■■■■ユーザーの意見を取り入れる。 |
ほぼ日 |
戦いにおいて、条件が増えると
戦略も戦術も考えなければならないから
大変ですよね。 |
松野 |
これもですね、タクティクスオウガ自体が
エムブレムの対極になるような感じで
作ってたんですけども、
ユーザーはいろんな遊び方を
してるんですよ。 |
ほぼ日 |
うん。 |
松野 |
「敢えて自分で禁止をして遊んでみると
難易度がちょうどいい」
とか、いろいろとあるんですよ。 |
ほぼ日 |
自分で縛りをつけて
制限プレイをするんですね。
ファイアーエムブレムとかでも
よくあるようですね。 |
松野 |
そういう制限プレイは
マニアのみなさんの中での流行なんですが
その部分のエッセンスも
取り入れてみようってところから
始まってるんです。
そういう意味ではユーザーの
意見を取り入れたシステムですよ。 |
ほぼ日 |
ってことはこれが第一弾で
これからどんどん発展していくっていうのは
大いに考えられるわけですよね。
松野さんが作られるゲームの世界で。 |
松野 |
そうですね。まあどこかで
やってみたいなって思ってます。
もちろん次もし続編を作ることがあったらば、
まんまこのシステムを持って来るってことは
僕はしないとは思うんですけど。
それはまた続編を作った時に
全然違うシステムを入れちゃうと思うんです。
どこかでそういったものの
エッセンスっていうのは
入って来るんじゃないかと思ってます。
僕は続編を作るということになった時には、
次は時間をじっくりかけて
2モード入れたいです。
攻略しやすい通常モードと
シミュレーションが大好きユーザー向けに
難易度の高いモードの2モードを用意する。
一番理想はそれぞれ違うストーリーを
用意してあげて、選べる、
っていうのがいいんでしょうけど。
ただ同じデータを使って
難易度の設定を変えるって
できるはずなので、
そこをやろうかなと思ってますけど。 |
ほぼ日 |
なるほど。
ユーザーの声はほかにどんなものが? |
松野 |
おもしろいなと思った反応が、
ファンレターに
「終わりたくない」って
書かれていることでした。 |
ほぼ日 |
すごい。それはうれしいですよね。
そのセリフは泣かせるものがありますね。 |
松野 |
そうですね。作り手冥利に尽きます。
ビジネス的に言うと
中古市場に流れずにすむ(笑)。 |
ほぼ日 |
大事なことですよ、それは! |
松野 |
そうですね、前作のFFTも
なかなか中古に流れないゲームでした。
いろんな制限をユーザーが加えて、
ファンになってくださった方が
毎回毎回やってるっていう
感じだったらしいんですよ。 |
ほぼ日 |
うんうん。 |
松野 |
そういう意味では、今回もそういうところを
目指してやりたいなと思いました。
「終わらないゲーム」っていうのにしたいなと。
|
■■■■重厚長大、だけがゲームじゃない。 |
ほぼ日 |
前作のFFTに比べると、
今回クエストの数が異様に多いですよね。
ゲーム本編以外で
冒険できる項目がいっぱいあります。
仕事を請け負ってそれを解決していく、
っていうのがありますよね。
だから、逆にFFTに比べると
すごく盛りだくさんだなあと
いうふうに思いました。
|
松野 |
あんまり早解きを
してほしくなかったんですよね。
特に重厚長大なストーリーだと
一気にやらないと忘れますよね。
だからファイナルファンタジーなんかは
一気にやっちゃうと思うんですけど、
携帯機のいいところって、
気が向いた時に電源入れて、
気が向いた時に切ることができることですよね。
だから、メインストーリーを忘れても構わない、
気の向いた時にできるお題を
ユーザーに投げかけたんです。
「遊び」を提供しようと思ったんです。
サイドストーリーって言うと
チープな感じがしちゃうんですけど、
携帯機っていうのに合わせて
気軽にやれる遊びを提供したかった。
そこんとこのボリュームを
増やそうよというので、
スタッフが頭をひねって
いろんなことを考えてくれました。 |
ほぼ日 |
携帯機ならではの工夫ということで、
GBAなのかGBASPなのか、
GBプレーヤーで遊ぶのかによって
色みが違うというのをお聞きしました。 |
松野 |
最初はGBAとGBASPは
色味がだいぶ違うんじゃないかと思って、
カラーモード、パレットって言うんですけども、
2種類持とうよっていう話はしてたんですよ。
そこに増やして、テレビ用のパレットも
持ったというわけです。
実際は、僕らが懸念したよりも
GBAとGBASPの色味の違いっていうのは
気にならなかった。なので、そこは
正直言ってユーザーのお好みでどうぞ。
コントラストも弱いバージョンと
強いバージョンを用意してます。
それもお好みで使ってください。
|
ほぼ日 |
ええ。GBプレーヤーはいかがでしたか。
少し発色が違いますよね。 |
松野 |
原色を使ってるゲームだと
あんまり気にならないんですけど、
中間色を多用してますと、
色味が気になるんですよ。 |
ほぼ日 |
うんうん。 |
松野 |
そういう意味で、グラフィックの人間が、
テレビでも液晶と同じような色味が
出るようにってことで調整したものなんですね。 |
ほぼ日 |
ああ。親切ですね、すっごく。 |
松野 |
こだわりですね、これは。
誰かからやってくれって
言われたわけじゃなくて、
非常に気になってましたんで、
なんとか入れてくれって。 |
ほぼ日 |
ほかのGBAソフトにはない機能ですね。
限定色のパールホワイトができた経緯は?
