
世界の感じ方が少し変わるかもしれない
旅があるなら、行ってみたいと思いますか?
いろんな地域の方と関わる「ほぼ日あっちこっち隊」。
北海道では、増えすぎているシカの話をきっかけに
道東の西興部(にしおこっぺ)村にたどりつき、
さまざまな方と仲良くさせていただいています。
狩猟、釣り、きのこ狩りや山菜採りなど、
豊かな自然とともに、思い思いに暮らす人々。
あいまのおしゃべり。都市とは違う時間の流れ方。
固まっていた考えがほぐれてゆきます。
この魅力をいろんな方に紹介できたらと思っていたら、
エゾシカ旅行社さんのツアーへの企画協力のかたちで、
ほぼ日も関わらせてもらえることになりました。
知らない方も多い土地だと思うので、
ずいぶんしっかりめに紹介してみます。
あなたもぜひ、西興部に出かけてみませんか。
(写真=幡野広志)
- ゲストハウス「ガコッパー」の和さん、
「エゾシカ旅行社」の中根さん、
ほぼ日あっちこっち隊の田中での
ある夜の会話、続きです。
このツアーでやりたいことについて話しました。
- 中根
- 旅行会社をやってると、どうしても
「旅行とはこうあるものだ」みたいな、
わかりやすい型から
ツアーをつくってしまいがちで。 - いま話してるような、
いわゆる「観光要素」をフックにせずに
その土地の魅力を伝えるような旅行って、
なかなか表現が難しいんです。
- 和
- そうですよね。やっぱり普通は
「この場所の観光要素は何か?」を考えて、
そこから「何が必要」で「予算がどう」とか
導き出して、プランを作るじゃないですか。 - だから
「西興部は観光要素がないからツアーが難しい」
という声はよく聞きますし、
ぼくらもガコッパーをやりながら、
「そんなところに人に来てもらうのは難しい」
とかよく言われるんです。
- 中根
- そうですよね。
- 和
- でも本当は「観光要素がないから人を呼べない」
ということでもないと思うんですよ。 - ぼくがちょっとひねくれてるのか、
単純に「来る理由がないなら作ればいい」と思うし。
「何もないってことは、なんでも作れることだ」
って超バカな、ポジティブな考えもあって(笑)。 - 「自分」と「場所」が、人が来る理由を
作ることだってできると思ってて。
- 田中
- 「自分」と「場所」が、人が来る理由を作る。
- 和
- たとえば西興部って、災害が少なくて、
地震も少ないし、水災害もないんです。
いまのところ、熊災害も聞かないんですけど。 - そういういいところなんですけど、
地震が少ないぶん、温泉も少ないんです。 - で、温泉ってぼくも好きだし、
観光要素としても魅力だと思うんです。 - だから「温泉いいな」と思って、
自分たちが住む場所を探すなかで、
温泉地を候補にしたこともあったんです。 - だけど温泉って、それぞれの土地の経済と、
ものすごく繋がってるんですよ。
- 中根
- 利権が生まれますからね。
- 和
- そう。で、調べていけばいくほど、
なにかやろうとすると、そういう部分から
考える必要があるのがわかってきて。 - 結局、自分はそういう難しさを抱えてまで、
温泉地でやっていきたい感じには
ならなかったんです。 - むしろ自分にとっては、自分で風呂釜を作って、
自分で水を引っ張って来て、
自分で割った薪でお湯を沸かすほうが
断然価値があると思って。
- 中根
- これですよね。
- 和
- そういうおもしろさをうまく表現できれば、
お客さんも来てくれるんじゃないかと思ってて。
- 田中
- そういうおもしろさ‥‥つまり
「自分でつくるおもしろさ」みたいな?
