
こんにちは、ほぼ日の奥野です。
自分は『笑点』や『お笑いマンガ道場』等で
大喜利を楽しんで育った世代。
大人になり、2000年代に入ってからは、
『ダイナマイト関西』や
『ギャグ漫画大喜利』など、
新しいタイプの大喜利を追いかけました。
そしていま、
大喜利界には新たな風が吹いています!
YouTubeやXの配信番組
「大喜る人たち」などが、それです。
そこで、寺田寛明さん、サツマカワRPGさん、
トンツカタンお抹茶さんという
3名の芸人さんに、
これからの時代の大喜利について、
大いに、自由に語り合っていただきました。
寺田寛明(てらだひろあき)
埼玉県出身。マセキ芸能社所属。フリップネタや大喜利を得意とするお笑い芸人。2021年から4年連続でR-1グランプリ決勝に出場し、2023年は自身最高の3位にランクイン。自主大喜利ライブ「大喜利千景」を主催するなど精力的に活動しながら、塾講師としても働いている。
サツマカワRPG(さつまかわあーるぴーじー)
1991年1月26日、山梨県出身。お笑い芸人。血液型A型。身長178cm、体重65kg。足のサイズ26.5cm。趣味は夜更かし。特技はピアノ。漢検2級、英検2級を所持する。ピン芸人の頂点を決めるR-1グランプリはじめ、多くのお笑い番組等で活躍中。
お抹茶(おまっちゃ)
1989年9月26日、埼玉県出身。お笑いトリオ「トンツカタン」のボケ担当。プロダクション人力舎のお笑い養成所スクールJCA21期を経て2012年に相方の森本晋太郎、櫻田佑とトリオ「トンツカタン」を結成。トリオで数々の賞レースやネタ番組、バラエティ番組で活躍するほか、ピン芸人としても「R-1グランプリ2024」では決勝進出を果たす。『かりんとうの車』『ラメ忍者』など、キャッチーな歌ネタがクセになると話題に。
- サツマカワ
- お抹茶にアドバイスではないんですけど、
ここで「究極」言ってもいいですか。
- ──
- 言ってください。究極。
- 寺田
- えっ、言っちゃうの。
- サツマカワ
- おもしろいものって、ウケないんですよ。
- お抹茶
- えええっ!
- 寺田
- 言っちゃった。
- ──
- くわしく聞きたいです。
- サツマカワ
- この世の中には、「おもしろいもの」と
「ウケるもの」がありますね。 - お客さんは、一般の方々ばっかりなわけ。
当たり前のことですけど。
- ──
- つまり「笑いのプロ」ではない、と。
- サツマカワ
- 素人のお客さんを笑わせなきゃいけない。
その人たちに理解してもらえる笑いなら、
ウケる。
でも、それまでの文脈にはないような
新しい笑いっていうのは、
やっぱりすぐには、
多くの人たちには理解されないというか。 - ゴッホみたいな画家もそうだと思うけど、
斬新な絵を描く人って、
すぐに大衆にはウケないじゃないですか。
- ──
- 一説には数十年後とかって言われますね。
少なくとも19世紀とかの画家の場合。
- サツマカワ
- お笑いの場合も、
これはお笑い的に新しいし、これからは
こういうのがおもしろいんだ、
みたいなことを言ってもウケないんです。 - そういうことって、あるんですよ。
- ──
- 絵もお笑いも、同じかもしれないですね。
- お抹茶
- たしかにRー1決勝でやった歌ネタの
「かりんとうの車」って、
営業でやってもまったくウケないです。
- 寺田
- へえ、子どもウケかと思ってたのに。
- お抹茶
- 何にもウケないです。
- だから、お笑いが好きな人じゃないと
おもしろくないんだな、
ということが、よーくわかったんです。
- サツマカワ
- お笑いの要素が強くなればなるほど、
ウケない傾向はありますね。 - ま、矛盾したような言い方ですけど。
- 寺田
- お笑い要素の強いネタっていうのは、
ようするに、
見ている人が
頭の中でツッコんでくれないと
成立しないようなネタのことなので。
- サツマカワ
- そうそう。
- 寺田
- ピンネタって、けっこうそれなんです。
- 見ている人が、頭の中で、
「かりんとうの車」を歌ってはじめて、
「なんだ、こいつ!」って、
お抹茶にツッコんで笑ってくれるんです。
- ──
- なるほど。
- 寺田
- だから、さっきも話に出た、
「意味のわかるものはおもしろくない」
というのは、
「意味わからんことをやってるんだな、
これは」という理解がないと、
お笑いとして、成立しないんですよね。
- サツマカワ
- 誰にでも笑ってもらえる、
「わかりやすい笑い」をつくるのって、
そんなに難しくないんですが、
それだけをやり続けても、
そのうちぼくら、
メシ食えなくなっちゃうと思うんです。
- 寺田
- 俺はずーっと、トンツカタンについて、
そのことを考えてるんだけど。
- お抹茶
- えっ、どういうことですか?