GBASP発売開始と同時だったので
驚きました。
任天堂さんとスクウェアさんが
付き合い出したっていう
お祭りの部分をすごく感じました。
‥‥全然買えなかったですよね。
見たことすらありません。 |
松野 |
スクウェアの社員でも
手に入らない人が大勢いたほどです。
買える・買えないで
大騒ぎになりました(笑)。 |
ほぼ日 |
社内でそういう空気があるのはいいですね。
楽しいし、仕事を楽しんでる感じが
すごくしますよね。
さっきのユーザーの声なんですけど
「終わりたくない」っていう以外に
今どんな声が耳に届いてて、
いいなあとか痛いなあとか
思ってらっしゃいます? |
松野 |
そうですね。やっぱり
ゲームバランスに関する
シビアなご意見もたくさんいただいてますし、
意見って両方で、
これでも難しいって方もいらっしゃいますし、
逆に簡単すぎるって方もいらっしゃいますし。 |
ほぼ日 |
年齢層とかターゲットは、
やっぱり携帯ゲーム機にしたことで
広がったっていうふうに
感じてらっしゃいますか? |
松野 |
うん、そうですねえ。年齢は、
スクウェアが得意としている
ターゲット層っていうことでは、
13〜30歳くらいなのであまり変わっていませんが
男女比で女性が増えました。 |
ほぼ日 |
取っ付きやすい感じがすごくしました。 |
|
|
■■■■プレッシャー、感じますとも。 |
ほぼ日 |
キャラクターは一人の人が描いてるんですか? |
松野 |
描いているのは2人ですが
メインのアートディレクションを
やってるのは、
ファイナルファンタジー6から
アート系をやってる人間で、
特にFF9ではアートディレクションを
やった、皆葉という人間がやってます。
今FF12でも一緒に組んでるんですけども、
彼はもうずっと僕と何年もやってるんですけど、
今回はこういう路線で行こうって。 |
ほぼ日 |
何となくですけど、
少年マンガっぽさもありながら、
女性に反響がよさそうな気がします。
最初女性が描いたのかなと思ってました。
漫画になってもいい、
レベルの高い感じの絵ですよね、これって。
|
松野 |
ああ。ありがとうございます。
スクウェアの中のデザイナーでも
トップクラスの人間が描いてますんで。 |
ほぼ日 |
こういう決意を秘めた視線の
強い印象みたいなこと、
ディレクションは松野さんがなさるんですか? |
松野 |
ああ、はい。みんなで話をしながら。 |
ほぼ日 |
全体を通してみんな似てますよね、
きりっと何かに立ち向かって
行かなくちゃいけない子たちの
顔みたいなことって、一貫してるなと思って。 |
松野 |
そうですね。アートの人間が
意識して描いてると思います。 |
ほぼ日 |
松野さん、プレッシャーとかは感じますか? |
松野 |
プレッシャーもありますよ。
作ってもみんなが全員満足するものはない。
でも解脱してますね、最近ね。 |
ほぼ日 |
何かあったんですか? |
松野 |
いや、FFT-Aもですね、
正直言って発売する直前くらいまでは
「やっぱりヤバいんじゃないかな」
ってずっと思うわけですよ。 |
ほぼ日 |
はあ! |
松野 |
僕いつもそうなんですけど、
発売する直前に、そんなことを考えちゃうんです。
今回たまたまインフルエンザにかかって、
会社を休んでしまったんですが
社内では僕がFFT-Aを悲観して
このまま出て来ないという噂が出回って(笑)。
風邪引いただけなのに。 |
ほぼ日 |
(笑)
宮本茂さんはユーザーの評判が出る前に
反省会を開くとお聞きしましたよ。
松野さんはいかがですか。 |
松野 |
うちの場合は発売の前に、
デバックも兼ねてモニターの
アルバイトを雇うんですが、
彼らからいろんな感想をもらいます。
彼らの、少しでもゲームを
