糸井 |
ニンテンドーDSがもたらした
すばらしいことのひとつが、
ゲームがお祭りじゃなくて、
日常の道具になったってことだと思うんですよ。
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岩田 |
はい。
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糸井 |
たとえば、『脳トレ』っていうのは、
「ハレ」と「ケ」でいうと「ケ」じゃないですか。
DSの大ヒットっていうのは、
「ケ」がおもしろいんだっていうことを、
みんなに気づかせてくれた。
だけど、「ハレ」は「ハレ」で、
あってほしいものだからさ、
ときどきは、酔っぱらうみたいにして、
大画面で、みんなでいっしょになって
汗かいたり、わくわくしたりしたいですよね。
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宮本 |
あ、Wii Uといっしょに出る
『ニンテンドーランド』のマルチプレイは
そうとう汗をかけますよ。
リモコンとWii U GamePadで5人マルチプレイとか
かなり新鮮なおもしろみがあって、
ショーに出展したときも、
遊んでいる人たちがものすごい笑顔で。
ゲームのイベントですから、
いつもはわりとコアなゲームを
遊んでいる人たちだと思うんですけど、
満面の笑顔で遊んでましたね。
あとは、ひとりで遊ぶ人への「ハレ」として
『ピクミン』もつくってますし。
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糸井 |
ああ、『ピクミン』はうれしいですね。
あのゲームはひとり用だけど、
大画面でやりたいもんなぁ。
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岩田 |
そうですね。
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糸井 |
やっぱり、ひとりで遊ぶときにも
「ハレ」と「ケ」ってあって、
その段差、ギャップが気持ちいいんですよね。
「ハレ」から「ケ」に戻るときの
「はぁー‥‥」っていう、
心地よい疲れとか、真っ白になる感じ、
あれは、ちょっと格別で。
いま、時間つぶしとして遊ばれてるゲームって、
日常と地続きすぎるというか、
そのサイズの画面のなかの出来事として
認識されすぎてると思うんですよね。
もっとこう、画面に入って行きたくなるような、
大きな画面の前にみんなで集まって、
遊んでいるうちにどんどんテンションが
上がっていくような、すごみがほしくなるというか。
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岩田 |
Wiiのときでいうと、
『Wii Sports』のテニスを
テストプレイではじめて遊んだときに、
サーブを打ったあと、ネットダッシュをするように
テレビに突進した人がいたんですよ。
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宮本 |
そうでしたね(笑)。
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岩田 |
これはねぇ、びっくりしました(笑)。
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糸井 |
そういうWiiが切り拓いたたのしさも
失いたくないですよね。
その一方で、夜中の11時ごろに、
ひとりで夢中になって遊ぶ楽しみも。
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岩田 |
そうですね。
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糸井 |
それ、両側がいるんだろうね。
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岩田 |
おっしゃるとおりです。
Wiiっていうのは、どっちかっていうと、
みんなで遊ぶ側を得意とした機械だったので、
今回のWii Uは、まさに両側を目指しているんです。
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糸井 |
なるほど。
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岩田 |
もうひとつ、追求したいのが、
ひとりで遊ぶときのゲームを
いかに「孤独な遊び」じゃなくすかということで。
「集まればWii U。ひとりでも、みんなでWii U。」
って言ってるんですけど、
ひとりずつをうまくつなげる仕組みをつくって、
離れた場所にいてもいっしょに
ゲームが楽しめるようにしたいと思っています。
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糸井 |
期待しています、ほんと。
なんていうのかなぁ、応援してるんですよ。
遊ぶとか、おもしろいとか、うれしいとか、
ずっと昔から人が持っている気持ちだと思うんです。
それを実感させてくれる突き抜けたものが、
ゲームに限らず、最近出ていないような気がして。
「いいんだけど、ここまでなんだなぁ」
みたいなものが多いのが、いまなんですよ。
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岩田 |
飛び抜けたものを感じないんですか。
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糸井 |
飛び抜けたものというか、
「あ、そこから道あるよな」っていうもの。
「誰、サッカー考えたの?」みたいなところが
出てきたらいいなぁと思うんですよね。
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宮本 |
ああー、そうですねぇ。
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糸井 |
いや、なにも、ものすごいものばかりを
ないものねだりしてるわけじゃないんですけどね。
そうじゃなくて、もっと個々の作品として、
いいものが出てきてほしいというか、
『ピクミン』とか、やっぱり出たときには
はっきりと驚きとよろこびがありましたもの。
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宮本 |
ありがとうございます(笑)。
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糸井 |
「こんなものをよく考えるなぁ!」みたいな。
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岩田 |
あれは宮本さんならではの見せ方ですよね。
機械の性能が上がったときって、
ひとつのものをどんどんきれいにするのか、
たくさん何かを動かすのか、
みたいな話がわーっと出てくるんですよ。
そういうなかで、
できるようになったことを活かしながら、
絞り込んで、まとめて、遊びにする。
くり返しおもしろがれる構造をつくる
っていうのが、宮本さんのやってきた
すごいことのひとつだと思うんですよ。
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糸井 |
マリオやピクミンっていう
キャラクターじゃなくて、
「構造そのもの」をつくるんですよね。
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岩田 |
はい。
『ピクミン』のようなゲームを見ると、
キャラクターからイメージが浮かぶのかとか、
ビジュアルイメージから考えるのか、
っていうふうに思われる人が多いんですけど、
宮本さんは仕組みから考えているんですよね。
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糸井 |
うん、うん。
で、そういうふうに
宮本さんがつくっている新しい構造の遊びが
多くの場合、任天堂の「ハレ」になっていて。
一方、岩田さんが整えてきたものっていうのは、
「ケ」の部分じゃないですか。
だから、学校のたのしさに、
休み時間だけじゃなく
勉強のたのしさだってあるように、
両方があってほしいんだよね。
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宮本 |
そうですね。
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岩田 |
やっぱり、違う切り口のテーマがないと
興味を持つ人の絶対数って増えないんですよ。
だから、DSのときは
「ゲーム人口の拡大」を目指して、
これまでゲームが扱ってこなかったテーマを
積極的に取りあげていった。
そのあとに出した据置型のWiiでは、
大きな画面を共有しながら
みんなで体感する遊びに取り組みました。
で、今回のWii Uは、両方できると思うんですよ。
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糸井 |
ああー。
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岩田 |
共有できる大きな画面と
直接触れることのできる手元の画面。
構造としてその両方を持っているから、
この機械の得意なことを考えると、
おもしろいことができそうだなって思うんです。
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糸井 |
なんていうんだろう、両方の要素が
たすき掛けになったほうがいいですよね。
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岩田 |
ええ。
(つづきます) |