糸井 |
音のバランスだって相当難しいですよね。 |
染五郎 |
ええ、ありますしね。 |
糸井 |
単純に新感線初めて見たときにビックリする、
あの殺陣のときの斬る音だとか。 |
染五郎 |
はい、これは音効といってますけど。 |
糸井 |
音効のほうですね。 |
染五郎 |
はい、効果ですね。効果音専門。 |
糸井 |
あれはキーボードですよね。 |
染五郎 |
キーボードですね。 |
糸井 |
あれももうすごいですねえ(笑)。
あれは何回聞いてもすごいですね。 |
染五郎 |
あれは今2人がかりになってますけども。
いわゆるキーボードで「ズバッ」とか
「カキーン」とか「ガシャ」とか
そういう音が入るんですけど、
それはもう本当に、稽古にずーっと立ち会って、
殺陣をある程度覚えないとできないですから。 |
糸井 |
音付けてるキーボードの画面見たいなあ。
それとか照明のスイッチングとか。 |
染五郎 |
スイッチングね。でも、どれぐらいあるんだろうな、
もう何百‥‥何百、千ぐらいいくのかなあ。
|
糸井 |
音効のキーボードの人って
指1本のタイミングだけじゃなくて、
音質、音色振り分けてますよね、
人間によっても。それとんでもないですよね。 |
染五郎 |
すごいですね。この新感線で使う効果音は、
ほとんどほかでは使わないらしいんで(笑)。 |
糸井 |
オリジナルで作るんだ。
あれ音量の調整もしてますよね、絶対。 |
染五郎 |
そうですね、してますね。 |
糸井 |
そのへんは染五郎さん見たことある? |
染五郎 |
音響の調整というのは見たことないですけど、
音効さんは稽古場のときは、
演出家の方たちと一緒にいて、
見ながら音を入れていって。 |
糸井 |
稽古のときももう夢中で入れてるわけですよね。
で、上手になったりするわけですよね、きっと。 |
染五郎 |
そうですね。
バシッと合うようになってきたりします。
もちろん殺陣だけじゃなくて、
今は「バタッ」と入ったり、
「ドーン」と入ったり、
「カーン」って入ったりする場面もありますから。 |
糸井 |
てことは、音効さんまで
セリフひとつずつある程度覚えてるんでしょうね。 |
染五郎 |
そうですね。それはもうベッタリ稽古につきますから、
それはもうそれぐらいでないとできないことですよね。 |
糸井 |
それは照明さんなんかにも同じことはいえますよね。 |
染五郎 |
そうですね。 |
糸井 |
コンピュータの使い方で
何とかなるってことはないですか‥‥
あ、そうか、肉声で芝居してるわけだから
追えないですよね、コンピュータじゃ。 |
染五郎 |
追えないですねえ。 |
糸井 |
人の手か。 |
染五郎 |
まあ、スイッチングだと思いますけどね、
照明に関しては全部。 |
糸井 |
要するに、セットしてあって
Aパターン、Bパターンとずっとあって、今だ今だと。 |
染五郎 |
次、次、次、次って。 |
糸井 |
うわあ。 |
染五郎 |
だから、作るのが大変ですよね。作る仕込みが。
照明さんなんかいっつも大変ですよね。 |
糸井 |
それに、ゲキ×シネになってから
カメラのことも出てきちゃいましたね(笑)。 |
染五郎 |
ええ。だから、役者も逆に、
もうここ(の決まった位置)に
いないといけない。
照明がそこ用に作ってあるんで。
新感線ってけっこうアドリブが多いって
思われてる方もいると思うんですけど、
基本的に入る余地がないんですよね。 |
糸井 |
(笑)でも、入れてるんですか。 |
染五郎 |
無理くり入れる役者さんもいらっしゃいますけど(笑)、
ただ、やっぱり居どこやなんかは
もう絶対動かせないんで、
そういう意味では本当に計算され尽くされて。 |
糸井 |
フォーメーションってやつですよね。
アドリブが多いとか
自由に見えるとかっていうふうにまで見せる
段取りですよね、つまり(笑)。 |
染五郎 |
そうですね。計算が見えないぐらいの
計算をしてるようなところはありますよね。 |
糸井 |
もうそう思ってみると
この位置のひとつひとつは全部、
ピタッピタッと決まるわけですよね。 |
染五郎 |
舞台中向きに番号が振ってあって、
どセンターがゼロで、そこから上手、下手に
1、2、3、4、5ぐらいあるんですけど、
稽古のときは、じゃ3番で、
いや、2番にしようか、
じゃ1.5とか、そういう感じで。
|
糸井 |
じゃ、今だれがどこにいるっていうのは、
染五郎さんは今番号で言えば言える? |
染五郎 |
番号で言えば、あそこは5番かな。 |
糸井 |
はぁー‥‥。 |
染五郎 |
秋山さんは1番かな。下手。
もう本当に緻密なんですよ。 |
糸井 |
そうでなかったらこの距離感とかの
一番いい味は出せない。 |
染五郎 |
いのうえさんは、
「映画的に作る」というふうに言われてて。 |
糸井 |
これ絵コンテ切ったりはしてあるんですか。 |
染五郎 |
それはもういのうえさんの頭の中ですけどもね。 |
糸井 |
絵コンテとしてはみんなにばらまかれてないんですね?
体で覚えろなんですね? |
染五郎 |
もう本当に積もり積もっていくと、
「あれ? 2番だったか1番だったか‥‥
あ、そうか、1番だ」とか。 |
糸井 |
似たような場面困るんだ、役者さんは。 |
染五郎 |
困りますねえ。 |
糸井 |
2幕と4幕に同じような場所で
しゃべるシーンがあったりすると、
「あ、こっちじゃなかった」というような
取り違えはありうるね。 |
染五郎 |
ありえますね。
また初日開いてから
その微妙な調整、修正があるので、
なかなかもう本当に、
まずは段取りをこなすということで
頭がいっぱいになりますね。 |
糸井 |
そういうことができる役者さん以外は
使われてないってことだね(笑)。 |
染五郎 |
そうですね。そういうとこありますね。 |
糸井 |
うわあ、そうかあ。
ある程度そうじゃない考えを持った人が
もしここに来ちゃったら、
「辞めさせてもらいます」ってことですよね。 |
染五郎 |
なっちゃうかもしれないですね。
またまた古田さんとかがもう
本当に、早いんですよね。 |
糸井 |
覚えるのが? |
染五郎 |
ええ、そういうものがやっぱり。 |
糸井 |
古田さんの動きなんて僕らは観客席で見てると、
もう気ままに動いてるようにさえ‥‥ |
染五郎 |
いや、もう完璧に決まってますね。
演出されてます。 |
糸井 |
だろうなとは思うものの、
古田新太に関しては違うんじゃないかとかさ、
そんなことを思いたいみたいに、
もうブラブラして見えますよね。 |
染五郎 |
そうなんですけどね。 |
糸井 |
はぁー‥‥。染五郎さんが
いろんなよその劇団とかに参加してて、
とくにですか、新感線は。 |
染五郎 |
そうですね、とくにですね。
もうこれだけ演出家が椅子に座ってない
稽古っていうのも、そうそうないですね。
実際にセリフも言ってくださったり、
動いてくださったりするんで、
それがまた面白かったり
カッコよかったりするんですよね。 |
糸井 |
はぁー‥‥! |
染五郎 |
そういう感覚でないと難しかったりしますよね。
それがカッコいいと思わなければ、
もう「何じゃ、それ」ってことになっちゃうので。
それがないところはやっぱりすごさですよね、
いのうえさんの。 |