ぼくたちの写真の世界に彩りを与えてくれた
カラーフイルムによるカラー写真の役割は、
今ではすっかり、デジタルカメラに変わろうとしています。
そしてこれは、あくまでもぼく個人の主観ではありますが、
カラーフイルムによるカラープリントは、
発展途中のまま、開発が終わってしまった印象があります。
なにが発展途中なのか?
じつはフイルムによるカラー写真の世界には、
「黒」という色が具体的に存在していないのです。
ネガカラープリントの場合は、
(リバーサルフイルムからの
「ダイレクトプリント」も含めて)
“R=赤”“G=緑”“B=青”という
3色の色を重ね合わせて黒を表現します。
そのため、プロは「黒が締まっていない」という
言い方をよくするのですが、
印象としてそれが本当の黒でないことを
感じてしまうのですね。
「写真は“光”と“影”」なんて言われたりするように、
“影の色”でもある黒は、
写真にとって、もっとも大切な色とさえ言えるのに、
その“黒”が、プリントの中に存在していないのですから、
なんとも、すっきりしない印象があるのです。
その点、インクジェットプリントには、
黒インクという“黒色”が、
実際に使用されているわけですから、
その黒はたしかに黒い。
そこには、これからの写真の大きな可能性を感じます。
それでも、カラーフイルムによるカラー写真は
ぼくの目には、まだまだとても魅力的に写ります。
その理由は、もともとフイルムというのは、
ベース面でもある“アセテート”に、
“感光乳剤”が塗布されたもの。
“乳剤”という言葉が示すように、
もともと水分を含んだもので作られています。
そして撮影後の“現像処理”という化学的処理においても、
水を使用します。
そのためだとぼくは思っているのですが、
写りの中に、確実に“湿度”を感じることが出来る。
地球は水に包まれていると言っても過言でないほどに、
人間も含めて、そのほとんどのものが水分を含んでいます。
そんな水分たっぷりの世界を写すには、
もともと水をたっぷり含んだフイルムというものは、
とても相性がいいのだとぼくは考えています。
「むかしはよかった」という話ではありません。
そのことを少しでも知ることで、あるいは感じることで、
デジタルカメラで撮影してインクジェットプリンターで
プリントをする時に、
役に立つヒントがたくさんあると思うのです。
デジタルカメラで撮っていて、そしてプリントしてみて、
「あれっ、なんか違うな」と思ったことはありませんか。
皆さんもよくご存じの「写ルンです」は
手軽にカラーフイルムで
カラー写真を試せるものがありますので、
是非一度、同じ場所で、デジタルカメラと一緒に、
「写ルンです」でも撮ってみて下さい。
(最近では、数百円で画像の入ったCDを
同時に焼いてくれるサービスもありますので、
それらの写真を比較してみるといいですよ。)
そこにある小さな違いこそが、
「いいプリント」を作る上での
最大のヒントになるのではないかと思っています。
そして、いい意味でも、わるい意味でも、
その写真の差異の中に、
もっとも大切な写真の秘密と言ってもいいのかもしれない、
などと思うほどの
「しっとりとしたあたたかさ」のようなものを
見つけることが出来るかもしれません。
このあたりの話は、
「写ルンです」の話を含めて、
近いうちに改めてご紹介したいと思っています。
|