糸井重里が市川染五郎さんに会いました。
染五郎さん主演の、劇団☆新感線の舞台
『朧の森に棲む鬼』がゲキ×シネという映像作品になり、
それがDVD化されるにあたって、
「オーディオコメンタリー」という副音声のための
対談相手に、指名してもらったのです。
2人だけで録音スタジオにこもっての、100分間。
モニターを見ながら、ふたりは、
どんな話をしたんでしょう?
収録前のようすから、
ほぼ完全再録で、お届けします!




その壱 まだまだ若手、なのですね。 2008-01-01
その弐 あの殺陣は、ひどいよねぇ。 2008-01-02
その参 演劇運動神経ってなんですか。 2008-01-03
その肆 いのうえ歌舞伎の醍醐味って。 2008-01-04
その伍 古田新太のかっこよさ。 2008-01-07
その陸 表も裏も、のチームワーク。 2008-01-08
その漆 アドリブって、ないんです。 2008-01-09
その捌 「やりたい」以外に答えはない。 2008-01-10
その玖 踊り最強論。 2008-01-11
その拾 スタッフ1人ずつにインタビューしてみたい。 2008-01-14
その拾壱 男の芝居、女の芝居。 2008-01-15







糸井 (収録スタジオ前の待ち合いテーブルで)
こんにちは、染五郎さん。
きょうはよろしくお願いします。
染五郎 こちらこそ、よろしくお願いします。

糸井 染五郎さんはやっぱり
「若手」という言い方になるんですか。
染五郎 そうですね、若手ですね。
糸井 歌舞伎の世界では
いくつまで若手って言われるんですか。
染五郎 どうなんですかね‥‥
40代はまだ若手じゃないですかね。
糸井 三津五郎さんなんかは
若手じゃないんですか、もう。
染五郎 そろそろ、という感じじゃないですか(笑)。
50歳になられましたものね。

糸井 勘三郎さんも。
染五郎 勘三郎さんも50ですね、もう。
糸井 勘三郎さんは、若手じゃない、
という感じなんですね。
染五郎 はい。微妙なことですけれどね。
糸井 先日、NHKのドキュメンタリーで
新作に挑む中村富十郎さんに
「船弁慶」の稽古を付けてもらうところを
やっていましたね。
染五郎 ええ。富十郎のおじさんにしても、
僕からすれば「船弁慶」は
富十郎さんのおじさんの「船弁慶」ですが、
富十郎さんからすれば
六代目菊五郎という
もう一つ前を目指して、というような、
その繰り返しですからね。
糸井 歌舞伎の伝承って、
教える側の一生懸命さも、
教わる側が本気で教わろうと思ってるのも
こちらに伝わってくるんですよねえ。
染五郎 いやいや、なかなか、
もうザルみたいなもので、
こぼれていってしまうんですけども、
なんとか吸収はしたいと思って
やっているんです。
── (DVDのプロデューサーから)
では、そろそろ、
スタジオにお願いします。
染五郎 はい、はい。
糸井 よろしくお願いします。
── ゲキ×シネ『朧の森に棲む鬼』DVDの
一幕に入る、副音声なのですが、
モニターに、その映像が流れます。
でもお芝居に沿ってしゃべらなくても大丈夫です。
基本的に何でもありということで。
染五郎 そうですよね(笑)。
糸井 (笑)。あのう、単純に、
僕、思うことなんですけど、
あんなに絶えずしゃべってて、
うるさくないんでしょうか、
DVDをご覧になるお客さんは。
染五郎 うるさいですよ。
── いやいやいや(笑)!
そんなことはありません!
染五郎 うるさいです。

糸井 あはははは。
それ言いたいですよね、ちょっとね。
── いやいやいやいや(笑)。
染五郎 副音声をつけると、
基本的に芝居が見られないです。
── 大丈夫です、ON・OFFができますから。
とくに初めてごらんになるかたは
ONにしないでしょうから。
大丈夫です(笑)。
安心してしゃべってください。
染五郎 あ、そう?
糸井 いや、それとは別にね、
間(ま)が怖くなるというか、
あいだ詰めすぎかなっていう気が、
ちょっと正直言ってしてたんですよ。
義務感が入るじゃないですか。
染五郎 そうなんですよね。
糸井 掛布さんが野球解説中に、
「ここは黙ってましょう」
と言ったことがあるんですよ。
俺はそれ聞いて、
すごくいいなぁ! と思ったんです。

── あいちゃったところを
無理に詰めてく必要は全然ないと思います。
1時間40分を2人だけでしゃべっていただきますので
そこのペース配分はお任せいたしますよ。
糸井 「詰め込んじゃおうか?」
とか言いながらね。
そういうことかな。
染五郎 はい。
糸井 「戻してください」とか(笑)。
染五郎 「もう1回、もう1回」って(笑)。

── あと、止めるのは自由ですので、
手挙げて「ちょっとトイレ」とかいうのも
全然かまいませんので。
何も注意することはございません(笑)。
糸井 いやぁ、単純に、僕、
「朧の森に棲む鬼」について
くわしい知識がないんですよ。
で、それを全部染五郎さんに訊くっていうのも
変だと思うんですが。
劇団☆新感線全体のことだとか
芝居全体のことって、
出演者がぜんぶわかっているはずがないですよね。
‥‥あ、それを染五郎さんは答えればいいのか。
「僕も知らないですよ」って(笑)。
── そういうことは、あとでまとめて
フォローいたします。
糸井 そうですね。
そんなに全部を解説してくれる
主演の男優なんて、いたらおかしいものね。
染五郎 自分のことで精一杯ですからね。
糸井 でしょう?
染五郎 いかに自分がということを考えて(笑)。
でも「朧の森に棲む鬼」は、全体のことも、
何となくわかるかなって感じはしますよ。
糸井 そうですか!
染五郎 はい、大体は。
糸井 「朧の森に棲む鬼」、
うちの社員、ほぼ全員見たみたいですよ。
大阪まで行ったりして。
そんなに好きか?! みたいな気持ちも
ないことはないけれど、
そうさせた何かはありますよねぇ。
── では、そろそろお願いします。
染五郎 はい、よろしくお願いします。
糸井 よろしくお願いします!
(スタジオに入る)



2008-01-01-TUE




中島かずき
演出 いのうえひでのり
出演 市川染五郎 阿部サダヲ 秋山菜津子
真木よう子 古田新太 ほか
著作 松竹 ヴィレッヂ
発売元 イーオシバイ
◎映像特典 罰ゲーム(3分)/東京公演千秋楽(5分)
◎音声特典 出演者らによるコメンタリー
1幕:市川染五郎・糸井重里
2幕:市川染五郎・古田新太・阿部サダヲ
価格 通常版 6,800円(税込)
スペシャルエディション 7,900円(税込)
※スペシャルエディションには
100分を越す特典映像満載の「特典ディスク」が付いています!
作品詳細はコチラからどうぞ。

そのほかの関連ページ
イーオシバイドットコム
ゲキ×シネ「朧の森に棲む鬼」公式サイト
劇団☆新感線official site
われら、ほぼ日感激団。「朧の森に棲む鬼」編



(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN