糸井 | 室町時代の人にもおもしろさが伝わる、 っていうのは、つまり、 このゲームにはじめて触れる人にも 伝わるっていうことですよね。 |
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宮本 | あ、そうですね。 『ピクミン3』はそういうふうに 仕上げられたと思います。 ルールもそうですし、 触ったときの気持ちよさとかも はじめての人に伝わりやすいんじゃないでしょうか。 |
糸井 | もともと宮本さんのつくるものには その力がありますよね。 だからこそ、世界中に たくさんのファンがいるんだと思いますが。 たとえば、『ゼルダ』シリーズなんかも、 経験値がシステムとして キャラクターに溜まるんじゃなくて、 プレイヤーの体内、指先や記憶のなかに 経験が刻まれていくようになってますよね。 経験値が溜まってレベルが上がって キャラクターのパラメーターの数値が上がる、 というのは、ゲームを好きな人には 当たり前のことかもしれないけど、 やっぱり、はじめての人には伝わりづらい。 その点、プレイヤーが解き方を覚えたり 操作がうまくなることで進めるようになるっていうのは、 室町時代の人にも伝わりやすいと思うんですよ。 |
宮本 | はい(笑)。 |
糸井 | プレイヤーが上手になったから そのダンジョンがクリアーできるわけで、 レベルが56になったからクリアーできるわけじゃない。 それって、説明要らないじゃないですか。 『マリオ』なんかもそういう構造ですよね。 ああいうつくりかたは、ほんと感心します。 いってみれば、プレイヤーを信用することになるから、 いざやるとなると勇気が要るんでしょうけど。 |
宮本 | プレイヤーの成長がゲームの軸になる場合、 遊ぶ人が自分の成長を感じるように アイテムとかをつかって、 補強するように演出しているんですよ。 |
糸井 | え。 |
宮本 | ゲームをプレイしていると、 たしかにある程度はうまくはなりますけど、 誰もが劇的に感じるほどにはうまくならないんです。 だから、ある程度まで進めるようになった段階で 便利なアイテムをポーンと出して つかえるようにしてあげる。 すると、すでに慣れてきているから、理解できるし、 上達したところでできることがぐーんと増えますから、 はっきり成長を実感できるんです。 |
糸井 | ああー。 |
宮本 | そのあたりは、ウソとまではいいませんが、 しっかり演出してますね。 |
岩田 | だから、あれですよね。 糸井さんの言う「指先に貯まる経験値」を 増幅するための仕組みがあるんですよ。 |
糸井 | そうなんですねぇ。 |
宮本 | その場合は、どこでどのくらい増幅してあげるか、 というのがポイントになってくるんです。 たとえば、自分が剣のつかい方がうまくなってるのと、 剣が長くなるタイミングが、 うまく噛み合うと、すごく効果的なんです。 |
糸井 | 増幅と感覚の実体化というか、 あなたが上手になってますよ、っていうのを、 ほらねって実際に見せてあげるということですよね。 だから、流行りの言い方でいうと、「見える化」。 |
宮本 | ああ、「見える化」ですね(笑)。 |
岩田 | そういう意味でいうと、 じつは、この『ピクミン3』は 仕事の段取りやマネージメントの 「見える化」なんですよ。 |
糸井 | あー、なるほど、なるほど。 |
宮本 | うん、遊びを進めることの「見える化」。 |
岩田 | まぁ、わざとビジネスっぽい言い方をするなら、 思った通りに動ける自分ではなくて、 たくさんの他人を間接的に動かしながら、 それが全体として最大の成果を挙げることを目指す、 ということを遊びとしてやってるわけです。 |
糸井 | たしかに(笑)。 |
宮本 | でもね、そういうことって、 室町時代の人が見てもわかると思うんですよ。 こうするよりもこうしたほうが 仕事が早く終わる、っていうことですから。 |
岩田 | そうですね。仕事や段取りって、 どんな世界でも共通するものですし。 |
糸井 | とはいえ、 「効率のいい段取りやマネージメントを ゲームにしたらおもしろいぞ」って言って このゲームをつくったわけじゃないですよね? |
宮本 | 自分で気づいて「もう一度試してみる」、 という遊び方と、マネージメントという テーマの相性がいいんですね。 ただ、ゲームをつくるうえで、 「テキパキと仕事の指示を出して いろんなことをさせたらたのしそうだ」 というのは、動機のひとつとしてありました。 |
糸井 | あ、その言い方はわかる。 |
宮本 | ピーって笛吹いてピクミンたちを集めて 指示を出すときになにがうれしいのかっていうと、 ゴールとしては、やっぱり、 効率よく仕事が進んだらうれしい っていうことなんだと思うんです。 ただ、仕事の成果って、あとからわかるものなので、 いちばんわかりやすい欲求としては、 「テキパキと指示をしたい」 ということそのものじゃないかなと。 |
糸井 | ああー、「指示することそのもの」。 |
宮本 | アクションゲームを考えるとき、 いつもその手際のよさとか、 自分に酔える要素を考えてしまうんです。 それと同時に、自分が指示をした人たちが、 なにをするかをじーっと見ていたいっていうのが、 『ピクミン』のはじまりなんですよね。 |
糸井 | ああ、もともとは。 |
宮本 | 何度かしゃべってることですけど、 ゲームキューブの発表会のときに 『マリオ128』というデモソフトをつくったんですね。 これは、マリオが128人出てくるっていうだけの 単純なサンプルソフトなんですけど。 それをつくったとき、 ある法則に則って動くものがあって それが行動するところをずっと見てられたら おもしろいだろうなって思ってたんです。 たとえば、たくさんのマリオがいるところに 公衆便所をポンと置く。 するとひとりがやってきてその中に入る。 もうひとりがやってきて、 閉まってるドアをノックする。 もうひとりがきたら、その後ろに並ぶ。 どんどん来ると、どんどん列に並んでいく。 これを見てるとおもしろいだろうなぁ って言ってたんですよ。 |
糸井 | うん、うん。 |
宮本 | もともとは、それだけなんです。 それをゲームとしてまとめるときに、 「一定時間内にどれくらいの仕事ができるか」 っていうふうに決めてみたら うまくまとまったので、 この形になったというだけなんですよ。 |
糸井 | 仕事も段取りも、 あとから加わった要素なんですね。 |
(続きます) |