ほぼ日の「老いと死」特集は、
佳境に入ってきました。
入ったからにはこの方に
ご登場いただかなくてはなりません。
みうらじゅんさんです。

このインタビューの動画は、
ほぼ日の學校でごらんいただけます。

>みうらじゅんさんのプロフィール

みうらじゅん

1958年、京都生まれ。イラストレーターなど。
武蔵野美術大学在学中に漫画家デビュー。
以後、作家、ミュージシャンなど、多方面で活躍。
1997年には「マイブーム」が
新語・流行語大賞のトップテンに選出。
「ゆるキャラ」の名づけ親でもある。
2018年、仏教伝道文化賞沼田奨励賞受賞。
著書に『アイデン&ティティ』『色即ぜねれいしょん』
『「ない仕事」の作り方』
『通常は死ぬ前に処分したいと思うであろう100のモノ』など。

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第5回 老々飲み会。

──
あきれられるくらいの「アウト老」になり、
不安は「不安タスティック!」で
吹き飛ばすんですね。
みうら
まぁ、こんなアウト老見習い生の僕でも、
不安なことはあります。
でもね、考えてもしょうがないことってのも
あるっていうことですよ。
お釈迦様はこの先のことについて
弟子に問われたとき、
何もおっしゃらなかったというのです。
それは、答えなくていいと思われたのか、
「答えがないこと」というのが
やっぱりこの世にはあるっていうこと
なんでしょうね。
僕たちは
正解があることばかり教わってきた気がします。
だから、答えがないことに対して
とても不安なんです。
実はみなさんも
うすうす気づいているのではありませんか。
世の中には、答えがないものが
いっぱいあるということを。

──
そうですね、重要な問いに、
答えがあったためしがないです。
みうら
「正解ってべつになかったんだ!」
ということがわかったときに、
そろそろ「老いと死」が
やってくるんでしょうね。
「覚悟」なんて言葉、
悟りを覚えるとも
読めますでしょ?
だから、だいたいのことがわかってないと、
なかなかお迎えがこないとも言えますよね。
──
「お前はまだまだだぞ」
ということなんですね。
みうら
長生きするためにはそれがいちばんだ、
ということで、たぶん、
年を取ると「若づくり」を
はじめられるんだと思います。
だからこそ僕は「老けづくり」を
提唱しているんです。
神仏はたいがい天界におられますから、
「もうそろそろ召したほうがいいな」と、
上から見たとき、
判断つきにくいんじゃないですかね?
そこをアウト老はさらに
「老けづくり」をしますから、
見つけられやすいとも言えますね。
でも、それがロックの生き方なんで、
しかたありません。
──
人生100年時代といいますが、
アウト老は逆をいくんですね。
「人生100年だからお金貯めとかないと」
とも言われますし。
みうら
「人生100年時代」というキャッチコピーは、
たぶん、不安をあおっておいて、
それで商売する人たちが
考えたものだと思います。
不安はいつでも流行っていますからね。
その点、マイブームじいさんは
流行っているものより、
自分にだけ流行っているものを選択します。

──
マイブームは独自でないといけませんものね。
でも、世の中はどんどん
「老々」になっていきますが、どうでしょう?
みうら
「老々」って、その前は
「養老の滝」でしたけどね(笑)。
そういえば数年前、糸井さんと
大阪の「生活のたのしみ展」で
トークショーをさせてもらったあと、
はじめて新幹線でふたりで帰ったんですよ。
──
老々帰り、されてましたね。
みうら
そうです、老々帰り(笑)。
糸井さんもそうおっしゃってました。
そのとき、そうか、「老々」は
ついつい暗くなりがちな言葉だけど、
ポップに使ってもいいんだと思いましたね。
老々旅行なんて、若い頃には
できなかったですから。
──
たしかに「老々」は
老々飲み会などという言い方にしても
いいわけですね。
みうら
「おいおい! 老々飲み会なんで、
若者は参加できませんよ」と、
断ることもできますしね(笑)。
──
おいおい、すなわち、
老々ですものね。
みうら
「老々」は、老いた者同士でしか
使えないですからね。
若者のほうもそんなチームに入りたくないかも
しれませんけどね(笑)。
ま、そこまで気にすることはないでしょう。
──
老々会は、老の権利ですね。
みうら
いままでそれをなんと呼んでたか、
ということなんですよ、問題は。
たぶんそれ、「敬老会」と呼ばれてた
やつじゃないですか?
当然、これも
第三者がつけた名前に決まってますよね。
──
ああ、出ましたね、
また第三者からの決めつけです。
孤独死と同じです。
みうら
「年寄りは敬わなきゃなんない」
って、それ。どうなんでしょう?
押しつけがましくて嫌じゃないですか。
その点、老々会は、
そんなルールはありませんから。
──
しかし、その老々会は、
若づくりしてちゃ入れませんね。
みうら
真の老々会では
「おい、若づくりなんてしちゃって、
どうしたの?」
と、ざわつきますよ。
やっぱその場で
「おっ、さすがだね! 仙人レベルじゃん」
と言われるためには、
誰よりも老けづくりしていかなくちゃですよ(笑)。

(明日につづきます)

2024-11-16-SAT

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