世界の感じ方が少し変わるかもしれない
旅があるなら、行ってみたいと思いますか?

いろんな地域の方と関わる「ほぼ日あっちこっち隊」。
北海道では、増えすぎているシカの話をきっかけに
道東の西興部(にしおこっぺ)村にたどりつき、
さまざまな方と仲良くさせていただいています。

狩猟、釣り、きのこ狩りや山菜採りなど、
豊かな自然とともに、思い思いに暮らす人々。
あいまのおしゃべり。都市とは違う時間の流れ方。
固まっていた考えがほぐれてゆきます。

この魅力をいろんな方に紹介できたらと思っていたら、
エゾシカ旅行社さんのツアーへの企画協力のかたちで、
ほぼ日も関わらせてもらえることになりました。

知らない方も多い土地だと思うので、
ずいぶんしっかりめに紹介してみます。
あなたもぜひ、西興部に出かけてみませんか。

(写真=幡野広志)

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8. たぶん、こんな人に向いてるかも。

 
「エゾシカ旅行社」の
中根宏樹さんと萌さんのお話、つづきです。
今回のツアーがどんな人に合いそうかや、
おふたりが好きな旅行の話などを
聞かせてもらいました。

──
今回の、西興部村のツアーについて、
おふたりにはどんな思いがありますか?
宏樹
やっぱり西興部村は「猟区」という
ほかとは違う特別な場所で、
ハンターの順平さんもいるおもしろい土地だから、
まずはその魅力をうまくご紹介できればと思ってます。
そして、来てくださる方のなかに、
「こういう生き方があるんだ」
「こんな生活もできるんだ」
「ちょっと考え方が変わったな」みたいに
なにかしら価値観の変化があったらいいなと。
私は西興部村の
「心を置いておける場所」としての感じを
うまく伝えられたら、と思ってますね。
西興部って、ふるさとじゃないけど
関わりたくなる場所っていうか、
おばあちゃんとか、親戚の地元みたいな感じで
好きになれる場所だと思うんです。
なんかサードプレイス的な。遠いけど(笑)。
「気持ちがそこにもある」みたいな場所として、
すごくいいなと思うんですね。
私たち、札幌もすごく好きですけど、
同じ北海道でも、札幌みたいな場所とは
本当に別の面白さのある場所なので。
宏樹
だから自分たちも長く付き合っていきたいし、
今回も、爆発的に集客をしたいというよりは、
西興部村のことを好きな人を、
少しずつ増やしていけたらという感覚です。
あと今回は、こまかくお膳立てされた
いわゆるパッケージツアーの感じではなく、
また違う旅の面白さを表現できたら、
という思いもあるんですよね。
──
いわゆる観光ツアーとはけっこう違う?
宏樹
そうですね。
すべての行動がかっちり決まってて、
基本的にずっと説明を聞いていくみたいな
ツアーのかたちってあると思うんですけど、
いい意味で「ほっとかれる」、
もっと自由な感じにしたいというか。
実は自分は、ずっと説明を受ける感じの
ツアーがちょっと苦手で(笑)。
あまりにずっと話を聞きつづける感じだと、
旅の気分がでないというか。
──
もうすこし自由さがあるほうが
好みというか。
宏樹
そうなんですよね。
ぼくらが好きな旅行というのが、そういう、
ちょっと個人旅行感があるものというか。
海外のお客さんからも、よくその話が上がるんです。
「日本のガイドは、どうしてあんなに
大量に説明をしてくるのか」と。
その人ならではの話とかであれば
聞きたいんだけど、基本的な解説とかだったら
そこまでたくさんはいらないと。
もっと自由に、ほっとかれる時間とかも
あったほうがいいというか。
親切なこともわかるし、ありがたいけど、
調べてわかる部分は自分で調べるし、
特に「わーっ!」という景色とかを見てるときには、
まず自分で感じたいというか。
そういう旅行をしたい方、
けっこういらっしゃる気もしてて、
うちはそういうお客さんのツアーを
担当させてもらうことが多いんです。

──
たしかに、そういう自由さのある旅行って
いいですよね。
自分の感覚で味わう旅行というか。
宏樹
はい。今回の西興部はすごく
そうした方がいいと思うタイプのツアーですね。
特にハンティング同行とか、解体とか、
今回はそれぞれの参加者の方に
感じてもらうことが、なによりの醍醐味かなと。
だからぼくらも
「参加者の方が目の前で起きるいろんなことに
いちばん向き合えるようにするには?」
を考えてツアーを組み立てる必要があると思ってて、
情報量がめちゃくちゃ大事だなあと思ってます。
ただ、感じてもらうといっても
「さあ、いまから感じる時間です」
みたいなことだと、それはそれで萎えるから、
そうじゃないかたちでできたらと思ってます。
──
具体的にはどんなことがあるんですかね?
宏樹
たとえば1日目のアクティビティのあと、
夕飯までにすこし時間があるから、
参加者の方が
「ちょっと村の温泉にいってきまーす」とか
「セイコーマートに寄ってきます」とかが
できたりとか。
──
わぁ、いい!
そういう時間はうれしいですね。

あとは体調とかとの兼ね合いで、
順平さんと相談してもらって、その場で
「ちょっとゆっくりめのスケジュールに
しましょうか」とできたりとか。
幅をもたせたプログラムにしたいなと。
──
なるほど。そういうのも安心ですね。
今回の西興部のツアー、
「こんな人に向いてそう」みたいな
イメージはありますか?
宏樹
そうですね。
まずは、シカとか狩猟、野生動物のことについて
もともと興味があったり、気になっている方には、
きっとたのしんでいただけると思います。
私、まわりで話してたら、
けっこう女性で行ってみたいという方が
すごく多くて。
──
へぇーっ。
全然狩猟とか、具体的にはよく知らないし、
周りにやってる人もいないけど、
「そういう一般向けのツアーがあるなら
行ってみたい」という人たちがすでにいて。
どこに惹かれるのかを聞いてみたら、
「いまの自分とは全然関わりがない世界だけど、
知っておいたほうがいいと感じるから、
どうおこなわれているのかを知りたい」って。
未知の世界、かつ、知っておきたい、みたいな。
「生活についてちゃんと考えておきたい人」というか。
ほぼ日の読者の方にも、そういう方って
多いようなイメージがあるんですけど。
自分たちの食べているものとか、
住んでいる世界について、
きちっと知ろうとしている方だと、
けっこう興味があるのかなと思っています。
──
ああ、そういう方は絶対いいですね。
宏樹
あとは、これまであちこち旅行に行っていて、
「次の行先、どうしようかな?」
と探している人にもいい気がします。
西興部村って、ほかの場所と違った刺激があって、
次の旅行や自分の生活のヒントにも
なると思うんです。

「にしおこっぺ? 聞いたことない!」
みたいな人もぜひ。
「西興部」と聞いてすぐに場所がわかる人って、
けっこう少ないと思うんです。
道内の方でも「あれ、どのへんだっけ?」
みたいな方が多い気がしてて。
宏樹
道内の人も来てくれる可能性あるよね。
全然あると思う。それこそ札幌からとかも。
あとは都会に疲れた看護師さんとか、
OLさんにも、ぜひ来てほしい。
「森に行きたい」みたいな感じでやってきて、
日常から離れた時間を過ごして
「ああ、よかった」みたいな体験ができると思う。
──
めちゃめちゃピンポイント(笑)。
でも、ほんとに豊かな魅力のある場所だと思うので、
「よくわからんけど、とりあえず飛んで行くか!」
みたいな気持ちを持てる方だったら、
飛行機で降り立ったときから、
「おっ、来たぜ北海道!」みたいに
おもしろがってもらえるとは思ってますね。
──
ちなみに、さきほどちらっと
「説明が多すぎるツアーは苦手」みたいなお話も
ありましたけど、
エゾシカ旅行社のおふたりが
個人的に好きな旅行って、どんなものですか?
そうですね。
私もやっぱり自分が行くなら
自由度の高いツアーが、
いちばんワクワクするかもしれません。
彼と会ったばかりくらいのとき、
初めてバックパックを背負って
タイと北京に2週間ぐらい一緒に行ったときに、
「ああ、これだ! 私はこういうことを
やりたかったんだ」と思ったんです。
宏樹
えー、マジ?!(笑)
はじめて聞いた。

