
世界の感じ方が少し変わるかもしれない
旅があるなら、行ってみたいと思いますか?
いろんな地域の方と関わる「ほぼ日あっちこっち隊」。
北海道では、増えすぎているシカの話をきっかけに
道東の西興部(にしおこっぺ)村にたどりつき、
さまざまな方と仲良くさせていただいています。
狩猟、釣り、きのこ狩りや山菜採りなど、
豊かな自然とともに、思い思いに暮らす人々。
あいまのおしゃべり。都市とは違う時間の流れ方。
固まっていた考えがほぐれてゆきます。
この魅力をいろんな方に紹介できたらと思っていたら、
エゾシカ旅行社さんのツアーへの企画協力のかたちで、
ほぼ日も関わらせてもらえることになりました。
知らない方も多い土地だと思うので、
ずいぶんしっかりめに紹介してみます。
あなたもぜひ、西興部に出かけてみませんか。
(写真=幡野広志)
- 紹介記事も終盤。滞在日のある夜、
ゲストハウス「ガコッパー」の和さん、
「エゾシカ旅行社」の中根さん、
ほぼ日あっちこっち隊の田中で話した
西興部の不思議な魅力の話をご紹介します。
- 中根
- ‥‥いま、こんなふうに夜、
あいた時間にみんなで話していますけど、
西興部に来て「ガコッパー」に泊まっていると
こういう時間も生まれるし。
- 田中
- ここでの語らいという。
- 中根
- そうですね。
こういうゆったりとした時間って、
作ろうと思って作れるものじゃないから、
ツアーに取り入れるのはすごく難しくて。
でも「こういうのがいいじゃない!」と思ってて。
旅行会社をやりながら、そんな時間を
提供できたらなという思いもあるわけです。
- 田中
- それで言うと、去年このガコッパーに来たときに、
裏庭で焚火をした時間もめっちゃよかったです。
同じ時間をすごすことで、一体感も出て。
やっぱりいろいろ話して、みんな仲良くなるし。
- 和
- あー、焚火よかったですね。
- 田中
- とくに何をしたわけでもないんですけど。
肌寒い中で喋ってる人もいるし、
ただただぼーっとしてる人もいるし、
ひたすら飲んでる人も、
ずっと火に薪をくべてる人もいて。 - 都市で暮らしてる人たち、みんな実は
こういうことをやりたいんじゃないかな?
とはけっこう思いました。
- 和
- そうですよね。火ってやっぱり最高で。
もちろん、毎回焚火をやれるかというと、
その日のぼくらの余裕のありなしとか、
お客さんの人数、雰囲気とかもあるんですけど。 - だけど、そういうみんなで過ごす時間を
どう作れるかは、ぼくらも宿をやりながら、
いつも考えてることではあるんです。 - 今週だと、ガコッパーの裏庭で粘土を積み上げて、
窯をつくるワークショップを
やってますけど、そういうこともそうだし。
- 田中
- あ、窯づくりもたしかに、そういう時間ですね。
みんなで一緒になって同じことをやって、
いい時間が過ごせるという。
- 中根
- しかも窯ができることで、
「ガコッパー」自体でできることも増えますし。
- 和
- 最近、人間の生活に欠かせない
火や土や水などさえあれば、
そこからいろんなものがはじめられるって、
ちょっとわかってきたんです。
- 田中
- 西興部は、水系の魅力もなにかあるんですか?
- 和
- 水は、地下水はもちろん、
ウエンシリ岳とか、
ちょっと向こうに行ったところにある
拳骨(げんこつ)山の山水系もすごくきれいで。 - ぼくらが西興部に住むことに決めた理由に、
水のよさはひとつありますね。
夏の水でも、いろんなのがあるんです。
- 中根
- いやあ、そういうのを聞いたら、
やっぱり来たくなりますよね。
水のことなんて、日常的に触れていても、
考える機会がないですから。
- 田中
- ないですね。
- 中根
- それがここへやってきて、
「そうなんだ、全部違う水だよな」とか
聞いた話が、いろんな気づきの
きっかけになるかもしれないし。
- 和
- ここでの生活自体が、そういうことを
いろいろと考えさせられる時間でもあるんですよね。 - 火、土、水とかの話もそうだし、
狩猟、畑、作物とかもそうですけど、
人間が生きていく基本のようなことを
じっくり体感しようと思ったら、
西興部村はほんとにもう、
すごくたのしめる場所だと思います。
- 田中
- 西興部って、北海道の別の地域の
人たちからしても、
「ここはちょっとほかと違うぞ」
みたいな感じがあるんですか?
- 中根
- それはそうだと思いますね。
たとえば札幌なんて、生活が完全に違うし。
- 和
- 面白いのが、札幌や旭川などの
都市で暮らすライダーの人が
泊まりにきてくれることも多いんです。 - そのとき、最初に来る理由はやっぱり
「ここを拠点にオートバイで走るのは面白そう」
とからしいんです。
だけど、実際やってきて、ここでの生活とか、
僕らのワークショップやイベントに関わるなかで、
「この場所はすごくいろんな気づきがある」って
言いはじめる人がときどきいて。
- 田中
- へぇーっ。
- 和
- 忙しく働くなか、無理やり作った休みに
バイクで北海道を走りまわるだけで
たのしいんだけど、
「ここに来たら、自分の持っていた
価値観みたいなものがひっくり返る」とか言ってて。 - 「あ、生活ってこれでいいんだ」みたいな発見が
あるみたいなんですよね。
- 中根
- おおー。
- 田中
- 西興部にはいったい、なにがあるんですかね?
