糸井 |
演出家のいのうえさん自身の
アイカメラがあったら面白いでしょうね。
「えーと、あそこ大丈夫だっけな」
っていうのもあるだろうし、
「いいぞ」というのもあるだろうし。 |
染五郎 |
それは面白いですね。
ときどきカメラが
天井向きになっちゃったりしてね(笑)。
お客さんを見てたりするし、
もうそれは僕、一番知りたいですね。
いのうえさんはもうほとんどの公演を
見られるんですよ。
これだけの公演数を見るわけだから、
どこを見てるんだろうって。
普通にセリフのところを見てるだけじゃ
絶対、ないはずですからね。
なるほど、いのうえカメラね。
それは見たいですね。
|
糸井 |
ちょっと見たいよね。 |
染五郎 |
いろいろ企画があがりましたね、また。
多分、もう次回の作品のDVDには、
特典映像としてそれが入るような気がしますね。 |
糸井 |
そうですかね。そうですか(笑)。 |
染五郎 |
はい、もう、企画会議に
入ってるんじゃないかと思いますけどね。 |
糸井 |
次の芝居をまずやんなきゃダメですけどね(笑)。 |
染五郎 |
あ、やんなきゃダメですね(笑)。そうですね。 |
糸井 |
だから、その意味では稽古場も見たいですよね。
稽古場は僕は見たいなあ。 |
染五郎 |
稽古風景が多少入ってる
映像はあるんですけど‥‥ |
糸井 |
あるんですか! |
染五郎 |
うん、でももっとコアなね、
それこそ音効さんの指先だったりとか。 |
糸井 |
見たいですねえ。
何ていうんだろう、さっき言った
「モニターがワーッとあって宇宙基地みたいですよ」
っていうのとかも‥‥ |
染五郎 |
いや、ビックリしましたね、あれ。
ある意味カッコよかったですけどね。 |
糸井 |
出演者が驚いてるんだから、
その関係者じゃない人は驚くに決まってますよね。 |
染五郎 |
舞台自体もそうですけど
完成されてるものを見ると、
もうそういうものだと思っちゃうんですけど、
ひとつ引いて考えると、
どうやってんのっていうところありますよね。 |
糸井 |
いや、恐ろしいですよ。
ひとつ部品なくなっただけで
やっぱり機械って動かなくなっちゃうわけで、
(お芝居は)もしその部品が壊れても、
だれか補うわけでしょう?
さっきの水没マイクみたいな(笑)。
それはねえ、とくに今チームプレーで
やってることについては、
みんな興味あるんじゃないですか。 |
染五郎 |
そうでしょうねえ。 |
糸井 |
ひとりで語りきれないものは
やっぱり面白いですよ。 |
染五郎 |
すべてゼロからですからね。 |
糸井 |
そうですよ。そうですよ。 |
染五郎 |
なぜ古田さんの髪型が
こうなったのかっていう(笑)、
それひとつだけでもなかなか深いものがあると。 |
糸井 |
何かのスケッチがあって
人に伝達しなければダメですよね。 |
染五郎 |
ええ、ええ。 |
糸井 |
それをひとりずつやってんですよね(笑)。
とんでもないことですよね。
単純に、セリフしゃべってないときの
人の顔が見えてるだけでも面白いですからね。 |
染五郎 |
以前のDVDには確かにありました。
僕もけっこう人が芝居してるとき
休んでたりするので、
その顔を拾われてるとこありましたね。 |
糸井 |
ああ、そうですか。
でも、それはお客さんからすると、
拾えた面白さありますけどね。それはそれで。 |
染五郎 |
まあ、このDVDでないと
わからないはずなんですよ。
実際舞台見てると、
やっぱり芝居のほうに目は絶対行ってるはずなんで、
そのときは狙って一息ついてます、舞台に立ってても。 |
糸井 |
それ、わかりにくいような
表情の仕方とかがあるわけでしょう? |
