「東京糸井重里事務所」時代から
何十年も「社長」をつとめた糸井重里が、
次の旗手に役割を渡すことにしました。
新しい社長は、ほぼ日黎明期から在籍した、
みんなが「あやさん」と呼ぶ小泉絢子です。
糸井は会長となりました。
どうしていま? これからどうなっていく?
ふたりに訊いてみました。
インタビュアーはほぼ日の菅野です。

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第4回 つまらなくないように

小泉
振り返ると、
糸井さんはよくぞこういう会社を作ったなぁと
思ってしまいます。
改めて驚くのは、みんなが自発的なこと。
しかしこの「自発性」というものを、
世の中の社長がみんな‥‥
糸井
嫌うんですよね。
小泉
そう、嫌っているんです。
でも、手のひらを返すように
「どうやったら社員が自発的になるのか?」
「自発的であれ!」
と押しつけることもしている。
自発であることを理想とするのに、できないんです。
糸井
「自発的であれ!」という場合であっても、
社員の自発をじつは嫌ってるんですよね。
「なんでこんなことやったんだよ」
「勝手なことばかりやるなぁ」
と、マネジメントしにくくなるから。
「自発的であれ」と強く言う人ほど
怪しいと思ってます。
──
でも、ほぼ日は
イニシアチブはすべて「自分」と言われてきました。
なぜそのことが社長として
我慢できたのでしょうか。
糸井
うーん‥‥
そうでないとつまんないでしょう?
ぼくは、ほんとうに
つまんながりなんで。
──
そうか‥‥そうですね(笑)。
糸井
つまんないことを人にさせたくない。
社長をあやちゃんに受け継いだのは
そこがポイントだと思ってます。
──
なぜならあやちゃんは、
すごく自発的な人ですから。
自発的と言えばあやちゃん、
あやちゃんといえば自発的。
小泉
はい、もう、そうです、そうです。
糸井
あやちゃんにシンボライズされてるけど、
ほぼ日全体が、
消費者としての自分を訓練してますよね。
「受け手として訓練している人が、
自分が何をしたいのかをちゃんと追求する」
ということが、つまりは仕事です。
「それはこうして、こうすればいいんだよ」
と方法を語る人には、できないことなんだよ。

小泉
ほぼ日初期の頃に糸井さんが
「消費者であることをとにかく大切にしろ」
って言ってましたよね。
──
言ってました、思い出した、言ってました。
ものすごく言ってた。
糸井さんは「プロじゃない」って。
小泉
「プロになるな」
そう言われてましたね。
でも、消費者のプロになれっておっしゃった。
──
あああ、思い出した。
そうやって身につけた自発性を
みんなは発揮していく。
しかし糸井さんってある意味、忍耐強いというか。
小泉
それはすごいですよね。
──
自発的でいるスタッフに口を出さないのは、
ふつうはあり得ないですよね。
糸井
ううん、口を出してるのもあると思うよ。
小泉
初期って、たとえ武井さんの原稿だろうが、
糸井さんは直してましたよね。
(註:武井さん=武井義明。
初期からの乗組員。出版系編集出身)
糸井
直してた。
小泉
私みたいな素人の記事もふくめて
全員の一語一句をちゃんと糸井さんが
直してくださったんです。
そこで私たちは、
「ほぼ日はこういうメディアなんだ」
ということをじっくり学びました。
最初からすべてを任せていたのではなく、
ちゃんと段階をふんで
私たちを育ててくれたんです。
しかしあるとき、
「もうこのタイミングで全部見るのはやめよう」
と思われたのではないでしょうか。
糸井
じつはぼくはもともと、
放っておけばどんどん人を
辞めさせちゃうタイプだったんです。
「コピーライターになりたい」という人が
自分のもとへ来てくれても、
自分とは違うから、ぼくから見ると、
どこか足りないんです。
見どころがあるから入ってきているのに、
自分の力を発揮できない状態になってしまい、
どんどんつまらなくなっていきました。
萎縮しちゃって「もっと学ばなきゃ」と、
ただ悩んでいるだけの日々です。
それやってると人が育ちません。
ほんとにダメだと思った。
さらに、ほぼ日をはじめたら、今度は
「見どころのある人」なんて入ってこないんだよ。
──
そうですよね(笑)。

糸井
あやちゃんだって
ただの学生だったし。
「これまでの会社ぜんぶクビになりました」
なんていう人たちが集まって‥‥
でも、それがよかった。
見どころのある人がきたら、
怒ったりぶったりできるかもしれないけど、
──
私たちはぶつ角もない。
糸井
そうそう(笑)。
もう「元気でやってほしいな」と思いました。
小泉
そのあたたかい心で、
私たちはのびのびやりましたね。
糸井
そんな気分がずっとあるから、
「ほぼ日」になってから、ぼくは
リーダーになろうと思ったことはありません。
飽きっぽいことは自分でわかっていたから
「おもしろくやれますように、
つまんなくなりませんように」
それだけです。
──
糸井さんの「飽きっぽい」「つまらないのが嫌」
という特徴が、
いろんなアイデアを生んできたと思いますが、
あやちゃんはどうでしょうか。
小泉
糸井さんとは飽きっぽい方向が違いますけど、
私もつまんなくないように
生きると思います。
もうそれは、私だけでなく、
みなさんもそうでしょう。
ほぼ日で糸井さんを見てきた人たちは
ぜったいそうなってると思います。
──
たとえば生活のたのしみ展は、
「おもしろいことって、いっくらでもある!!」
が合言葉ですから、
つまんないのが嫌な人が作ったイベントですよね。
糸井
そうそう。たのしみ展の
第1回目から現在に至るまで、
ぼくは何もしてないからね。
コンセプトを作ったところにはいたけど、
お店を集めてどうやって楽しくするかについては、
ぜんぶ、ぼくじゃない人がやっています。
もしも「俺がやるよ」と言ってたら、
あんなことはできてない。
みんながつまらないのが嫌で、
なんとか楽しくしようとしている。
そこがおもしろくて、飽きないよ。
──
ほぼ日手帳がこうやって転がってきたのも、
みなさんのおかげですね。
糸井さんがずっと
「お前がやるんだよ」と言い続けてくださったから。
小泉
「お前がやるんだよ」は
ずっと言われてましたね。
あれはほんとに大事なことだった。

(明日に続きます)

2026-03-22-SUN

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