
シリーズ第18弾の今回は、
福岡市美術館の近現代コレクションを拝見。
ウォーホル、ロスコ、バスキアからミロ、
松本竣介、桂ゆき、吉田博、中園孔二、
カプーア、グルスキー、塩田千春‥‥
そして菊畑茂久馬など九州派の面々など。
きらめきの所蔵作品の数々でした!
同館には見事な古美術部門もあって、
今回は取材できなかったんですけど、
2024年の
「ミュージアムキャラクターアワード」で
銀メダルに輝いた、
かの「こぶうしくん」には会えました!
お話くださったのは学芸員の忠あゆみさん。
担当は「ほぼ日」奥野です。
※展示替え等により、
現在は展示していない作品もあります。
手塚愛子《Certainty / Entropy(Japan 2-2)》2016
- ──
- 続けて、さらに織物の作品ですか。
- 忠
- はい、手塚愛子さんといって、
いまはドイツのベルリンと東京の2拠点で
活動しているアーティストの作品です。 - 織物を表現の手段に作品制作されています。
ご自身で考案した図柄を
きちんと専門の工房にお願いしてつくって、
それをほどく‥‥という作品です。
こちらは、オランダのテキスタイル美術館の
テキスタイルラボの職人さんとつくった織物を
用いていて、
他には、京都の西陣織に依頼した織物を
使用した作品もあります。
- ──
- わざわざつくって、ほどいてるんですか。
- 忠
- 手塚さんの場合は、
まず「元の図柄を考える」というところと、
それを「ほどく」というところに、
メッセージがあるんだろうと思います。 - 奈良時代の正倉院の宝物の中にあった
布の模様をベースにしながら、
その上に、
よく見ると電源のマークが描かれていたり。
手塚愛子《Certainty / Entropy(Japan 2-2)》(部分)2016 手塚愛子さんから作品のご説明をいただきました。「この織物は作家自身のデザインにより、8世紀の『紺地花樹双鳥文きょうけち』(正倉院蔵)を引用して織られています。その古代の染物の模様の中に、現代を生きる私たちを取り巻くさまざまなシンボルが散りばめられ、それ自体が装飾の一部として存在しています。その現代のシンボルとは、コピーライトマーク、@マーク、原発のマーク、ピースマーク、クレジットカード会社のシンボル、遺伝子のイメージ、放射線照射済みマーク、子宮のイメージ、バイオハザードマーク、などです。これらのシンボルが、古代の文様の中に見え隠れし、共存しています」
- ──
- あ、「VISA」って文字も書かれてる。
- 放射線の危険のマークみたいなやつだとか、
よーく見ると、いろんなものが‥‥。
- 忠
- はい。リサイクルのマークだったりとか。
- ──
- ほどかれたあとの色合いもいいですね。
どこかモネの《睡蓮》みたいな感じもします。 - そして、工藤哲巳さん。
広島市現代美術館で彫刻の作品を見ました。
- 忠
- 青森出身で、この方も海外拠点の作家で、
フランスで活動していました。
すでに亡くなられていますが、
これは「津軽凧」をモチーフにしています。
- ──
- 凧なんだ。やっぱり‥‥ってでも、
これが空を飛んでたら、
ちょっとコワくないですか‥‥!?