染五郎 |
ありますね、けっこう。 |
糸井 |
休んでるのがわかりにくい顔。
つまり、授業中寝ててもわかりにくい
肘のつき方みたいな(笑)。 |
染五郎 |
ありますね(笑)。
|
糸井 |
でも、それはパターン化しちゃうから
バレますよね。 |
染五郎 |
バレますねえ。
で、これだけ(カメラにズームで)寄られれば、
バレバレになるんですよね。 |
糸井 |
面白いなあ。暗い場面の暗さも映ってるしなあ。 |
染五郎 |
稽古のときはどうしようもなく古田さんがおかしくて、
何かしてもおかしいんですけど、
しなきゃしないでおかしいんですよ。
「あ、何もしない」っていうおかしさだったり(笑)、
「何か絶対するんじゃないか」
っていうおかしさだったり、
もう先乗りで笑っちゃったりするんですけど‥‥ |
糸井 |
あるあるあるある。 |
染五郎 |
秋山菜津子さんは絶対笑わないですね。
何があっても笑わないです。
「おかしかったよね」ってあとで言うんですけど。 |
糸井 |
一般的に女性ってふかないでしょ。 |
染五郎 |
ああ、そうですねえ。 |
糸井 |
女性って没頭しますよね、いろんな場面で。 |
染五郎 |
あ、それあるかも。
真木よう子さんも最初のほうのシーンで
村木仁さんのやってること、
僕は後ろを向いているので
まともに笑っちゃったりしたんです。
真木さんは客席に向いてるんで
絶対笑ったらバレるんです‥‥けど、
笑ってないですね。 |
糸井 |
それはね、何かあると思うんですよね。
つまり‥‥どう言ったらいいでしょうかね。
男と女で人に見られては困るような場面で、
もし泥棒がガタガタッといったときに、
男は気づきますよね。
そういう動物なんでしょうね。 |
染五郎 |
ああ‥‥。 |
糸井 |
集中しないとダメなんですよ、女は。
ふいちゃうっていうのはやっぱり、
何か夢中になってるときに
もうひとつ警戒信号を
持ってるせいなんですよ、きっと。 |
染五郎 |
何か持ってんですかねえ。 |
糸井 |
だから、ふいちゃうタイプの女の人って
男っぽい人でしょ? |
染五郎 |
ああ、そうですかね。 |
糸井 |
うん。俺は、それはそう思うなあ。
女らしい人はふかないですよ。 |
染五郎 |
なるほどねえ。 |
糸井 |
って俺が決め付けていいのかどうか
知りませんけどね。
お笑いに入っていく人とかって、
やっぱり男の感性持ってる人が多いですよね。
客観的に何が面白いのかみたいな。
でも、女の人の特性は
やっぱり没頭できるって面白さですから。 |
染五郎 |
できる。いや、もう秋山さんなんて最たる人ですね。
まったくですね。
で、おかしかったのはおかしいと思ってるんですよ。
あとで言ったりするんですよ。 |
糸井 |
「あのときそうでしょ?」
みたいなことは言えるわけでしょ? |
染五郎 |
「おかしかったよね。もう、たまんないよね」
とかって言われたりするんですけど、
なんで平気な顔で
芝居できるんだっていう気がして。 |
糸井 |
危ないようなとこ飛び降りなさいっていうのでも、
男だと「どのぐらいの角度で降りたら大丈夫かな」
とかってものすごい考えても、
女の人だったらポンと行っちゃうような
気がするんですよ。
「飛び降りる役だから」みたいな。
やっぱり染五郎さんって
一番いっぱい考えるタイプの‥‥ |
染五郎 |
けっこういろんなこと考えますね。 |
糸井 |
うん、だから、表情の中に、
何ていうんだろうな、
ちょっと笑いが含んでるみたいな感じっていうのは、
そのいっぱい考えるっていう
表情なんだと思うんだよね(笑)。
それはちょっと楽しいですね、
そういう人が主役やってるときっていうのは。
