糸井 |
なんとなくわかってきましたけど、
Wii Uは、Wiiからスタートした、
「リビングの主役になるゲーム機」
というコンセプトを
より徹底させたものというか、
Wiiでできなかったことを補完するものというか。
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岩田 |
そうですね。
リビングの主役である大画面テレビにくっついて、
そのテレビをより進化させる機械というか
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宮本 |
ゲームしてるとき以外も
Wii Uを使うようになってほしいんですよね。
テレビ番組を見ているときよりも、
Wii Uがテレビを使ってるときのほうが
長いんじゃないかっていうぐらいになればうれしい。
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糸井 |
すごく簡単にいうと、さっき岩田さんが言った
「電源を入れてもらいたい」っていうことなんですね。
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岩田 |
そうですね(笑)。
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糸井 |
あの、これは、ある大手雑貨店の人が
しみじみ言ってたことなんですけど、
自分たちのお店の商品を買うか買わないかじゃなく、
まずお店に来てもらうことが
ほんとうにありがたいんだと。
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宮本 |
ああ、ああ。
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糸井 |
もう、来てくれただけでうれしい。
売場で立ち止まってくれたら
もうそれだけでいいくらいうれしい。
手に取ってくれたらよすぎるくらいです、と。
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岩田 |
それはそうですよね。
お店に来る人がひとりもいなきゃ、
どんなにすばらしい商品でも
1個も売れないんですからね。
ゲームもいっしょですよ。
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糸井 |
おんなじですよね。
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岩田 |
電源を入れてもらわないと、
どんなすばらしいゲームだって遊んでもらえないですよ。
それで、テレビゲームの歴史って、
こう言うと身も蓋もないですけど、
かつては『ドラクエ』と新しい『マリオ』が出たときだけ
押入れから出てきて、ふだんはテレビにつながれもせずに
仕舞われてるっていう遊ばれ方してた時期もあるんです。
で、それを、まずはつないでおいてもらうようにして、
いまようやく毎日電源を入れてもらう機械に
なりつつあるというか。
それはWiiで部分的には達成できたんですけど、
できなかったこともあると自覚してたんです。
「そこを埋めるために、独立した画面を持たせる」
っていうのが、今回のトライなんです。
そうすると、毎日、電源が入るきっかけが多くなって、
ゲームも遊んでもらいやすくなるんじゃないかと。
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糸井 |
なるほど、なるほど。
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岩田 |
また、今回のWii Uでは、電源を入れたとき、
ほかの人たちがどんなゲームを遊んでいて、
どうおもしろがっているかというのを、
お客さんの目に入るような仕掛けをつくったんですよ。
「Miiverse(ミーバース)」っていうんですけど。
たとえば、世の中には、遊んだらおもしろいけど、
それがあること知らないので遊ばなかった、
っていうゲームが山ほどあるんですよ。
だから、自分の友だちがいまなにで遊んでいるか、
っていうことが、もう少し伝わってきたら、
そういう状況を変えられないだろうかと思って
その仕組みを最初から本体に組み込んだんですね。
それは、個々のゲームをおもしろくする以前に、
どうしたらお客さんとゲームの接点を
増やすことができるだろうかっていうアプローチで、
雑貨店の人がお客さんが来てくれるだけで
ありがたいっていうのと、まったく同じことです。
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糸井 |
やっぱり、お客さんがなにを考えてて、
どんなふうにしたいんだろうっていうのが、
すべてを決めていくんですよね。
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岩田 |
はい。
たとえば、お客さまの行動っていうのは、
基本的には、多くの方が受動的で、ゲームのことを
自分から能動的に調べてくださったりはしない。
そういう方にもおもしろさが伝わっていくように
しないといけないわけですよね。
見たい番組がとくになくても
みんながテレビの電源を入れるのはなぜかというと、
家に帰ったときに、とりあえず
手元にあるリモコンでスイッチ入れたら、
なにかがいつも起こっていて、
なにもしないよりはちょっと幸せになれるから、
こんなに世の中で普及してるわけですから。
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糸井 |
うん。さみしくないんですよ、テレビが点いてるとね。
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岩田 |
ええ。
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宮本 |
だから、とりあえずWii U GamePadの電源が
常に入っているというだけで
できることがすごく増えるんです。
あの、これは実現しなかったんですけど、
犬を飼ってると、家族の誰かが帰ってきたときに、
いちばん最初に気づいたりするでしょ?