- 和
- 「来てくれるお客さんと一緒に
観光要素に代わるものを
作っていったらいいんじゃないか」
みたいな感覚があるんですね。 - だからたとえば、さっきも話に出ましたけど、
今週、ガコッパーの裏庭で
「窯をつくるワークショップ」
というのをやっているわけです。 - 粘土を固めて積み上げる作業をやってて、
ゲストハウスにたまたま泊まりに来た人でも、
やりたい人には参加してもらってて。 - そうすると、案外みんなおもしろがって
一緒にやってくれるわけですね。
で、さらに「完成を見に来ます」とかも
言ってくれてて。
そういうのって、新しい観光だと思うんです。
これ、いいなと思って。
- 田中
- ああ、なるほど。
つまり「観光要素」のかわりに、
「一緒におもしろがれる現場」があるというか。
- 和
- そうそう。
だから、やって来る人たちは
「生きる」とか「住む」とかを
一緒にやるのがおもしろくて来る。
- 中根
- そうですね。
- 和
- つまりこれ、ぼくらの生活が
来るきっかけの、商品になるっていう。 - すごい時間がかかるし、ビジネス的には
まったく儲からなそうですけど(笑)。
この規模なら、成り立つ感じがあって。
それは、新たに観光要素を作るとかじゃないから、
すごく自然なサイクルのなかでできるし。 - そのぶん収入も少ないと思うんですけど、
別に俺、お金を儲けて
ベンツを買いたいわけでもないので。 - ぼくらはいままでずっと、
何か蓄えたいとか考えないまま、
「金もねえけど借金もねえ」でやってきてて。
お金が入ったときも、
「次の何かにつながればいいな」とか思いながら
お世話になった人にお酒を1本送ったりとかしてて、
流れを回すようなイメージでやってるんですね。 - 今後も、体さえ動けばこのスタイルで(笑)。
いろんな人たちとたのしめていけたらいいな
って感じなんですね。
- 田中
- おおー。
- 和
- 「うまく見せる方法」や「もっと儲ける方法」も、
なんとなくはわかるんです。 - でもそっちに行ってしまうと、
どこかファッションっぽくなるというか、
いま自分がおもしろがってやってることが、
ちょっとつまらなくなってしまう気がするんです。 - もちろん、そういうのをたのしめる人とか
ビジネス的な野望がある人とかなら
いいと思うんですけど。
- 中根
- そうですね。
ぼくも旅行を仕事にしながら、自分たちの活動が
あまりにビジネスだけの話になってしまうと、
モヤモヤする感じがあるんです。 - むしろ、やりたいのは、
自分たち自身も「いいな」と思う旅行を
参加する人たちにもたのしんでもらうこと。
来た人がそれぞれなりに土地と出会うこととか、
自由さとか、偶然性とかを含めたおもしろさ。
そういうことを味わう
きっかけを作っていけたらと思うんです。 - でも旅行会社としては、
その思いだけが強くなりすぎてしまうと、
それはそれで陳腐化しやすいジレンマがあって。
いまもずっと、どうやればうまくいくかの
チャレンジ期間なんですけど(笑)。
- 田中
- お話を聞いていると、
「ガコッパー」も「エゾシカ旅行社」も
根本の、大事にしたいところが
けっこう似ている感じがありますね。 - 「ちゃんと自分たちがおもしろいと
思えるものを届けたい」っていう。
それも「自分たちもおもしろがりながら」という。
- 和
- そうですね、そこは基本というか。
- 中根
- もちろん、難しさはあるんですけど。
- 田中
- まあ‥‥まずは、いま話しているようなことを
「おもしろそう!」と思ってくれる人たちに
気づいてもらって、
つながりが増えていくのが最初なんですかね。 - そうやってすこしずつ人が集まることから、
おもしろいことが増えていけば。
- 中根
- そうです、そうです。
そういうことかなと思いますね。
- 田中
- あと、さっきの「生活に参加する」という話と
つながってそうな話ですけど、
西興部とか「ガコッパー」って、
ぼくはいま2回目ですけど、すでに
「ただいまー」「おかえりー」みたいな
気分があるんですよ。
ある種の故郷感というか。
- 和
- ああ、その感じはぼくらもけっこう
思ってもらいたいと考えてて。
「行く場所」じゃなくて「帰って来る場所」に
なっていくといいなと思ってます。
- 田中
- 自然が豊かな場所だから、季節ごとの印象は違うし、
「ガコッパー」自体も変わっていくから、
何度も来るたのしさって、けっこうあって。
「足を運びたくなる場所ができるおもしろさ」は
合わせて伝えられたらと思いますね。
- 和
- 今日もみなさんが裏の窯づくりを
手伝ってくれたじゃないですか。
それも「ただいま」「おかえり」だと思うんですよ。
「これは前に自分が叩いた土だ」みたいな。
- 田中
- たしかに。生活の部分を一緒にやることで、
故郷感は増しますね。
- 中根
- で、今回のツアーの話でいえば、
このツアーに何度も参加してほしいとか、
そういうわけでもないんですよね。 - このツアーはきっかけになればよくて、
2回目以降はもう自分たちで
「次は西興部と周辺エリアをまわってみます」とかで、
来て、勝手に巡ってくれるぐらいでもいい。
- 田中
- そうですね。
- 和
- で、さらに言うなら、帰結として、
西興部じゃなくてもいいと思うんです。
「あ、こういう生き方があるんだ」と知って、
そのあとでその人が別の場所に
自分なりの西興部を見つけてもいい。
- 中根
- ああ、そういうことを表現できたら
すばらしいですね。
- 田中
- そっか。それもそうですね。
西興部にこだわらない自由なかたちで、
来た人たちそれぞれに、嬉しさが増えれば。
- 和
- ええ。それぞれの人にとっての
おもしろさが増えていくことが、
まずはやっぱり大事だと思うんで。
(つづきます)
2026-04-11-SAT
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