糸井 |
(収録スタジオ前の待ち合いテーブルで)
こんにちは、染五郎さん。
きょうはよろしくお願いします。 |
染五郎 |
こちらこそ、よろしくお願いします。
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糸井 |
染五郎さんはやっぱり
「若手」という言い方になるんですか。 |
染五郎 |
そうですね、若手ですね。 |
糸井 |
歌舞伎の世界では
いくつまで若手って言われるんですか。 |
染五郎 |
どうなんですかね‥‥
40代はまだ若手じゃないですかね。 |
糸井 |
三津五郎さんなんかは
若手じゃないんですか、もう。 |
染五郎 |
そろそろ、という感じじゃないですか(笑)。
50歳になられましたものね。
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糸井 |
勘三郎さんも。 |
染五郎 |
勘三郎さんも50ですね、もう。 |
糸井 |
勘三郎さんは、若手じゃない、
という感じなんですね。 |
染五郎 |
はい。微妙なことですけれどね。 |
糸井 |
先日、NHKのドキュメンタリーで
新作に挑む中村富十郎さんに
「船弁慶」の稽古を付けてもらうところを
やっていましたね。 |
染五郎 |
ええ。富十郎のおじさんにしても、
僕からすれば「船弁慶」は
富十郎さんのおじさんの「船弁慶」ですが、
富十郎さんからすれば
六代目菊五郎という
もう一つ前を目指して、というような、
その繰り返しですからね。 |
糸井 |
歌舞伎の伝承って、
教える側の一生懸命さも、
教わる側が本気で教わろうと思ってるのも
こちらに伝わってくるんですよねえ。 |
染五郎 |
いやいや、なかなか、
もうザルみたいなもので、
こぼれていってしまうんですけども、
なんとか吸収はしたいと思って
やっているんです。 |
── |
(DVDのプロデューサーから)
では、そろそろ、
スタジオにお願いします。 |
染五郎 |
はい、はい。 |
糸井 |
よろしくお願いします。 |
── |
ゲキ×シネ『朧の森に棲む鬼』DVDの
一幕に入る、副音声なのですが、
モニターに、その映像が流れます。
でもお芝居に沿ってしゃべらなくても大丈夫です。
基本的に何でもありということで。 |
染五郎 |
そうですよね(笑)。 |
糸井 |
(笑)。あのう、単純に、
僕、思うことなんですけど、
あんなに絶えずしゃべってて、
うるさくないんでしょうか、
DVDをご覧になるお客さんは。 |
染五郎 |
うるさいですよ。 |
── |
いやいやいや(笑)!
そんなことはありません! |
染五郎 |
うるさいです。
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糸井 |
あはははは。
それ言いたいですよね、ちょっとね。 |
── |
いやいやいやいや(笑)。 |
染五郎 |
副音声をつけると、
基本的に芝居が見られないです。 |
── |
大丈夫です、ON・OFFができますから。
とくに初めてごらんになるかたは
ONにしないでしょうから。
大丈夫です(笑)。
安心してしゃべってください。 |
染五郎 |
あ、そう? |
糸井 |
いや、それとは別にね、
間(ま)が怖くなるというか、
あいだ詰めすぎかなっていう気が、
ちょっと正直言ってしてたんですよ。
義務感が入るじゃないですか。 |
染五郎 |
そうなんですよね。 |
糸井 |
掛布さんが野球解説中に、
「ここは黙ってましょう」
と言ったことがあるんですよ。
俺はそれ聞いて、
すごくいいなぁ! と思ったんです。
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── |
あいちゃったところを
無理に詰めてく必要は全然ないと思います。
1時間40分を2人だけでしゃべっていただきますので
そこのペース配分はお任せいたしますよ。 |
糸井 |
「詰め込んじゃおうか?」
とか言いながらね。
そういうことかな。 |
染五郎 |
はい。 |
糸井 |
「戻してください」とか(笑)。 |
染五郎 |
「もう1回、もう1回」って(笑)。
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── |
あと、止めるのは自由ですので、
手挙げて「ちょっとトイレ」とかいうのも
全然かまいませんので。
何も注意することはございません(笑)。 |
糸井 |
いやぁ、単純に、僕、
「朧の森に棲む鬼」について
くわしい知識がないんですよ。
で、それを全部染五郎さんに訊くっていうのも
変だと思うんですが。
劇団☆新感線全体のことだとか
芝居全体のことって、
出演者がぜんぶわかっているはずがないですよね。
‥‥あ、それを染五郎さんは答えればいいのか。
「僕も知らないですよ」って(笑)。 |
── |
そういうことは、あとでまとめて
フォローいたします。 |
糸井 |
そうですね。
そんなに全部を解説してくれる
主演の男優なんて、いたらおかしいものね。 |
染五郎 |
自分のことで精一杯ですからね。 |
糸井 |
でしょう? |
染五郎 |
いかに自分がということを考えて(笑)。
でも「朧の森に棲む鬼」は、全体のことも、
何となくわかるかなって感じはしますよ。 |
糸井 |
そうですか! |
染五郎 |
はい、大体は。 |
糸井 |
「朧の森に棲む鬼」、
うちの社員、ほぼ全員見たみたいですよ。
大阪まで行ったりして。
そんなに好きか?! みたいな気持ちも
ないことはないけれど、
そうさせた何かはありますよねぇ。 |
── |
では、そろそろお願いします。 |
染五郎 |
はい、よろしくお願いします。 |
糸井 |
よろしくお願いします!
(スタジオに入る)
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