気仙沼の唐桑にある民宿「つなかん」。
ここにサウナトースターがやってきて以来、
全国のサウナ好きが集まる
ちょっとした人気スポットになっています。
このたび、そんな「つなかん」が
クラウドファンディングで支援を募り、
新しいサウナをつくることになりました。
もちろん言いだしっぺは、
つなかん名物女将の菅野一代さん。
なんだかおもしろそうな話なので、
設計担当の斉藤道有さんもお呼びして、
みんなでいろいろおしゃべりしてきました。
そうそう、いま全国で公開中の
映画『ただいま、つなかん』のことも
あわせてうかがってきましたよ。
菅野一代(かんの・いちよ)
斉藤道有(さいとう・みちあり)
美術家、
東北ツリーハウス観光協会代表理事、
DMO気仙沼地域戦略理事。
1977年、気仙沼生まれ。
宮城教育大学美術教育専攻卒業。
2001年より現代美術作品の制作発表。
震災後「3月11日からのヒカリ」や
「東北ツリーハウス観光協会」の主催をはじめ、
「気仙沼クルーカード」による
気仙沼市の地域経営や
観光のデザインにも取組んでいる。
ほぼ日のこれまでの登場コンテンツ
「100のツリーハウス」
- ほぼ日
- 新しいサウナは、
どこにつくる予定なんですか。
- 道有
- 防潮堤の向こう側です。
- ほぼ日
- ということは、海の近く?
- 道有
- 海のそばにある資材小屋です。
いまはツリーハウスの資材とかを
置かせてもらっているんですけど。
- 一代
- 糸井さんにもいっといてね。
「魚釣りできるよ」って(笑)。
海まで歩いて5歩。
- ほぼ日
- そんなに近いんですね!
- 道有
- 今回は一代さんの想いを
かたちにしようっていうのが強くて。
一代さんからは、
唐桑の海を見ながら入れる
サウナがつくりたいって相談されて。
- 一代
- あれも見てもらったら?
あの、なんていうの、設計図?
- 道有
- 設計図というより、
これは漠然としたイメージですけど。
なんだったらきょう、
このあと打ち合わせしようかって
話していたくらいで(笑)。
- ほぼ日
- おぉー、すごい。
ちょっとツリーハウスっぽいんですね。
- 道有
- 唐桑の海を感じながら
6人くらいのサウナがあって、
ゆったりできる空間もあってという、
そういう感じで進めています。
- ほぼ日
- クラウドファンディングもされるんですか。
- 一代
- そうそう、クラファンね。
海のそばの小屋だから、
じつは水道もなんにもなくって、
そこまで水道管を通すとなると
けっこうお金もかかるってことで。
やっぱり水風呂はあったほうがいいし。
- ほぼ日
- 水道管を引くとなると、
けっこう大掛かりな工事ですもんね。
- 一代
- でも、クラファンをするのは
お金のこともあるんだけど、
「みんなのサウナ」にしたいって想いがあって。
- 道有
- どっちかっていうとそれが強いよね。
- 一代
- うん、そうだね。
いろいろお金がかかるのはほんと。
でも、やっぱりいちばんは、
みんなでつくって、
みんなのサウナにしてほしくって。
- 道有
- 「できたから来てね」というより、
つくるところから関わってほしいねって。
- ほぼ日
- クラファンのスタートはいつなんですか?
- 道有
- 予定では3月3日なんですけど‥‥。
- 一代
- 一代の結婚記念日(笑)。
- ほぼ日
- あら(笑)。
- 一代
- それを目標にはしてるけど、
もしかしたらちょっと遅れるかも。
- 道有
- 遅くても3月中には
スタートすると思います。
- ほぼ日
- 関わってるメンバーは
一代さんと道有さんと‥‥。
- 一代
- ぜんぶで11人くらいかな。
トウホグサウナのメンバーがいて、
クラファン立ち上げ部隊もいて、
あと、私と娘のマリ。
サウナトースターを持ってきてくれた
ウェルビーの米田さんも入ってくれてる。
- 道有
- 米田さんはプロデューサーというか、
アドバイザーみたいな感じで、
全体をあたたかく見守ってくれています。
完成目標が5月末くらい。
できるといいんだけど(笑)。
- 一代
- いまはまだ古い小屋って感じだけどね。
津波にもどっぷり浸かったし。
- ほぼ日
- 流されずに残ったんですか?
- 一代
- そうそう。
なぜかうちの小屋が残った。
まわりの立派な唐桑御殿っていう
デッカい家は流されたのに。
でも、せっかく残ったんだったら、
みんなが楽しめる場所にしたいなって。
そういう想いもあって。
- 道有
- なんなら、ちょっと前まで
震災遺構が屋根に乗ってたよね。
浮き玉が引っかかってたり。
津波のときのがそのまま。
- ほぼ日
- そこまで津波を被ったんですね‥‥。
- 一代
- もともと養殖道具を置く小屋だったの。
で、事故のあとにすこし片付けして、
津波で壊れてたところは
道有くんにちょっと直してもらって。
で、そのまま使ってもいいよって感じで。
- 道有
- いまはツリーハウスの資材置き場。
- ほぼ日
- それにしても、
なんでその小屋をサウナにしようと?
