「ドラムのように、リズムのある写真。 正確な写真、ずれちゃった写真、 天才的にずれた写真、いろいろあります」 |
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「むずかしいですけど、わかる気がします!」 | |
「じぶんにはむりですけどねー」 | |
「わたしは、そんなふうに撮りたい!」 | |
「あのー、その件で、 ちょっと相談していいですか?」 |
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「わ、びっくりした! もぎさん、いたんですね」 |
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「今回は大勢ですが、よろしくおねがいします」 |
ここまで見てきて、 ぼく、おどろいているんですよ。 みなさんとっても上手ですよ。 |
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なななにを! | |
おっしゃるんですか! | |
やめてください! | |
いえ、ほんとにね、 カメラを買ったばっかりで、 それがたのしくて、っていう感じって やっぱり写るんだなあって しみじみ思ってるんです。 ぼくには、むりだもの。 それに、甲野さんの笑顔写真、 僕はそういうの、 あんま得意じゃないんですよ、実は。 |
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そんなそんなそんな。 | |
あの、糸井さんが、もぎさんに、 何か、撮るときのタイミングがどうとか、 この間、言ってなかった? |
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えっとね、わたし、 1枚しか撮らないでしょ、写真。 どんなときも。 |
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そうですね、 決め撮りというんでしょうか、 いさぎよく1枚ですよね。 |
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で、糸井さんが 「俺を撮れ」って言ったときに 1枚だけ撮ってたら、 もっと撮れって言ったんだな。 |
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そうそうそう。でね、糸井さんは、 ハイ、チーズって言った後の顔より ちょっとタイミングが遅れた方が 面白い顔が撮れることが多いから 2枚撮っときなさいって。 |
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へえ。 | |
なるほど(笑)。 | |
あと、お前はシャッター押す スピードが速過ぎるって言われたー。 |
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わははははは。 | |
ほんと速いね。 | |
速いよね。早打ちガンマンみたいだよね。 カメラを構えながらもうシャッターに 手がかかってるかんじ。 スナイパーですよ。 |
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スナイパー。 | |
ボケてても気にしないからね。 | |
その糸井さんがちょっと遅れた方が 面白い顔だっていうのは、 彼が見つけたんでしょうね。 |
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糸井さん、みごとに写真の定説を 体得しちゃってるんですよ。 |
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セオリーがあるんですか。 | |
リズム(音)と一緒で、 単調になるじゃないですか。 で、裏が入るとグルーブするじゃないですか。 それと一緒で、 アンリ・カルティエ・ブレッソンの決定的瞬間て、 決定的瞬間が写ってないって書いたじゃないですか。 |
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はい、はい。 「写真がもっと好きになる。」で。 |
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あれは寸止めみたいなことで、 当たる前の、その前後がやっぱり面白いんです。 それを撮ってるのがブレッソンなんですよ。 なぜかっていうと、前後を写すことによって、 その「決定的な、瞬間」を想像するんだよね。 このあとどうなったんだろう? とか、 この直前に、なにかあったんだ! とか。 でもそれが写っちゃってると 想像しないじゃないですか。 想像できた方が面白いんです。 それが「ずらす」っていうことなんですね。 ポートレートも同じで、 「撮られる瞬間」は緊張しているかもしれないけど その前は油断してるかもしれない、 そのあとはリラックスしてるだろう、 というふうに表情も当然崩れるんですね。 この寸前は、きっと真面目な顔をしてたんだね、 みたいな想像もはたらくよね。 |
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確かに「その瞬間」が一番いいとは限らなくて、 北島康介がゴールした瞬間は 指先がタッチしているだけで、 つまんないじゃないですか。 どんなに記録であっても。 だけど、顔をあげて電光掲示板を見て その記録に気がついたときとか、 拳を振り上げて叫んでいるほうが、 いい顔ですよね。 |
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うん、うん。 | |
でも本当に、その、一番いい写真ていうのは、 さっきの「リズム」じゃないけど、 「裏の音」がちゃんと正確に分かって、 たとえば沼澤尚さんのドラムのようにね、 正確に分かっていて、尚かつ、 それにバックビートみたいに ちょっとずらしてとか、 ちゃんと自分でリズムを生み出せる、 みたいなことができると、いいよね。 写真も同じで、それができたら もっといい写真になる。 やっぱりブレッソンとか、 ロバート・フランクとか、 いわゆるビックネームって言われてる 世界的な人たちはそれができてるんだよね。 |
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へえ!!! | |
うーん!!! | |
できてるんです。 エグルストンとかできてるんですよ。 真似しようと思っても真似できないんです。 |