そう(笑)。ずっと歩いて、土地の人と喋って、
土地の人からおすすめしてもらったお店に行って、
また喋って、食べて‥‥とかをやりながら、
「ああ、これすごい好きだなあ」と本当に思って。
そういう旅行を自分もやりたいし、
いま、旅行を仕事にしながら、そういうたのしさを
いろんな人にも紹介したい感じだと思うんです。
──
なるほど。
宏樹
ぼくは学生の頃、よくバックパックを背負って
1か月とか海外に行ったりしてたんですけど、
旅っていまもそのイメージが強いんです。
やっぱり土地の人たちと喋りながら旅行をしたいし、
ガイドブックに載ってる場所にも
有名な観光地とかにも行くけど、それはきっかけというか。
名所を見てまわって終わりじゃなくて、
そのときどきで自由に動けるような感じが
いいなあと思ってて、そういう旅行が好きです。
──
そういった旅行が好きなおふたりが、
つくった旅行会社というか。
そうですね。
それで言うと私たち、ふたりとも同じ大学で、
観光についての研究をしてたんですけど、
マカオでおこなわれた
「ツアーコンテンツを作りましょう」という
学生コンペに一緒に参加したことがあるんです。
そのとき、私たちのチームが、
ぶっちぎりの最下位をとったことがあって。
あんな滑る?っていうぐらい滑って(笑)。
宏樹
そう。笑っちゃうぐらいのダントツで。
──
あ、コンペでツアーの提案をしたけれど、
ものすごくうまくいかなかった?
はい(笑)。私たちは4人のチームで
「歩く旅」というのを提案したんです。
マカオをとにかくずっと歩いて歩いて、
そのなかで自由に何かを感じてもらうツアー。
「ここからここまで、この通りを歩いて移動」
とかをすごい緻密に考えて、
みんなで「ここの動線はいいね」とか、
「ここからならあれがこう見える」
「歩かないと見えない」とかを
ひとつずつやって、ルートを作って。
宏樹
「エッグタルトをこの店で買って、
食べながら外を歩く」とか。
発想はけっこういまと同じで、
自由さや偶然の出会いを重視してて。
──
おもしろそうー。
たぶんそういう旅が好きな人だと、
すごくおもしろがってもらえる
プランだったと思います。
いまでもあれはいいと思ってるんですけどね。
あの提案はかっこよかったよね。
宏樹
かっこよかった。
絶対自分はおもしろいと思うけど。

私も大好き。
あの自分たちのルートで、一回行きたいね。
でもそれは、向こうの要望に全く合ってなかった。
主催者の人たちが求めていたのは、
もっとスタンダードな、日本の若い世代向けの、
マカオの一般的なパッケージツアーだった。
だからダントツの最下位(笑)。
──
つまり、そういう、自由さのある、
参加する人たちが自分たちの感覚を
はたらかせてたのしむ旅行を提案したいのが、
エゾシカ旅行社さんの個性というか。
それはありますね。
だからエゾシカ旅行社は、
あそこからはじまってるような気がします。
私たちはその後もずっと15年ぐらい、
いまに至るまで、そういう提案を
「こういう旅行おもしろいですよね!」
って、やっていて。
だけどいま、そのスタンスのまま
少なからずお金をいただけていることに、
私はもう希望を感じています(笑)。
宏樹
そう、出すとこが合ってればいいんだと。
そういうのが好きな人たちに、
提案していけたらいいなと思っていますね。
──
いい話ですね。
最近、なんかそういう旅行をやりたい人、
増えていそうな気がしますし。
そうですよね。
前よりは共感を得られそうな気がします。
宏樹
うん、そういう旅行の面白さって確実にあるんで。
そういう体験を自分たちでも、
よりうまく提供していけるように、
ますます頑張っていけたらと思っています。

(つづきます)

2026-04-09-THU

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