あんまり夢中に一途な顔されても、
つまんないんですよね、広がりがなくて(笑)。 |
染五郎 |
ああ、なるほどねえ。 |
糸井 |
僕はいくつか染五郎さんの舞台見てるけど、
この人の天性の含み笑いな感じっていうのは(笑)、
僕はファンですね。
古田さんもそうじゃないですか。
多分それは色気にも通じるし。 |
染五郎 |
そうですね。 |
糸井 |
女の人でそれがあると不気味ですよね。
含み笑いのある真剣な女なんていないですよね。
もっと一途で来てほしいですね、ピュアで。 |
染五郎 |
ああ、なるほどね、そうですね。 |
糸井 |
ちょっと笑ってんだよねえ、目が(笑)。
そういう人が今、なんかわりに
大事にされてるような気が、僕はするなあ。 |
染五郎 |
うんうんうんうん。 |
糸井 |
何ていうんだろう、
客観性を含んでる、批評的な芝居っていうのかな。
「間違ってるかもしれないけど、
俺はこれを選んだんだよ」みたいな。
それはもう文章なんかでもそうだし、
ムキになって一途になって原理主義的になっちゃうと、
入っていきようがない(笑)。 |
染五郎 |
そうですね。確かにそういう
何となく隙間、隙っていうか、
あったほうに魅力を感じるかもしれない。 |
糸井 |
一緒に楽しみましょうっていうかね(笑)。
真剣ですよ、女性は。 |
染五郎 |
(画面に真木よう子さんが出てくる)
真木さんですね、真木さん。
カッコいいんですよね。
すごい小柄で、もう本当にちっちゃい。
顔なんかメチャクチャちっちゃいんですけど、
鋭いんですよね。シャープですよね。 |
糸井 |
このキャスティングを振った目はいいですねえ。
キャスティングした人。 |
染五郎 |
いやあ、すごいですね。
本当にそれはいつも思いますね、
新感線のお芝居って。 |
糸井 |
あ、そうですね。 |
染五郎 |
あ、こういう人いたんだっていうような感じで。
ういのうえさんのお芝居って
カッコいい女性っていう役が多いんで、
そういう意味ではいつも楽しみですよね。 |
糸井 |
男の脆さよりも女の演じる脆さみたいな、
強くて鋭くて脆いみたいな人は
女が演じてますよね。
それ逆ですよね、一般的にはね。 |
染五郎 |
そうですね。
もうすぐ1幕が終わりに近づいてまいりました。 |
糸井 |
そうか。
もう聞いておくことはなかったかな(笑)。
いや、稽古場とか裏方の話を
いっぱい聞けたのが面白かったです。 |
染五郎 |
本当に、本当にやっぱり総合的に、
もうそれぞれいろんなパートからの集結作品ですね。 |
糸井 |
そうですね。あ、終わる、本当に。 |
染五郎 |
終わりますねえ。
これで休憩に入るんですけど、
このあと支度があるので
僕はほとんど休憩時間ないんですよね。 |
糸井 |
ほう。最後の力を今1回振り絞ってますよね。
うわあ。‥‥舌と剣がつながっているっていうのも
面白いよね。
剣に動かされていたはずなのに
上手になっていくみたいな。
ウソにフィットしていくわけですよね。 |
染五郎 |
これも殺陣の方に付けていただいたんですけど、
なかなかね、難しいです。 |
糸井 |
それは役者としてはやりがいあったでしょう。 |
染五郎 |
やりがい、ありましたね。
すごい難しいですけど、
それができればと思ってやってまいりました‥‥
さあ、これで1幕が終わりまして、
本当に糸井さん、1幕の副音声ということで、
ほんとうにどうもありがとうございました。 |
糸井 |
お邪魔しました。
歌舞伎の人は体が丈夫だと思うけど、
染五郎さん、こんなたいへんなお芝居が
できるんだから、やっぱり丈夫ですね。 |
染五郎 |
(笑)はい。
|