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糸井 |
はい。
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宮本 |
犬の代わりを、Wii Uだったら
できるんじゃないかと思ったんですよ。
誰かが帰ってきたぞっていうのを
家族の誰よりも先にWii Uが気づくという。
というのは、3DSを持っていると、
ワイヤレスの通信をしながら歩いてますよね。
そうすると、お父さんが帰ってきたことを、
Wii Uはわかるはずなんですよ。
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糸井 |
あー、犬より先に。
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宮本 |
犬よりも早く、お父さんの帰宅を知らせる。
家族の帰宅を知らせるという機能をつくれへんかとか、
それはゲームづくりとは違うんですけど、
やっぱり遊びの一部ですよね、家の中の。
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糸井 |
そうですね。
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宮本 |
そういうことが、ね、電源が入ってると
いろいろできるぞって、考えるのがたのしくて。
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糸井 |
なるほどねぇ。
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岩田 |
そういう、さまざまな遊びを発想させる、
「仕組みとしてスジのいいもの」が組み込まれていると、
あとから発展する力が大きく変わってくるんですね。
その意味では、
「こういう土台があったら、あとあとよさそうだ」
っていうことを判断するのが
プラットフォームを設計するうえで
とても重要なポイントになってくると思っているんです。
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糸井 |
今日、ずっと話しているのはそういうことですよね。
Wii Uにあらかじめ組み込まれている、
遊びのもとというか、用意された環境というか。
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岩田 |
はい、そのとおりです。
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糸井 |
岩田さんが、いちばんたのしみにしてるのは、
なんなんですかね。これが出ることで。
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岩田 |
私は、テレビゲーム機に
日常的に触れる習慣がなかった人にとって、
テレビゲーム機が、それなしではいられない存在に
変わることが、いちばんたのしみです。
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糸井 |
それは、かつてないくらいに。
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岩田 |
ええ。
昔、ゲームがとても勢いがあったといわれてたころでも、
私はゲームと関係ないと感じて、
ゲーム機にまったく触らない人たちは
たくさんいたわけです。
そういう人にさえ、なんかこの機械は邪魔じゃない、
むしろ、自分にとって有益なものだと思ってもらいたい。
で、その結果、日常的に触ってたら、いつの間にか、
ビデオゲームおもしろさを理解することになった、
という人が増えたらすばらしいなっていうのが、
真剣に思っていることですね。
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宮本 |
ぼくも、けっこう近いですね。
これはWiiを出すときに思ったことなんですけど、
ぼくは、誰かがテレビを買ったときに、その友だちが
「テレビ買った? テレビ買ったなら、
これ、絶対つけといたほうがいいよ」って
言われるような機械にしたかったんですよ。
で、今回のWii Uは、かなり。
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糸井 |
それに近づけた。
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宮本 |
うん。
テレビには絶対これ、つけといたほうがいいよって。
ゲームが遊べるからっていうよりも、
いろいろいいことがあるから、
なんだかわかんなくても
とにかくつけてごらん、っていうような(笑)。
っていうようなものになれば、なんか、
遊びがぐっと身近になるし、
みんなでいろんなことができると思うんですよね。
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糸井 |
やっぱり、単純にゲーム機っていうよりも、
大きい意味での道具なんだね。
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岩田 |
うん、遊び道具ですね。
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糸井 |
その道具で遊ぶと
人がわくわくしたり、おもしろがれたりっていう。
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岩田 |
はい。
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糸井 |
そういうことなんだなぁ。
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岩田 |
だから、なんていうか、
もともとテレビゲーム機って、
「テレビを遊び道具にするもの」なんですけど、
その、遊び道具の定義が
もっと広くなるんだと思うんですよ。
それが今回の私たちの提案だと思います。
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糸井 |
うん。
(つづきます) |