世界の感じ方が少し変わるかもしれない
旅があるなら、行ってみたいと思いますか?

いろんな地域の方と関わる「ほぼ日あっちこっち隊」。
北海道では、増えすぎているシカの話をきっかけに
道東の西興部(にしおこっぺ)村にたどりつき、
さまざまな方と仲良くさせていただいています。

狩猟、釣り、きのこ狩りや山菜採りなど、
豊かな自然とともに、思い思いに暮らす人々。
あいまのおしゃべり。都市とは違う時間の流れ方。
固まっていた考えがほぐれてゆきます。

この魅力をいろんな方に紹介できたらと思っていたら、
エゾシカ旅行社さんのツアーへの企画協力のかたちで、
ほぼ日も関わらせてもらえることになりました。

知らない方も多い土地だと思うので、
ずいぶんしっかりめに紹介してみます。
あなたもぜひ、西興部に出かけてみませんか。

(写真=幡野広志)

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7. 「エゾシカ旅行社」のツアーって?

 
いろんな方向から西興部のツアーや
ハンティングについて紹介しているこちらの記事。
つづいては、今回のツアーを作られた
「エゾシカ旅行社」の
中根宏樹さんと萌さんのお話をご紹介します。
いつも話していて笑顔の絶えない、
たのしいお人柄のおふたりです。

──
「エゾシカ旅行社」っていい名前ですよね。
今回のツアーにもまさにぴったりですけど(笑)。
宏樹
前職の通勤中、バス降りたときにふと、
「あ、エゾシカいいな」と降りてきたんです。
北海道らしい名前をつけたかったんですけど、
「北海道」や「エゾ」だとちょっと違うなと。
で、エゾシカって北海道にたくさんいるし、
身軽で、軽やかな感じもあるし。
雄のシカはきれいで強そうなイメージもあるし、
覚えやすいし、これがいいかなって。
すごいよかったなあって思ってます。
みなさん「エゾシカさん、エゾシカさん」って
言ってくれるし、よく褒めてくださって。
「エゾシカ中根です」って電話すると
「あ、エゾシカさん」って(笑)。

──
エゾシカさんとほぼ日とのやりとりって、
どういうはじまりでしたっけ?
宏樹
ぼくらのほうでも西興部での
狩猟のツアーをやりたいなと思って
ハンターの順平さんとやりとりしているときに、
ほぼ日さんがまさに西興部の活動を
はじめているという話を聞いて、
つなげてもらったのが最初ですかね。
──
そうでしたね。
ほぼ日としてもツアーをやりたいけれど、
自分たち単体では難しさを感じていたときだったので、
あまりにばっちりのタイミングだったんです。
宏樹
そうですね(笑)。
──
今回のツアー紹介に際して、
おふたりのされている「エゾシカ旅行社」が
どういう旅行が得意な会社なのかを
教えていただきたいんですけど。
はい。夫婦ふたりでやっている会社で、
北海道にやってくる方のケアやツアーの手配を
中心におこなっている「着地型」の旅行会社です。
個人のお客さんが7、8割ですけど、
大手の旅行会社さんの外注を受けることもあります。
海外からのお客様もけっこう多いです。
──
おふたりがガイドもされますか?
あとはお仕事の分担とかって。
宏樹
添乗はほとんどないですね。
ぼくらは企画のコーディネート、送客まで。
仕事の分担は、テニスで言うなら(笑)、
私が前衛で、彼が後衛のイメージです。
前に出て話したりするのが私で、
後ろでお金周りのことや長期的な計画を
立てたりするのが彼ですね。
でも、なにかあったとき、できるだけ
どちらでも対応できるようにしておきたくて、
基本はふたりで動くようにしてますね。
──
普段はどういったツアーをされている感じですか?
宏樹
数で言えば、「闊歩(かっぽ)札幌」という
街歩きガイドツアーが人気ですね。
これもリクエスト型のツアーなんですけど、
毎日いつでも参加していただけて、
お申し込みがあったら、
ガイドの方を手配させていただく感じです。
あと、道内のいろんなところに行くような
長めの旅行のコーディネートも、
けっこうさせてもらってます。

──
こんなタイプのツアーが得意、
とかもありますか?
それで言うと、
「スペシャル・インタレスト・ツアー
(Special Interest Tour)」と呼ばれる、
目的がはっきりしたツアーが多いですね。
「釣りがしたい」とか「ハイキングしたい」とか、
やりたいことがはっきりある方の旅行を
サポートさせていただくのが得意かもしれません。
宏樹
あとは「サイクリングしたい」
「トレッキングしたい」
「アイヌ文化のことをもっと知りたい」とか。
──
たしかに目的が明確な旅行。
たとえば2月に道東に行くイギリスのグループは、
「とにかく鳥の写真を撮りたい」ということで
12日間ずっと鳥をめぐる旅行をされるんですけど、
私たちはそこで、バスの手配とか、
宿の手配とか、道中で困ったときの
サポートとかをさせてもらってます。
そのツアーリーダーは毎年道東に来られてるから
すでに日本語もちょっと喋れるようになってて、
私よりトイレの場所に詳しいくらいですけど(笑)。

