キラキラ星のフレーズを最後まで弾くことができました。
もちろん音程はフラフラで、先生に確かめながらでしたが、
あの嬉しさ。普段の仕事中には味わえない高揚感でした。
実は、12〜3年前までピアノを習っていました。
習っていたというよりは、
先生とおしゃべりに通ってたのが正直なところですが、
いくつかの事情が重なって続けることができなくなり、
今回ヴァイオリンを始めるまで、
ピアノを弾くことはおろか、
楽譜を開くことすらありませんでした。
でも音楽が好きなことに変わりはないので、
いちリスナーとして、音楽を楽しんできました。
が、また楽器を演奏したいという気は
まったくおきませんでした。
その気持ちが大きく変わったのは、
あるコンサートに行ったことがきっかけでした。
私は大学で事務職員として働いているのですが、
学期末になると休学・退学が目立ってきます。
その理由は「経済的な事情のため」が少なくありません。
もちろん社会に出てから
大学に戻って学ぶことはできますが、
現実問題として非常に難しいし、
よほど意志が強くないと実現できません。
たしかに大学の学費は高額です。
でも、学ぶ機会を金銭的な事情で
あきらめなければならないのは、
なんとも不公平なことだと思うのです。
そんな中、ひょんなことから
「エル・システマ」の存在を知りました。
「エル・システマ」とは、ベネズエラで1975年に始まった、
経済的に恵まれない児童や青少年向けの
音楽教育プログラムで、
日本の「スズキ・メソード」が基になったのだそうです。
子どもたちの経済状況にかかわらず、
平等に「学ぶ」機会を得られる
その仕組みに大変興味をおぼえました。
そして日本にも
「エル・システマジャパン」があることを知り、
震災で被災した子どもたちや
身体に障がいを持つ方々が出演する、
「エル・システマジャパン」主催のコンサートに行きました。
それは予想と大きく違って、胸が熱くなるような、
思わず泣いてしまったくらい感動的な発表会で、
自分もあの中に入って一緒に楽しみたい、
やっぱり音楽は「聴く」だけじゃなく「演奏する」ほうが、
もっと楽しいかもなぁとぼんやり思いました。
そしてその数日後にふと「ほぼ日」をチェックしたら、
「早野先生とヴァイオリン」の連載がはじまったのです。
ふうん、と思いながら読んでいくと最後に、
ヴァイオリンとチェロの初心者を、
各1名募集するとあるじゃないですか。
もうこれは「する」側にいくしかないと変なスイッチが入り、
コンサートの感動が冷めぬまま勢いで応募動機を書き、
(まぁ、当たるわけないけどね)と思いながら送信しました。
そんな気持ちでいたので「当選」の連絡をいただいたときは、
正直なんの冗談かと思いました。
練習時間を作るのはとても大変ですが、
戸惑いながらも「ほぼ日カルテット」に参加できたことで、
音楽を習うことの楽しさを思い出したのはもちろんのこと、
ここしばらく停滞気味だった日常が、
どんどん変わっていく気がしています。
音楽を「演奏する」側に来れて、
ほんとうによかったと今では思っています。