よくしたいっていう気持ちは
我々と一緒ですんで、
いろんな意見を出してくれるんです。
その中から実現できるもの、
できないものの判断をしていくんですけど、
やっぱりどうしてもその中で
「ああ、やっぱりこれは直した方がいいよね」
って思いながらも時間がないから
直せないことって、あるんです。
そういう心に引っかかってるものがあって、
あとあとやっぱり消費者である
ユーザーから同じ意見を
指摘をされることがある。
でも、その点というのは、
やっぱり開発スタッフの間でも
意見が食い違うわけですよ。
僕はやっぱりこれは直した方がいいと思う、
でもスタッフは
「いや、松野さんこれはもういいんですよ」
って言うこともある。
ほーらユーザーから言われたぞ、
っていうところで、
もう一回反省するんです。 |
ほぼ日 |
モニターの声をちゃんと
フィードバックしようとするんですね。 |
松野 |
今回「プロデューサー」という
ある種えらい立場になったんですが、
そうすると、自分が作ってる時と比較して
周りの意見を大切にしようと思うんです。
自分が現場にどっぷり使ってると、
確かに彼らと同じように
「そんなもの直す必要ありませんよ」
って話になるんですよ。 |
■■■■これでいい、という決断の裏側。 |
ほぼ日 |
松野さんをよく知るスタッフの方から、
今回の松野さんは、
反対意見が出たとき、
「いや、これでいいんだ」
と強く進めることをせずに
スタッフの意見を
フィードバックしながら作られたと
聞きましたよ。 |
松野 |
1回作って、「ほらね」って言うことで
最終的にはわかってもらいますよ。
どうしても譲れないラインはあるので、
もうそこは最後は
「お前らが何と言ったって、こうだ」
っていう言い方をします。
でも、基本的には彼らの自主性がないと
作り手が嫌々やるのって
絶対嫌なものにしかならないんですよ。
僕自身がそういうふうに押し付けられたら、
やっぱり嫌々作ったものって
多分おもしろくないんで。 |
ほぼ日 |
なるほど。
「俺が間違ってた、ごめん!」
ってことはあるんですか? |
松野 |
あ、それもありますよ。
そういう意味では今回の
ジャッジメントシステムっていうのは
元々僕が考案したものなんですけど、
やっぱり僕の意図っていうのを
正確に伝えられなかった。
出来上がって来るものに対する
コントロールもちょっと甘かった。
逆に彼らにしてみると
「やっぱりほらここは指摘されたでしょ」
みたいな感じになってて
「あ、ごめんごめん」って言いながら
じゃあ北米版はこうしようとかいう感じで
進めているんです。 |
ほぼ日 |
ジャッジメントシステムにかんしては
「RPGの世界では画期的なことなんだろうな」
という印象を受けました。
ただ、画期的なことは
賛否両論あるんだろうな、とも。 |
松野 |
確かにユーザーから言わせると、
なんでこんな面倒くさいシステムを
入れたのかっていう声はあると思います。
何でしょうね、うーん‥‥。
これは考え方だと思うんですけど、
どこかに1個くらい毒がないと
個性がないと思うんですよ。 |
ほぼ日 |
おお! |
松野 |
もしくは思想というか。
そのほくろが可愛い、
みたいなことがあるじゃないですか(笑)。
必ず批判をされるのが分かっていても
毒をどこかに入れたくなるっていうのが
僕の性分でして。
今回そういう意味では
僕のジャッジメントシステムっていうのは
毒、なんですね。 |
ほぼ日 |
なるほど。微量の毒が快楽になるみたいに
やりこんでいくうちに離れられなくなるかも‥‥
これからまた挑戦してみますね。
今日はどうも、ありがとうございました。
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