──
あぁ、いいですね。
もちろん、ぼんやりと
「北海道を見たい」みたいな方の
お手伝いをすることもあります。
よくあるのが、外国の方で、
東京、京都、大阪、広島みたいな
ゴールデンルート(定番の観光ルート)には
すでに行ってて、
「もうちょっと違うところへ」と思って、
たぶん離島の気持ちで北海道に来る。
そういうときは、
「北海道、よく知らないけどどんなとこ?」
みたいな感じなので、自然に興味があるのか、
食を楽しみたいのかなどを聞きながら、
ツアーを組み立てていく感じです。
──
これまで担当されてきたなかで、
特に印象にのこる旅行とかってありますか?
宏樹
そうですね。たとえば外国からの方で、
「船で釣りをして、船の上で寿司にして、
すぐ食べたい」
というリクエストがあったりしました。
だけど、それは簡単じゃなかったんです。
「刺身じゃない、寿司なんだ」と。
刺身だったら切って、醤油つけて食べればいいけど、
「いや、寿司でシャリごといきたい」という(笑)。
「その場ですぐ寿司」だと
大将を乗せなきゃいけないし、
釣ってすぐのお魚をおろす必要があるから、
そのときは
「できたとしてイカだね」ってところで落ち着いて。
だけどそのときは、さんざんコーディネートして
「よし行こう!」となったら、
どしゃ降りで中止で、残念でした。
結局、小樽の街をうろうろして、
それはそれでたのしんでいただけたんですけど。
──
外国の方って、希望が明確な方が多いですよね。
宏樹
けっこう主体性がありますよね。
で、ぼくらはどちらかというと、
そういう場面が得意かもしれません。
臨機応変なのもわりと得意で、
そういうリクエストに対応するのが
自分たちも好きだというのもあるし。
もしかしたら、臨機応変なものしか
やってないぐらいかもしれないです(笑)。

──
そんなに(笑)。
たとえばインドの旅行者の方って、
「自己主張が強くて、オーダーがかなりはっきりしてる」
とよく言われるんです。
直前での「やっぱりあれがしたい」などの変更も多い。
ひとつひとつ対応が必要で、手間がかかるから、
大手の旅行会社さんとかだと
なかなか個別にやりづらかったりするかも
しれないんですけど、
わりとうちはそういうのが平気なので、
たのしく担当させてもらってますね。
最近ウェブサイトにヒンディー語を載せたら、
インドのお客さんからお問い合わせも増えてて、
「インドからの方のご旅行、得意ですよ」
くらいに言えるようになれたらとも思っています。
宏樹
ぼく、個人的にもインド好きだから、
インドに営業に行きたい気持ちもあるし。
──
(笑)北海道ってインドからの
お客さまも多いんですか?
まだまだ少ないですけど、
すこしずつ増えている感じはありますね。
少し前に、札幌でインド映画のロケがあったんです。
雪の中で踊る系の作品らしいんですけど、
作品が出ると、そこからお客さまが増えるので、
公開したらまた多くいらっしゃるかなと思ってます。
──
北海道制作のインド映画、おもしろそうですね(笑)。
ただ、私たちはコーディネートをしながら、
受け入れる地域側の方のことも
すごく気になるほうなんです。
観光客が増えてほしくないと感じている
場所には送りたくないから、
そのへんの合意形成とか、周りのことを
けっこう重要視しながらすすめる感じはありますね。
──
じゃあ、ざっくりまとめると、
「エゾシカ旅行社」さんは、
目的のはっきりしたオーダーメイドなタイプの
旅行が得意な旅行会社というか。
そういう個性はあるかなと思います。
特に札幌だと、この規模感の、
こういう感じの旅行会社があまりないので、
そこで面白がってもらえてるところは
あるかもしれないです。
オーダーメイド的につくっていくやりかたって、
手間もかかるし、効率も良くないし、
たぶん利益も少なかったりして、
大手さんとかだとどうしても、
仕組みとしてなじまない部分があると思うんです。
でも、うちはふたりで
「これでやらせてもらえるならハッピーだよね」
みたいにやってるところがあるので(笑)。

──
新しいツアーって、
どんなふうに生まれるんですか?
宏樹
基本的には、人との出会いが
きっかけになることが多い気がしますね。
「エゾシカさん、面白いことやってますね」
みたいな話から声をかけてもらって、
いろいろ話すうちに、
「じゃあなにか一緒に作りましょうよ」となったり。
経験的に、なにかをすごく好きであるとか、
すごくがんばってるとか、情熱や思いのある方と
組ませていただくことが多い気がします。
私たちとしても、そういう方に出会うと
「なにか一緒にやりたいなあ」と思うし、
そういう方々からは、うちのやりかたは
好いてもらえることが多い気がしますね。

(つづきます)

2026-04-08-WED

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