第7回 うまく噛み合ったプロジェクト。

糸井
『マリオメーカー』って、
できあがったゲームのグラフィックを
ファミコンっぽいドット絵にもできるし、
Wii Uっぽくもできるじゃないですか。
宮本
はい。
自由に切り替えられるようになってます。
糸井
その両方を軽々と準備できる二重性みたいなものが、
任天堂っぽいというか、
強みだなぁと思うんです。
宮本
両方あるのがうれしいんですよね。
あれもね、「あざとさ」だけでいったら、
「ファミコンっぽいドット絵」を
メインにするべきだっていうことになるんですよ。
糸井
ああ、そうかそうか。
売る側の「あざとさ」で言ったら
そうなるかもしれない。
でも、両方入れるんですね。
宮本
両方あったほうがいいんやない、って。
ふだん『New マリオ』をやってる人は
『New マリオ』風につくりたいわけだし。
まぁ、つくるほうの理屈からいうと、
たんにグラフィックが切り替わるだけじゃなくて、
『New マリオ』の世界にすると
たとえば「壁ジャンプ」とか、
ファミコンにない仕様を入れることになりますから、
コースの前提がぜんぶ変わってくるんですよ。
糸井
うわぁ、そうですね。
宮本
両方を切り替えることを厳密に考えていくと、
答えが出ないようなことも出てくる。
でも、そのあたりを、ある種のおおらかさで、
「全体が遊びなんだから」って崩していけたので
最終的にはうまく噛み合ったんですよね。
糸井
そこは、しかし、難しいところですよね。
理屈で線を引くと失敗するというか、
ものすごく雑に言うと、
「愛情」とか「ていねいさ」みたいなもので
ひとつひとつ、上手に判断していくしかない。
宮本
そうなんです。
そのあたりが『マリオメーカー』では
かなりうまくいったと思いますね。
手塚さんのていねいさが活かされています。
これまでの『マリオ』の新作でいうと、
どちらかというとクラシックな『マリオ』を
つくってきたチームのなかに
「マリオ、かくあるべき」という認識があって、
若い人たちがそこを理解できないまま、
いろんなことをやりたくて企画を突っ込んで
「ちょっとそれはどうか」という感じで
ぶつかることが多かったんですね。
まぁ、それはそれで健康的やと思うんですが、
今回の『マリオメーカー』に関しては
そのあたりがうまく噛み合ってた。
糸井
遊ぶ立場からすると、
両側があってほしいですからね。
宮本
うん、両側がうまく噛み合った、
すごくいいプロジェクトだったと思います。
なんというか、古い世代と若い世代が
たのしそうに仕事してて
うらやましいチームでした(笑)。
糸井
いいですねぇ‥‥。
ええと、このあたりで、
ぼくがつくった『マリオ』を
宮本さんに遊んでもらうのかな?
宮本
あ、ぼくが遊ぶんですよね。
やりましょう。
糸井
ぼくがどのくらい平凡なゲーマーか、
っていうことがよくわかると思いますよ(笑)。
宮本
ぼく、『マリオメーカー』が出てから、
この「遊んでみる役」をやることが多くて‥‥。
糸井
よろしくお願いします。
一同
(拍手)
宮本
いやぁ‥‥。
糸井
ありがとうございました。
宮本
こんな感じで(笑)
糸井
うれしい、うれしい(笑)。
宮本
ありがとうございます。
糸井
こちらこそ!
いやぁ、不思議な経験だったなぁ。
宮本
いま、ぼくが遊んだのを見て、
どこか直そうとか、思いました?
糸井
長くしたくなりましたね。
宮本
ああ、なるほど。
糸井
やっぱり、覚えちゃうとできるんですよね。
だから、長くしたほうが
たのしいだろうなぁ、と思いました。
ぼく、意地悪なところを
つくってないんですよ、たぶん。
宮本
そうですね。
糸井
あの頭のところだけ、ちょっと意地悪かな。
でも、少しだけ「小癪な」と思うくらいで、
すぐに解決するようにできてる。
だから、そういう、
「意地悪じゃない感じで長く遊びたい」
というのがぼくの好みなんですね、たぶん。
宮本
うん、うん。
糸井
あと、上手に回れるルートもあるけど、
別にやらなくても通れるよ、
っていう感じになっちゃってるのも、
じぶんらしいかなぁ。
宮本
やっぱり、「その人」が出ますよね。
ぼくは、じぶんで遊びながら、
落ちそうなところはちょっと塞ぐとか、
そういうパターンになりますね。
糸井
あ、ぼくも、らくにしました。
あんまりつらくさせる必要ないなぁと思って。
もしぼくがゲームをつくるプロだったら
もっとつらくさせると思います。
そのあたり、ぼくはアマチュアだから。
宮本
あと、これ、気になるところを直して、
すぐその場で遊べるからいいんですよね。
糸井
ああ、そうそうそう(笑)。
宮本
直したのを、
何時間もかけて遊べるように組み直して、
ってやってたら、「仕事」になりますよね。
糸井
「遊び」じゃなくなりますね。
つまり、「あ、そうか」と思って直したら、
すぐたしかめたいんですよね。
そのあたりは、
ゲームをつくったことがある人のほうが
よくわかるのかもしれない(笑)。
宮本
そうなんです(笑)。
糸井
そういう意味でいうと、
これまでさんざん『マリオ』をつくった人たちが、
『マリオ』をつくるゲームをつくったんだから
ぜんぶわかってるっていうか、
おもしろいに決まってるよね。
宮本
実際、『マリオ』を開発しているとき、
コースをつくるのって
苦労するところも含めて、
いちばんたのしい部分なんですよ。
だから、そういう
「試行錯誤のたのしさ」みたいなものを
最大限に抽出したのが、
『マリオメーカー』なんだと思います。
糸井
開発者目線の保証つき、というか。
宮本
そうですね。
製品ではぜったい許してもらえないような
反則ネタをどんどん組み込むのも、
ありですし(笑)。
糸井
ぼくは平凡だからさ、
ついつい『マリオっぽいマリオ』を
つくっちゃうんだけど、もっと
「ありえないこと」をしてもいいよね。
宮本
そうです。
あと、「ありえない」ということでいうと、
いろんなamiiboに対応してて、
違うゲームのキャラクターも
登場させられますから、
そのへんもたのしんでほしいですね。

(つづきます)

2015-12-14-MON