
南伸坊さんと糸井重里が
あちこちを小旅行しながら、
めくるめく雑談をくりひろげる、
そこそこ人気のシリーズ、黄昏。
思えばずいぶん久しぶりの新作です。
奈良に居を移したゲージツ家、
「クマ」こと篠原勝之さんと話します。
それぞれが二十代のころから
とっくに雑談し合ってる3人、
はたしてどこまで行くのやら。
どうぞ、のんびりおつき合いください。
必然、「老いと死」についても語ります。
糸井重里(いといしげさと)
コピーライター
株式会社ほぼ日会長
雑談オールラウンダー。
ダジャレもシモもどんどん行く。
タコの話なども得意。
南伸坊(みなみしんぼう)
イラストレーター
エッセイスト
蓄積した雑学から雑談を展開。
さまざまなモノマネ経験あり。
タコの話なども得意。
篠原勝之(しのはらかつゆき)
ゲージツ家
作家
鉄や土の作品をつくる一方、
文筆家としても活躍し、
泉鏡花文学賞を受賞する。
過去のエピソード豊富。
- 糸井
- クマちゃんが、
熱心に徳を積む人になるとは思わなかったね。
だって俺らの知ってるクマちゃんはさ、
唐十郎さんの紅テントの用心棒なんかをして、
しょっちゅうケンカしてたからさ、
「手でぶつと手が痛くなるから、下駄で殴る」とか、
そういうことを言ってた。
- 篠原
- ははははは。
- 南
- 「下駄で殴る」んじゃなくて、
「下駄を投げる」んだって言ってなかった?
- 篠原
- そうなんだよ。まず下駄を投げる。
下駄が壁にぶつかると、
相手がびっくりするから。
- 糸井
- 下駄はいつも履いてたからな。
- 篠原
- そうそう。
- 南
- でも、下駄を投げると、
どっかでそれを取りに行かなきゃいけないから、
タイミングを見計らう必要があるよね。
- 篠原
- そうなんだよ。あれ、怖いんだ。
- 南
- すぐ取りに行っちゃだめだよね。
- 篠原
- まあ、言ってみれば、
相手に武器を与えてるようなもんだからな。
- 糸井
- そうか、向こうもそれを投げてきたら。
- 篠原
- そうそう、投げ返されて、俺に当たると困る。
- 糸井
- つまり、手榴弾なんですね、下駄は。
- 篠原
- 手榴弾がわりなんだけども、
当てちゃいけないんだよ、下駄は。
- 糸井
- そうか。
- 篠原
- 相手の30センチくらい上とか、
横の壁を狙ってボンと行くだよ。
それがゴンと当たると、狼藉者も、
それで、すいません、ってなるだよ。
- 糸井
- おおー。
- 篠原
- というか、なってほしいんだよ。
- 南
- あはははは。
- 糸井
- こっちだって、
ケンカしたいわけじゃないから。
- 篠原
- そう。怖がってくれなきゃ困る。
直接ぶつけちゃだめでしょ、怪我するから。
- 南
- 最初の下駄で戦意喪失してくれないと。
- 篠原
- そうそう。
- 糸井
- ということは、じつはクマちゃんは、
当時から徳を積む人だったんだな。
いまぐるっと回って「そうか」と思いましたよ。
- 篠原
- それが、奈良につながってるからね。
- 糸井
- 県庁の人が教えてくれた空き家も、
貸すか、貸さないかは、徳次第だからね。
- 篠原
- そう、徳次第。
- 糸井
- あるよ、俺はと。
- 南
- ははははは、要約した。
- 糸井
- そうそうそう。
下駄と徳の話をまとめると、
- 篠原
- あるんだよ。
「いつかわかるよ」と。
- 南
- 俺の徳が。はっはっはっは。
- 糸井
- 「いつかわかるよ」はいいね。
- 篠原
- はじめから、
「俺には徳があります」なんつってもね。
- 糸井
- わかんないもんね。
- 篠原
- わかんない、わかんない。
- 糸井
- いつかわかるよ。
きみをしあわせにするよ。
- 南
- ははははは、どうしてすぐ
色っぽい方に持ってくんだ。
- 糸井
- 「いつかわかる」って、
全体に、おもしろいなと思ってさ。
- 南
- (笑)
(この雑談のすばらしさ、いつかわかるさ)
2026-03-07-SAT
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写真・山口靖雄(MountainDonuts)
これまでの「黄昏」シリーズ
黄昏
黄昏放談
黄昏 日光・東北編
黄昏 あちこち編
黄昏 スカート編
黄昏 ブータン編






