- 糸井
-
『マリオメーカー』って、
できあがったゲームのグラフィックを
ファミコンっぽいドット絵にもできるし、
Wii Uっぽくもできるじゃないですか。
- 宮本
-
はい。
自由に切り替えられるようになってます。
- 糸井
-
その両方を軽々と準備できる二重性みたいなものが、
任天堂っぽいというか、
強みだなぁと思うんです。
- 宮本
-
両方あるのがうれしいんですよね。
あれもね、「あざとさ」だけでいったら、
「ファミコンっぽいドット絵」を
メインにするべきだっていうことになるんですよ。
- 糸井
-
ああ、そうかそうか。
売る側の「あざとさ」で言ったら
そうなるかもしれない。
でも、両方入れるんですね。
- 宮本
-
両方あったほうがいいんやない、って。
ふだん『New マリオ』をやってる人は
『New マリオ』風につくりたいわけだし。
まぁ、つくるほうの理屈からいうと、
たんにグラフィックが切り替わるだけじゃなくて、
『New マリオ』の世界にすると
たとえば「壁ジャンプ」とか、
ファミコンにない仕様を入れることになりますから、
コースの前提がぜんぶ変わってくるんですよ。
- 糸井
- うわぁ、そうですね。
- 宮本
-
両方を切り替えることを厳密に考えていくと、
答えが出ないようなことも出てくる。
でも、そのあたりを、ある種のおおらかさで、
「全体が遊びなんだから」って崩していけたので
最終的にはうまく噛み合ったんですよね。
- 糸井
-
そこは、しかし、難しいところですよね。
理屈で線を引くと失敗するというか、
ものすごく雑に言うと、
「愛情」とか「ていねいさ」みたいなもので
ひとつひとつ、上手に判断していくしかない。
- 宮本
-
そうなんです。
そのあたりが『マリオメーカー』では
かなりうまくいったと思いますね。
手塚さんのていねいさが活かされています。
これまでの『マリオ』の新作でいうと、
どちらかというとクラシックな『マリオ』を
つくってきたチームのなかに
「マリオ、かくあるべき」という認識があって、
若い人たちがそこを理解できないまま、
いろんなことをやりたくて企画を突っ込んで
「ちょっとそれはどうか」という感じで
ぶつかることが多かったんですね。
まぁ、それはそれで健康的やと思うんですが、
今回の『マリオメーカー』に関しては
そのあたりがうまく噛み合ってた。
- 糸井
-
遊ぶ立場からすると、
両側があってほしいですからね。
- 宮本
-
うん、両側がうまく噛み合った、
すごくいいプロジェクトだったと思います。
なんというか、古い世代と若い世代が
たのしそうに仕事してて
うらやましいチームでした(笑)。
- 糸井
-
いいですねぇ‥‥。
ええと、このあたりで、
ぼくがつくった『マリオ』を
宮本さんに遊んでもらうのかな?
- 宮本
-
あ、ぼくが遊ぶんですよね。
やりましょう。
- 糸井
-
ぼくがどのくらい平凡なゲーマーか、
っていうことがよくわかると思いますよ(笑)。
- 宮本
-
ぼく、『マリオメーカー』が出てから、
この「遊んでみる役」をやることが多くて‥‥。
- 糸井
- よろしくお願いします。
- 一同
- (拍手)
- 宮本
- いやぁ‥‥。
- 糸井
- ありがとうございました。
- 宮本
- こんな感じで(笑)
- 糸井
- うれしい、うれしい(笑)。
- 宮本
- ありがとうございます。
- 糸井
-
こちらこそ!
いやぁ、不思議な経験だったなぁ。
- 宮本
-
いま、ぼくが遊んだのを見て、
どこか直そうとか、思いました?
- 糸井
- 長くしたくなりましたね。
- 宮本
- ああ、なるほど。
- 糸井
-
やっぱり、覚えちゃうとできるんですよね。
だから、長くしたほうが
たのしいだろうなぁ、と思いました。
ぼく、意地悪なところを
つくってないんですよ、たぶん。
- 宮本
- そうですね。
- 糸井
-
あの頭のところだけ、ちょっと意地悪かな。
でも、少しだけ「小癪な」と思うくらいで、
すぐに解決するようにできてる。
だから、そういう、
「意地悪じゃない感じで長く遊びたい」
というのがぼくの好みなんですね、たぶん。
- 宮本
- うん、うん。
- 糸井
-
あと、上手に回れるルートもあるけど、
別にやらなくても通れるよ、
っていう感じになっちゃってるのも、
じぶんらしいかなぁ。
- 宮本
-
やっぱり、「その人」が出ますよね。
ぼくは、じぶんで遊びながら、
落ちそうなところはちょっと塞ぐとか、
そういうパターンになりますね。
- 糸井
-
あ、ぼくも、らくにしました。
あんまりつらくさせる必要ないなぁと思って。
もしぼくがゲームをつくるプロだったら
もっとつらくさせると思います。
そのあたり、ぼくはアマチュアだから。
- 宮本
-
あと、これ、気になるところを直して、
すぐその場で遊べるからいいんですよね。
- 糸井
- ああ、そうそうそう(笑)。
- 宮本
-
直したのを、
何時間もかけて遊べるように組み直して、
ってやってたら、「仕事」になりますよね。
- 糸井
-
「遊び」じゃなくなりますね。
つまり、「あ、そうか」と思って直したら、
すぐたしかめたいんですよね。
そのあたりは、
ゲームをつくったことがある人のほうが
よくわかるのかもしれない(笑)。
- 宮本
- そうなんです(笑)。
- 糸井
-
そういう意味でいうと、
これまでさんざん『マリオ』をつくった人たちが、
『マリオ』をつくるゲームをつくったんだから
ぜんぶわかってるっていうか、
おもしろいに決まってるよね。
- 宮本
-
実際、『マリオ』を開発しているとき、
コースをつくるのって
苦労するところも含めて、
いちばんたのしい部分なんですよ。
だから、そういう
「試行錯誤のたのしさ」みたいなものを
最大限に抽出したのが、
『マリオメーカー』なんだと思います。
- 糸井
- 開発者目線の保証つき、というか。
- 宮本
-
そうですね。
製品ではぜったい許してもらえないような
反則ネタをどんどん組み込むのも、
ありですし(笑)。
- 糸井
-
ぼくは平凡だからさ、
ついつい『マリオっぽいマリオ』を
つくっちゃうんだけど、もっと
「ありえないこと」をしてもいいよね。
- 宮本
-
そうです。
あと、「ありえない」ということでいうと、
いろんなamiiboに対応してて、
違うゲームのキャラクターも
登場させられますから、
そのへんもたのしんでほしいですね。
(つづきます)
2015-12-14-MON