- 一代
- なにかできないかなって
ずっと思ってはいたんだけど、
きっかけはやっぱり、
サウナトースターがつなかんに来て、
防潮堤の工事が再開して‥‥。
そうだ、あれいつだった?
スパの取材。
- 道有
- 去年の3月ですかね。
スパっていう雑誌があって。
- ほぼ日
- ああ、はい。
『週刊SPA!』ですね。
- 一代
- 去年、スパの取材を受けて、
そこで「サウナをつくりたい」
っていうような話をしたんです。
それがけっこう大きかったというか。
思ってたことをことばに出したら、
なんか実現させたいって思うようになって。
それで絶対サウナをつくろうって。
- 道有
- 『サウナを愛でたい』のときもいってたよ。
- 一代
- あっ、いってるかも(笑)。
やっぱり心ではずっと思ってたんだろうね。
ふつふつと湧きあがっていたというか。
海の見えるサウナをつくりたいなって。
- 道有
- ここ2年ぐらいだね。
- 一代
- 防潮堤の工事がはじまったくらいかな。
「あぁ、もう海が見えなくなるんだ」
っていうのもあったし。
- 道有
- 訳ありで止まっていた工事が
再開してね。
- 一代
- そしたらやっぱり
「海のそば」っていうのが頭から離れなくて。
もう海はいいやって思ってたんだけれど。
うん、でも、しっかり別れるのは
やっぱりつらいから。
- ほぼ日
- それで「海の見えるサウナ」を。
- 一代
- そんなことを思っていたときに、
ちょうど雑誌の取材があって、
思ってることをそのまま言葉にしたら、
それが固まったみたいな感じ。
そのとき取材してくださったライターの方も、
ずっとそのことを気にしてくれていて。
「サウナの件、どうなりました?」って。
- 道有
- じつは今回のクラファンのテキストは、
その方が協力してくれることになりそうで。
- ほぼ日
- じゃあ、ほんとにみなさんで
一代さんの夢を実現させようと。
- 一代
- ほんとだね、ほんと(笑)。
私はもうおんぶに抱っこで
「やりたいやりたい」って騒いで、
あっちこっちあっちこっち飛ぶけど、
みんながちゃんとギュッとまとめてくれる。
- ほぼ日
- 心強いメンバーですね。
- 一代
- うん、ほんと心強い。ほんとに。
- 道有
- みんなが手伝いたくなる話なんですよね。
なにより楽しいっていうのあるし。
クラファンをするなら
タイミング的にもいまがいちばんいいし。
- 一代
- 映画も公開するしね。
ちょうど注目してもらえるタイミング。
- ほぼ日
- ぜんぶがちょうど重なって。
- 一代
- だからここにきて、
一気に現実になりはじめたって感じ。
きょうもほぼ日さんが来てくれて。
道有くん、もうこれは逃げられないぞ(笑)。
- 道有
- そうですね、ふふふ。
あ、そういやサウナの名前、
糸井さんにつけてもらいたいなって。
- ほぼ日
- え、そうなんですか?
- 一代
- そうそう、糸井さんにつけてもらう。
- 道有
- あれ、ちがう?
もしかしてこっちが
勝手に思ってるだけだったりして(笑)。
- 一代
- えっ、そうなの(笑)。
- ほぼ日
- いやいや、ぼくが知らないだけで、
ちゃんと伝わってると思います。
というか、あらためて伝えておきます。
- 一代
- 糸井さんにいっといてくださいね。
あとでアワビのありか教えますから。
ご褒美にね(笑)。
- 道有
- 獲ったらダメだけど(笑)。
- 一代
- 見るだけだよね。
見るだけならいいもんね。
あとで「あそこにいるよ」って教えてあげる。
- ほぼ日
- ありがとうございます(笑)。
はい、ちゃんと伝えておきます。
- 道有
- じゃ、そろそろ小屋のほうに行きます?
- 一代
- そうだね、行こう行こう。
- ほぼ日
- はい、おねがいします!
(みんなで小屋に向かいつつ、次回につづきます)
2023-03-11-SAT
-
東日本大震災後から約10年間、
長い年月をかけて一代さんを追い続けた
ドキュメンタリー映画が完成しました!
たっぷり約2時間、
一代さんの歩みが語られます。正直に言って、それは、
元気が出る話だけではありません。
思い出すのが苦しい場面もあります。
それでも、震災をきっかけに出会った
学生ボランティアとの交流、
民宿を営む決意、
海難事故からの一歩。
明るく元気な印象が強い一代さんが
心の奥底で抱えていたものが
映し出されていて、
それは風間研一監督がそっと見守るように
カメラを回し続けたからなのだと思います。
一代さんは監督を
「かざまっち」と呼んでいました。
カメラの存在を忘れてしまうほどの
いい距離感で、
撮られたのだろうなと感じます。
一代さんに導かれるように
気仙沼に移住してきた
学生ボランティアたちの姿も、
わくわくするものがありました。ナレーションは俳優の渡辺謙さん。
音楽は気仙沼出身の
ピアニスト・岡本優子さん。
劇中、糸井重里もすこしだけ登場します。
全国の劇場情報など、
詳しくは公式サイトをご覧ください。映画『ただいま、つなかん』
監督:風間研一