気仙沼のほぼ日便り

こんにちは。
ほぼ日で経理を担当しております
ナカハラです。

今年の3月に行われた「気仙沼さんま寄席」で、
スタッフとしてはじめて訪れた気仙沼に
このたび、ツアーのお客さんとして参加してきました。
参加したのは、JTBと日経WOMAN Onlineが主催する
「大人の修学旅行in気仙沼」。
気仙沼を盛り上げようとあつまった
女将さんたちの団体
「つばき会」のみなさんが企画されたツアーで
参加できるのは、女性のみ!
20〜60代の幅広い年齢層の35名が参加しました。


金曜日の夜に東京を発ち、
日曜日の22時に東京にもどってくるまでの間、
たったの2日間とは思えないほどの
盛りだくさんのツアーでした。
どんな内容だったのか、
そのようすをレポートいたしますね。

夜の23時に東京を発ったバスが
気仙沼の唐桑半島にある
「盛屋水産」についたのは、翌朝7時半をすぎた頃。
「盛屋水産」の一代さん
「斉吉商店」の和枝さんをはじめ、
ボランティアのみなさんが出迎えてくださいました。


最初の仕事は、
牡蠣の養殖ではじめに行われる
「種はさみ」のお手伝いです。
外洋の影響を受けにくく、
穏やかな内湾のある気仙沼では、
栄養も豊富で、養殖業に適した環境があるため、
養殖業が盛ん。
牡蠣の他にも、ワカメやメカブ、帆立など
季節によって内容が変わります。
そんな気仙沼の自然の豊かさや
他にはない特徴を知ってもらおうと
「つばき会」のみなさんが企画したこのツアーには
ボランティア活動とはちょっと主旨のことなる、
地元でのお仕事体験が行程の中に入っています。


今回、わたしが体験した
「牡蠣の種はさみ」とは、
撚り合わせてある2本のロープを持ち、
そのロープの間を指で開け、
3〜4cmの小さな牡蠣の種がついた
15cmほどのホタテの貝殻を、一定間隔で、
ロープのすき間に、はさんでいくお仕事。

ついつい夢中になってしまい、
一生懸命にやったせいなのか、
それとも、

「みなさん、とーーーーーっても、お上手!」

と、笑顔でおっしゃる
一代さんにおだてられたせいなのかは
わからないのですが、
あっという間に作業終了。
そのあとは、
船に乗せていただき、
はさんだ種を筏に吊るしに行きました。

わたしたちが、種はさみをした牡蠣は
まだまだ、小さな赤ちゃんという感じでしたが
数カ月前に種はさみをして
海の中でたくさんの養分をとった牡蠣は、
ホタテの貝殻よりも大きくなり
ロープにびっしりとついていました。
今回、私たちがお手伝いした牡蠣も
これから大きくなってくれるでしょうか。
今からとても楽しみです。


そのあとは、唐桑から場所を移動して、
復興屋台村 気仙沼横丁で昼ごはんを食べ、
沿岸部をバスでめぐり、
自由時間には、付近を散策したりしました。

実際に歩いてみて感じたのは、
テレビや新聞で見聞きするのと、
気仙沼に足を踏み入れるのでは、
見える風景がまったく違うということ。
骨組みしか残っていない家々や、
根本からぐにゃりと直角に曲がった電柱。

目にすると津波のすさまじさをありありと感じます。


夕食後には、このツアーを企画した
つばき会の女将さんたちとの座談会です。

震災当日、自分が何をしていたか。
奇跡的につながったテレビに映った、
自分の住む街の信じられない光景。
食べ物、ガソリン、
遺体安置所などの情報を得るために、
毎日、とにかく歩き回ったこと。
胸がつぶれるような経験をして
今日までどうやって過ごしてきたか‥‥。
ニュースなどでは報じられていないような
はじめて聞くことばかりで、
昼間に気仙沼の地を歩いて目にした光景を
思い返しながら、話を聞きました。


まぶしいほどの笑顔で、参加者と話をし、
ときには、冗談を言って笑わせるみなさん。
そんなようすからは、想像もできない
苦労や葛藤があったのだと感じます。

実は、わたしは、ツアーの申し込みをしたものの、
気仙沼に来るまで、心のなかで、
「ほんとうに行っていいのだろうか」
「楽しんでいいのだろうか」
という気持ちを持ちながら、ツアーの日を迎えました。
でも、そんな心配は一切無用というくらいに
気仙沼では、多くの人に歓迎されました。

昼間に行った屋台村の「男子厨房」さんに、
夜、ふたたび訪れたときは、
「おっ! また、来たのぉ!」
と、迎えられ、
地元の常連さんにも歓迎されました。
東北名物や東北弁を教えてもらったりと
楽しいひとときを過ごし、
気仙沼の方々の明るさや懐の深さに、
かえってこちらが元気をもらったように感じました。


気仙沼から帰ってきたいま、
思い出すのは気仙沼の方々のほんとうに
素敵な笑顔と心からのおもてなし。
気仙沼の方々の強さと明るさに、
すっかり気仙沼ファンになってしまいました。

「大人の修学旅行in気仙沼」は
次回、第3回を予定しています。
そうそう、JTBさんからは、こんなお話も。

「ツアー内容の打ち合わせをしていると、
 気仙沼のみなさんから、
 『あそこに行ってほしい、これを見てほしい、
  あれを食べてもらいたい!』
 って、アイデアがどんどん出てくるんです!」と。


わかりますっ! その感じっ!
この記事を書くにあたり、
今回のツアー内容があまりに濃すぎて
伝えたいことがてんこもりで、
わたしも、書くのに、とても苦労しています。

どれだけツアーが楽しかったかというと
帰りのバスは、まさに修学旅行の帰り。
ひとりで来た参加者がほとんどでしたが、
まわりのひととおしゃべりしたり、
連絡先を交換したり、
帰る頃には打ち解けて、にぎやかな帰路となりました。
年齢も、出身も仕事もさまざま。
そんな中、こうやっていろんな人と出会って、
同じ体験を共有し、
修学旅行をともにした「同窓生」として
ツアー後もつながりができるのは
ツアーの醍醐味だと思います。

百聞は一見にしかずと言いますので、
興味はあるけど、
まだ、行ったことがないというかたは
ぜひ、おすすめします。
気仙沼の魅力的な人との出会いはもちろん、
三陸のおいしい海の幸を堪能しながら、
一緒にツアーに参加する
人たちとの新しい出会いを
たくさんの方に、めいいっぱい楽しんできて欲しいです。


斉吉商店の和枝さんは、こうおっしゃっていました。

「こうやって、気仙沼のことを気にしてくれたり、
 来てくれる人がいることが、私たちの希望です。
 来てくれてほんとうにうれしい」。

わたしも、
「被災地だから行く」のではなく、
「会いたい人がいるから、
 行きたい場所があるから、気仙沼に行く」。

次は、そんな風に
気仙沼を訪れたいと思います。