工藤哲己《殺せば生きる》1974
- 忠
- はい(笑)。津軽凧はあくまでベースで、
いろんな装飾を施して、
ほとんど原型をとどめなくなっています。 - そして、九州派のオチ・オサムさん。
- ──
- 本当にいろいろなんだなあ、九州派って。
- 忠
- そうなんです。
しかも、九州派の活動が収束してから、
70年代とか80年代に、
みなさん絵画へと戻ってくるんです。 - オチ・オサムさんも、
九州派の時代はまったく違うタイプの
絵を描いていたのですが、
やがて、こういう、初期CGみたいな、
クリーンな球体の世界を描いています。
- ──
- 多賀谷伊徳さん、サム・フランシス‥‥。
【左から右へ】サム・フランシス《無題》1978 多賀谷伊徳《塔陶歌》1975-76 オチ・オサム《球の遊泳II》1979
- 忠
- 1950年代に、岡本太郎が
「世界・今日の美術」展という展覧会を
仕切っていたんですけど、
このふたりは、
その展覧会の出品作家と設営のスタッフ、
という関係性だったんです。
- ──
- へええ、そうなんですか。
それがいまや、横並びで。
- 忠
- はい、並べてみました。
- ──
- そういうところがおもしろいですよね、
美術って。 - でも、岡本太郎さんって、
展覧会を企画なんてしていたんですか。
- 忠
- していたんです。
フランスの抽象美術「アンフォルメル」などを
日本に紹介する、画期的な展覧会になりました。 - オチ・オサムさんは、
岡本太郎に認められて評価を上げた方。
- ──
- そして、中園孔二さん。
- 忠
- はい。
- ──
- 以前、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館へ
個展を見に行きましたが、
こちらでも所蔵なさっていたんですね。
- 忠
- これは「寄託」です。
ご親族の方からお預かりしている作品。
- ──
- 若くして亡くなってしまいましたが、
いろんな描き方をなさる作家ですよね。
- 忠
- はい。この絵とはまったくちがう、
暗闇に形体を描き残していたりだとか。 - 久留米市美術館で3点か4点、
並んでいるのを見たことがありまして、
絵筆の調子がぜんぶちがうのに、
ぜんぶがすばらしかった。
絵がうまいって、
こういうことなのかなあと思いました。
- ──
- 中園さんについて、ギャラリストの
小山登美夫さんに取材したことがあって、
線と線の重なりを追っていっても、
どうやって描いたかわからない絵がある、
とおっしゃっていました。 - あと、描くのがものすごく早かったって。
キャリアは短いのに、
残した作品の数はとても多いそうですね。
- 忠
- ああ、そうなんですか。
- この作品でも、
かなり複雑なことをやっていますよね。
- ──
- そして、こちらは‥‥。
- 忠
- 鈴木淳さんという、地元の作家の作品です。
《IE4・家族の森》というタイトルで、
鈴木さんのひいおじいちゃん、
ひいおばあちゃんまでの家族アルバムから、
写真をコピーして
家族だけをくり抜いて箱に入れてるんです。
- ──
- コピーとはいえ人の写った写真を切るって、
かなり勇気が要りそうです。 - ちなみに、この音は‥‥何の音?
- 忠
- 箱に明滅するランプが入ってるんですけど、
通電するとき、
内部のバイメタルが熱で膨張収縮して
弾けるようなかたちで、
この「プンッ!」という音がするそうです。
- ──
- それもまた、雰囲気を出してますね。
- 家族写真から一転してグルスキー、ですね。
オークションでの落札価格が超高い写真家。
アンドレアス・グルスキー《株主総会》2001 ©Andreas Gursky / Courtesy Sprüth Magers / JASPAR, 2026
C5411
- 忠
- そうです。
- 企業の株主総会で経営陣が並んでる写真と、
けわしい山脈が合成されています。
その上には、世界的に有名な大企業のロゴ。
- ──
- 川のある風景だとかコンビニの店内を
高めの視点から広く撮るみたいな人ですが、
こういう写真も撮っていたんですね。
- 忠
- こちらの大きな絵は、浦川大志さん。
地元の若いアーティストで、まだ30代前半。 - 昔、自転車で福岡市内のギャラリーだとか
美術館をめぐって、
現代アート論議をふっかける高校生がいて。
- ──
- へええ。
- 忠
- 地元ではちょっとした有名高校生で、
大人たちに見守られていた感じなんですが、
その若者が大学に入り、制作をはじめ。
- ──
- それが、この作品?
- いい話だなあ。かつての名物的な高校生が、
地元の立派な美術館に
収蔵されるようになったんだ。
- 忠
- そうなんです。
- ちょっとお絵かきソフトみたいなタッチで、
風景の絵を描いたりしています。
【左から右へ】鈴木淳《IE4・家族の森》1998/2012 中園孔二《無題》2010 浦川大志《Saida-wo nominagara
tochi wo aruku》2017
(つづきます)
2026-04-05-SUN