- 寺田
- 芸人って、みんな自分自身の中に、
お抹茶と
森本(晋太郎:トンツカタンのツッコミ)が
いると思うんです。
- サツマカワ
- ああ‥‥。
- 寺田
- 森本は、みんなにわかるお笑いを
すごく丁寧にやってくれてる。 - お抹茶は意味のわからないような、
子どもが好き勝手やってる、
みたいなお笑いをやってくれてる。
- サツマカワ
- うん、うん。
- 寺田
- だからわかりやすいのは森本です。
- でも、本当におもしろい笑いって、
お抹茶なんじゃないかなって
思ったりもする。
芸人ひとりひとりのなかに
そのバランスがあると思うんです。
自分自身のことで考えると、
けっこう森本側に
振ってしまっていると思う、正直。
- サツマカワ
- わかる。だから、
おもしろいという言葉で括るのは
乱暴かもしれないですね。 - どっちがおもしろいですかーって、
たぶんそれは、ジャッジできない。
ウケる笑いはこっちだけど、
好きな笑いはこっち‥‥とかかな。
わけるとすれば。
- お抹茶
- いやあ、本当につくづく思います。
- ──
- つくづく‥‥何を思いますか?
- お抹茶
- 「これって仕事なんだよな」って。
- サツマカワ
- そうそう。
メシを食わなきゃいけないからね。
- お抹茶
- で、その意味で言ったら、
どう考えても「森本」が正解なんです。
- 寺田
- そうだね。
- お抹茶
- でも、俺がやりたかったお笑いって、
どこにあるんだろうと思ったとき、
お抹茶側に来てしまう‥‥というか。 - だから、食えねえんだろうなあって
思うんですけど、
本当にそれでムカついてるんですよ!
- サツマカワ
- こんなおもしろいことやってるのに、
みたいな気持ちがあるわけだ。
- お抹茶
- 俺も俺でおもしろいことやってるぞ、
という気持ちがあります。
- サツマカワ
- 評価されるのは、別のベクトルだよ。
顔がカッコいいみたいな要素も、
そこには入ってくるからね、マジで。 - その意味で、街裏ぴんくって芸人は、
ずっとおもしろい笑いをやってきた。
と同時に「食えるわけない笑い」を、
一生やってきた人なんですよね。
- ──
- でも、優勝しましたよね。
2024年のRー1グランプリの王者。
- サツマカワ
- 本当にうれしい気持ちになりました。
- 街裏ぴんくが優勝する世界線で、
俺たちも、お笑いしていいんだなと。
- ──
- ちなみに、サツマカワさんが考える
「おもしろいもの」って、
どういうところで出してるんですか。
- サツマカワ
- ぜんぶライブでやってます、ぼくは。
そこでやってウケなかったら、
「ウケなくて残念」って言いながら
家に帰ってます。 - 「わかんなかっただろ。
ざまあみろ~!」って言いながらね。
よくないですね。
- ──
- なるほど。
- サツマカワ
- いまでこそ、自分の好きなこととか、
おもしろいと思うことをやって
笑ってもらえるようになってますが、
ウケない時期も長くありました。
- ──
- それはつまり、
おもしろすぎることをやってたから。
- サツマカワ
- そうなんっスよ。
(つづきます)
2025-03-04-TUE
-
逆鱗に触れる。
食指が動く。
ほぞを噛む。
何とな〜くの意味は知ってはいるものの、
どうしてそんなふうに言うんだろう?
そんなときは、この本です。
子どもたちにおすすめしたい絵本ですが、
大人が読んでも学べてしまう。
その上、寺田さんのツッコミも堪能できる。
有史以来、故事成語に対して
こんなふうにツッコむ人がいたでしょうか。
おもしろいです。イラストもかわいい。