ひょんなことから、
ひとつの音頭がうまれました。
いろんな人たちと鳥たちが
協力しあってできました。
底ぬけにたのしい一曲です。
ゴールデンウィークにはじまる
「生活のたのしみ展2023」でも踊ります。
よかったらみなさんのお祭りでも、
踊ってみてください。
音頭の名前は「らいふいずトリドリ音頭」です。
ほぼ日乗組員であるわたくし菅野は、
この音頭の作曲を担当する
レ・ロマネスクのTOBIさんに
「作詞は糸井さんにお願いする予定です」と
伝えていました。
しかし「糸井重里さん」に
作詞を依頼することは、
かんたんにはできないことなのでした。
ほぼ日勤務の私でも無理で、勤務の私だから無理です。
みなさんは、糸井さんの仕事のモットーを
知っていますか。私は知っています。
「それは、自分からお願いしてでも
やらせてもらいたい仕事か?」
です。
糸井さんのほうから頭を下げて
「頼むから、作らせれくれぇ!」
と言ってもらえないかぎり
依頼ができないのです。
そんなとき、本社3階のキッチン前で
みかんとアルカリイオン水を前に
ボーッとしている社長がいました。
私は弱々しくにへら笑いを浮かべて声をかけました。
「糸井さん、おつかれさまです」
「はい」
「生活のたのしみ展のまんなかに、
やぐらを立てることになりました。
言い出したのはわたしじゃなくて杉山です。
そこで、ほぼトリドリちゃんの音頭を作って、
演奏しようと思っています」
「へぇえ~、いいじゃない」
「いいですよね!
作曲と歌は、レ・ロマネスクさん。
編曲は鶴来正基さんが受けてくださいました」
「おお、すごいね。そうかそうか!」
「すごいですよね! で、
その音頭の作詞を、ぜひ糸井さんに
お願いしたいと思ってるんでぃすぅ‥‥‥‥糸井さん?」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
「お引き受けは‥‥えーっと、
あっはははは、やっぱりそうですよね、
難しいですよね」
「‥‥‥‥‥‥‥ぜんぜん、よく、わからない」
弱々しくつぶやいて、
社長は寝てしまいました。
寝てしまわれました。
TOBIさんにそっこう電話しました。
「打ち合わせしましょう!」
TOBIさんと鶴来さんのバードマンたちはすぐに、
はばたいて来てくださいました。
そこには今回の主役である
ほぼトリドリも待っていました。
TOBIさんはこうおっしゃいました。
「こうなったら、歌詞は
ほぼトリドリちゃんに
書いてもらうしかありませんね。
いま、打ち合わせしながら書いちゃえば?」
ほぼトリドリは、作詞初心者です。
しかし、TOBIさんと鶴来さんに
「ここでお囃子みたいなのが入ると音頭になるよ」
とか
「いくつかリズミカルな言葉が入るといいのかな」
「いいねいいね」
「そうね、フンフフンフフンフン~♪(もう歌ってる)」
など、いくつものアドバイスをいただきながら、
平べったい羽根でPCを打ちに打ち、
20分ほどで四番まで歌詞を書きあげました。
さすが「好きなものには染まっちゃう」性格ですね。
トリドリが熱心に書きあげた歌詞を見て、
そういえば歌い手は自分だったという真実を思い出し
「四番まで書いたのか‥‥」と
我に返ったTOBIさんでしたが、
「これをもとに作曲します。
そのあとは鶴来さんがいるから大丈夫!」
と、気持ちを切り替えて帰っていきました。
鶴来さんのほうはというと、
「だいたいわかった、はいはいはいはいはい」と
激しく頷きながら去っていきました。
会うってだいじですね。
この日、この3人が会った日。
わたしたちは同じ船に乗ったのです。
もう、この音頭は
誰かから頼まれた仕事ではない。
「やぐら」という思いつきから
飛び出した魔法。
音頭は自分。
自分は音頭。
トリドリが作詞した段階で
TOBIさんの頭には
音楽の輪郭が見えつつありました。
そしてすぐに、ほんとうにすぐに、
すばらしい音頭ができあがりました。
名曲です。
わたくし菅野はここで、
ほぼトリドリの詞を
TOBIさんのメロディーにのせて歌ってみました。
なんじゃ、こらぁ‥‥。
曲がついたことで、
鳥類の言葉のダメさかげんが
浮かびあがってしまったのです。
ここで意をけっしまして、再度挑みました。
何に挑んだかというと糸井さんにです。
こんどはメールを出しました。
現時点の歌詞と曲を添付して、糸井さんに
この音頭への乗船を
ワンチャンお願いしたのです。
すると、返事が来ました。
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いつごろの締め切りって感じですか?
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GJ! BZ! やリました!
糸井さんは乗りかかった船のオールを
ぐいっと漕いで
すぐに歌詞を書いてくれました。
さすがだ。大大人(ダイオトナ)のオールはちがう!
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けっこういい感じにできたと思います。
添付します。
よろしくお願いします。
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ほぼトリドリが書いた音頭のタイトルは
「トリドリ音頭」だったのですが、
糸井さんの手により、
「らいふいずトリドリ音頭」という名前になりました。
私たちは、いただきものの
とうもろこしで乾杯しました。
鳥といえば穀物です。
「いやぁ、すばらしい歌になりましたね!」
「イベントのテーマソングというより、
糸井さんの歌詞で世界観がひろがって、
すばらしい楽曲作品になりましたね!」
「ていうか、打ち合わせで話しあっていた
歌詞の骨格以外、ぜんぶ書き直しになりましたね!」
「それなのにどうして、
百と八つの煩悩が、の部分が生き残ったんでしょう!」
「これは、当然ながら作詞:糸井重里という
クレジットでいきましょう!」
社長からは、作詞クレジットを拒否されました。
これはあくまで、ほぼトリドリが
ベースを書いたものなんだから、と。
「補作詞 糸井重里」のクレジットは
以上のような顛末です。
残るは、アレンジです。
音頭船のオールは、
もうひとりの大大人(ダイオトナ)、
編曲担当の鶴来正基さんに渡りました。
(明日につづきます)
2023-04-20-THU