でイベントがおこなわれることもあり、
ふしぎな集落のような感じもあります。
- 今回の西興部ツアー、あえてこの場所で
滞在していただくことにした理由が、
「日常とまったく違う時間や、
人々との関わりをたのしんでほしいから」。 - 運営されているのは、旅を愛するご夫妻の
浅野和さんと千世さん
(和さんもまた、狩猟免許を持つ
西興部村のハンターのひとりです)。
2016年に「ガコッパー」をオープンし、
現在10年め。
だんだんと人が集まる場所に育ててきました。 - もともと国内外をバイクで旅をしながら
型にとらわれず生きてきたおふたり。
どのような経緯で、西興部へやってきて、
ゲストハウスをやりはじめたのか、
お聞きした話を少し紹介させてください。
- ──
- おふたりは「ガコッパー」をされる前は、
バイクで旅をする生活をされていたんですよね?
- 和
- はい。ぼくは札幌が地元なんですけど、
昔からずっとバイクで家出状態で(笑)。
旅行者として国内を巡ったり、
アラスカに行ったり、ロシアを横断したり、
根無し草のように、ふらふらしていたんです。 - 途中からふたりで旅をするようになって、
「結婚して住む場所を探す」みたいな感じで
海外も行ったりしてたんです。 - けど、あちこちまわってみて、
「やっぱり住むなら日本がいいね」となったんです。
日本はごはんもお酒もおいしいし、
お城、お寺、伝統芸能などもすばらしいから。
- ──
- それで、住むなら西興部だ、みたいな?
- 和
- そうですね。
とはいえすぐに西興部に決めたわけでもなくて、
「日本をあらためてまわって、暮らす場所を探そう」
みたいに、2人で別々に
日本をまわったこともありました。
- 千世
- それって意味あるのかって感じですけど(笑)、
くまなく見ていい場所を探そうと、
「それぞれバイクで西回り、東回りで
日本をめぐって、最後に宗谷岬で落ち合おう」
みたいなことをやったりもしたんです(笑)。
- ──
- そういうなかで、西興部を見つけて?
- 和
- ええ。まあそれも、なんとなく縁が深まって、
という感じですけど。 - ある時期、西興部村のキャンプ場が気に入って、
しばらく滞在してたんです。
テント張って、毎日釣りしたり、
山登りしたりして暮らしてて。 - で、あまりにずっといるものだから、
村の人たちとのコミュニケーションも増えて
「ここ、管理人を募集してるんだけどやらない?
夏の半年間だけなんだけど」
「あ、やってみようかな」みたいになって。
- ──
- へぇーっ。
- 和
- それで、そこの無料キャンプ場の
管理人をやるようになったんです。 - だからしばらくは、
「夏はキャンプ場の管理人、
冬は北陸の酒蔵で日本酒造り。
そのあいだは海外をめぐって」
みたいな生活をしていました。
- 千世
- そうやってるうちに、この元中学校の校舎の話も
自然に生まれて、
「住める場所があるけど見てみる?」
みたいに言ってもらって。
- ──
- すごい、だんだん縁がつながって(笑)。
- 和
- それで来てみたら、
半分放置されてるような状態でしたけど、
元学校ということと、この広さに惹かれて。
「学校を家にしていいんだ」というところに、
おもしろみと自由を感じたんだと思うんです。 - そこから思い切って、
「じゃあゲストハウスをやってみよう」
みたいにやりはじめた感じですね。
- ──
- もともとゲストハウスをやろうという思いも
あったんですか?
- 和
- そういうわけでもないけれど、
ぼくらも旅するなかで、いろんなホテル、
安宿、ゲストハウス、ライダーハウス、
さまざまな場所にお世話になって、
いろんな思い出が宝物みたいになってるんです。 - だから
「自分たちがそういう場所を作れるかな」
とも思ったんですね。
- ──
- ここで暮らしていくことは、
千世さんも大丈夫でしたか?
- 千世
- もともと古いものが好きで、
この建物の古いガラスとか廊下とかの感じも
好きだったから、いいなとは思ったんです。 - まあでも最初はだいぶ汚かったから(笑)、
「ここをきれいにしなくちゃ」みたいな
使命感が大きかったかもしれない。 - この場所がもっときれいになって、
人が集えるようになったら、
お世話になってる村の人たちにも
恩返しじゃないけれども、
なにか役立てるかな、みたいな感じもあって。
- ──
- ええ。
- 千世
- あと、各地をバイクでまわりながら
人と接することは多かったんですけど、
「この土地はいいよ、おいで」みたいに
言われることって、あんまりなかったんです。 - だけど西興部村はなんか、
村のおばさんたちが何人も
「住みやすいよ。ほんといいとこだよ」
とか言ってて。 - 「ここはなんだかほかの場所と違うな」
「住んでみてもいいんじゃないかな」
と思えたんですよね。 - 移住でやって来る人で、合わなくて
出ていく人もやっぱりいるんですけど、
自分たちは気持ちよく暮らせてて、
うちらには合ってたんだなあって思いますね。
- 和
- あとぼくとしては、この場所の
「何もないゼロスタート」という部分に
しっくりきたのもありますね。 - 西興部村に移住を決めた大きな理由に、
「誰も知ってる人がいなくて、なんのコネもツテもない」
というのがあったんです。
そういうフラットなゼロの状態に、
自分を1回置いてみたかったんです。 - 「そういうところで、どこまでできるのかな?」
「自分は何者にもなれるんだ」
みたいなことをやってみたくて。
- ──
- ああ、ゼロスタート。
- 和
- もともと「村人(むらびと)」にも
憧れがあったから、
これはチャンスだとも思って(笑)。
ここで暮らしはじめて、
俺、ようやく村人になれたんです。
- ──
- 憧れの村人(笑)。いいですね。
- 「ガコッパー」のおもしろさとして、
けっこう一から作っちゃってるところが
あると思うんですけど。
なんと裏庭には「竪穴式住居」まであって。
- 和
- そうですね、最初からそこまで
構想があったわけでもないんですけど(笑)。 - でも、国内外あちこち行きながら
博物館や古い遺跡などを訪れていると、
大昔の住居って、どんな民族も、
だいたいみんな穴掘って、木を立てて、
三角の家を作ってるんですよ。 - だから「バック・トゥー・ベーシック」
じゃないですけど、自分もそういう
建物を作ってみたいな、住んでみたいなっていう。
- ──
- やりたいなと思って終わりじゃなくて、
実際にやっちゃうのがすごいですね。
- 和
- まあ思いつきというか、ノリもありますけど(笑)、
そうやって、生きることだとか、
暮らすことについて考えてみたいなって。 - ちょうど、そんなのできたらいいなって
思いついたタイミングで、
北海道浦河町出身の浦川治造さんという、
アイヌ民族の長老(エカシ)で、
関東圏でアイヌ文化の伝承・普及活動を
長年牽引されてきた方との出会いもあって。 - その方と話すなかで
「つくるならやるよ。手伝うよ」
と言ってくださって、
一緒に作らせてもらったんです。
これまたものすごくおもしろかったんですけど。 - とにかくこの「ガコッパー」は自由な場所で、
いろんな出会いのなかで、
自分がやってみたいことをひとつずつ、
どんどんやってみている感じですね。
(つづきます)
2026-04-06-MON
-
こちらは、株式会社ほぼ日がさまざまな地域の方と
コンテンツを作る「ほぼ日GO!」との連動企画です。
読み物やイベントをはじめ、さまざまな企画を
おこなっていきますので、ぜひご覧になってみてください。