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じゃやっぱり取りあえず、素人としては? | |
いっぱい撮る? | |
だから糸井さんみたいにやってもいいし、 でも糸井さんはちょっと特別かもね。 あのひとの「わかっている」そのわかりかたは ちょっとすごいので。 だから茂木さん、 まねしなくっても、いいですよ。 |
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むしろ撮りたい、ジャストな自分の写真を。 | |
撮った方がいいんじゃないかな。 なにも考えずに、撮りたい時に撮ったらいいよ。 |
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撮りたいときに撮れ。 | |
ずらしたところを撮りたいと思ったら、 もちろんやればいいですし。 撮って「あっ」となった瞬間が 面白いっていうことに 気がついてなかったとしたら、 撮れても、ただの偶然で終わっちゃうから、 必然にならないじゃないですか。 |
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そうか。 | |
ただの偶然だけを追いかけるよりも、 偶然が必然になった方がいいわけだから、 そのジャストなところを もっと意識しといた方がいいよね。 |
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ジャストを意識する。 | |
と思うな、僕は。 それは人それぞれ、やり方があるけれど。 |
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多分、糸井さんから見ると、 わたしが何の考えもなしに 撮ってるふうに見えるのよね。 |
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(笑)。 | |
心ないように見えると。 | |
そうそうそう。 | |
それがねえ、実際、心ないのよ。 | |
実際ない! | |
写りゃいいやと思ってるところが ちょっとあるから(笑)。 |
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いいんじゃないか? | |
いいんじゃないのかな。 うん、むしろ、 私は1回で勝負してますから、と。 |
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(笑)。 | |
かっこいい(笑)! | |
早くアップしたいじゃない、 だからうだうだしたくないのよ。 |
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その目的があるからいいんじゃない。 | |
多分、茂木さんは、 ぴゅっぴゅっと撮る癖が ついてるんだと思うんです。 でも、カメラ、持ち始めたら 分かると思うんですけど、 カメラがなくても写真が撮れるって。 |
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こころのシャッターを切るということですか。 | |
あまーく言うとね。 | |
その速度、仕事のときはいいですけど、 1人になったときに ゆっくりにしてみたらいいと思う。 武井さんもそうだと思うんだけど、 写真ってね、 やっぱそんなに明るい趣味じゃないんで。 |
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わははははは。 覗き趣味? |
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うん、覗きだから、 わりとそんなに明るい趣味じゃないって ぼくは思ってるんです。 |
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昨日、夜、水たまりがあってね、 水たまりにビルが映ってて すごいきれいなんだけど、 それを撮りたいなと思いつつ、 むこうから人が来て これ、スカート覗きだと 思われたらどうしようって(笑)。 |
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(笑)。 | |
分かる! | |
あと、坂道になってる路地の奥に きれいなビルが見えるとするでしょ、 撮ろうかなと思ったら その細い路地の向こうから 女の人が歩いて来ると、 あ、やめようとか。 やっぱりね、都会はちょっと せちがらいね。 |
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障害がありますね。 | |
三脚を持ってないから 壁とかに貼り付いたりしてね。 怪しいね。 |
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怪しい。 | |
怪しいです(笑)。 なるほど、「明るくない趣味」というのが わかった気がします。 ひとりだからこそ楽しいっていうことも。 |
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だからこそ、写真って、 やっぱり1人のときに 一番本領を発揮できるものだったり するんじゃないかな。 |
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そうですね、 1人のときの方がいいですね。 |
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そのときに、普段のこういう さっと撮る癖が付いちゃってると 勿体ないからね。 冨田さんの花も結構、 ゆっくり撮ってるんですよ。 |
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あ、うん、その場にずっといました。 | |
ゆっくり撮ってる。で、失敗して、 うわーって思って、またちゃんと撮ってって、 かなりゆっくり撮ってるんですよ。 それでいいんですよ。 |
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そうだね。ひとり旅に持って行くと ほんとに面白いよ、カメラって。 |
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そっかー。 | |
そっかー。 | |
うん、寂しくないし。 | |
(つづきます!) |