- 和
- うーん‥‥でも、具体的になにがあるとかは
けっこう言いづらいんです(笑)。
西興部村の良さって、ほんとに、
来てみなきゃわからないことだらけじゃないですか。
- 中根
- そうかもしれない(笑)。
- 和
- この場所にしても、ぼくらは観光地や名所を
作ったわけでもないし、
ただ、廃校になった校舎を再利用して、
自分たちが暮らしながら
ゲストハウスにしただけなんです。 - でも、「なんかおもしろそうだから」って
あれこれ作ったり、ときどきイベントとかを
やるようになったら、なんとなく集落みたいに
人が集まるようになった。
それだけなんですよね。
- 田中
- たしかに集落感、ありますね(笑)。
- 和
- だからわかりやすい観光とかは別になくて、
暮らしているだけといえば、暮らしてるだけ。 - むしろ自分自身が、この学校に暮らしながら
お客さんやこの土地からいろんなことを
勉強をさせてもらってる、みたいなノリですよ。
- 田中
- だけど、この場所がいいのが、
集落なんだけど、全然クローズドじゃないというか。 - 「こういう人じゃないと来れません」
みたいな感じはまったくなくて、誰でも来れる。
過ごし方も自由で、
夜も、こんなふうにみんなで喋っててもいいし、
別に普通に宿泊だけしてもいいし。
- 和
- その意味ではここはもう、自由ですね。
「こうしなきゃいけない」はなくて、
お客さんもみんな、過ごし方はフリー。 - ソロのライダーの旅人が多いですけど、
家族も多く来てますし、ハンターさんも来るし。
こうやってね、なんかほぼ日さんとかもいて。
- 田中
- こういう、よくわからないような人たちも来て。
- 和
- よくわからないような人たち(笑)。
- 田中
- 旅行会社をされている中根さんとしては、
どのあたりに西興部村の魅力を感じてますか?
- 中根
- いわゆる一般的な観光ツアーに行くとして、
もちろんたのしいんだけど、
そのなかで自分の価値観とかが影響を受けることって
そんなにないと思うんですよ。 - だけど西興部村で過ごす時間ってなにか、
自分の深いところに響いてくる気配が
ちょっとある気がするんです。 - 今回のツアー? プログラム?でも、
そういうものを渡せたら最高だなあと思うんですけど。
- 田中
- 「2泊3日のワークショップに参加する」
みたいな感じもあるかもですね。
- 中根
- あ、そうですね。
- 和
- ちょっとホームステイに近い感じも
あるかもしれないです。
この村のリアルなライフスタイルに、
そのまま触れる時間。
- 田中
- ホームステイ感、ありますね。
- そしてホームステイみたいなことって、
実は大人になっても
ちょっとやりたい気持ちはあるんですよ。
- 中根
- そうですね、そうですね。
- 和
- だから、なんでしょうね。
- 西興部村って、
北海道で3番目くらいに人口が少ない村で、
たぶん観光が無い場所と思われていて、
観光要素が極小で、観光案内所すらないんです。 - そこで「じゃあ何があるんだよ?」
となったときに、まずは、狩猟があり。
プラス、狩猟に関わって生きている
順平さんだったり、僕らだったりの村人がいて。
その生活には、肉だったり、野菜を作って
持って来てくれたり、地域の資源を活かしながら
生きている人たちもいて。 - 狩猟とか採集とかって、
都会の人からすると非日常だと思うんですけど、
そういう生活に触れて、たのしんでもらうっていう。
- 田中
- いま、自分自身が都市で暮らしながら
日常があまりに情報中心すぎるから、
そうじゃないことをしたい思いがけっこうあるんです。
「情報」より「体感」をやりたい。
そっちがちょっと足りない。
- 中根
- ほんとにそうだと思います。
誰かの写真を見て終わりとかじゃなくて、
自分でわざわざ行って、体験するようなことがしたい。
- 和
- そうですね、情報は情報でしかないですから。
- で、ここだと暮らしのなかに
五感を働かせる部分が多くて、
食とか水とか土とか空気とかに
実際触れて感じるおもしろさもあって。
スマホやPCの画面からでは
まったく得られない刺激を得ることができて。
出会いとかもあって。 - そこで「生きるとは」みたいなものを感じる。
- そういう旅先って、やっぱり自分も
行ってみたいなあと思いますけどね。
- 中根
- わかります。
- 和
- そういう意味では西興部村って意外と、
北海道の中でも最後のほうに残る
いい場所という気もします。
何もないがゆえに(笑)。
- 田中
- いわゆる観光はないけど、
「ぜひ行ってみてください」と思える、
不思議な土地?
- 中根
- そうですね。
ただ、おもしろがるにはちょっとコツとか、
きっかけがいる場所かもしれないので、
そこは今回、ツアーというかたちで、
橋渡しができるかなと思っているんですけど。
(つづきます)
2026-04-10-FRI
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