社長に学べ!

人の「市場性」

糸井 安森さんのおもしろさ‥‥というかすごいところって、
かなり正直に自己認識をしていて、
しかもそれを、率直に口に出しちゃうところですよね。
安森 今さらかっこつけても、しょうがないしねぇ。
糸井 お話をしながら、ちょっと聞きたいことを
思いついたんですけど。
安森 どうぞ。
糸井 いっしょに仕事をしているチームの仲間や、
その先にいるお客さんよりも
「上司」のウケを狙って仕事なんかしてたら、
おもしろいものはできませんよね。
安森 できないね。
糸井 たとえば、芸人さんを見ていると、
「ディレクターに褒められよう」としている人と、
「お客さんによろこばれよう」としてる人と、
両方のパターンが、あるんですよ。
安森 そうなんだ。
糸井 まだ、あまり売れてない芸人さんほど、
「また使ってほしい」から
プロデューサーを意識しちゃうんです。
安森 お客さんよりも?
おもしろくないでしょう、その人。
糸井 本人にとっても、見ているほうにとっても、
不幸なことだと思うんですよ、それって。
安森 たがいにね。
糸井

企業のトップだったお立場からも、
そう思われますか。

つまり、安森さんって
「ディレクターの側」だったわけでしょう、
この場合でいうと。
安森 まぁ、オレに媚を売るよりも、
精一杯、お客さんを笑わせろ‥‥だね。
糸井 客席のほう向いたプロになれ、と。
安森

そのことと、ちょっと関係することでいうと
売り場から離れた
「本部」みたいところ、あるでしょう?

あれ、思い切って縮小することだね。
糸井 いわゆる「小さな政府」みたいに?
安森 そうするとね、各人の仕事量は増えますけど、
でも、それをやり遂げたときには、
「市場性」を帯びてくるんです、その人たち。
糸井 つまり‥‥ことばは悪いけど
「もっと使えるようになる」ってこと?
安森

たとえばロフトで部長になることよりも、
この会社を卒業して、
他の企業で今以上の評価を得たら、
こんなに素晴らしいことはないじゃないですか。

そして、いくら大企業といったって、
いつツブれちゃうか、わかんないわけです。

一兆円企業が倒産してく時代だってことを
考えてみたときに、
たかだか、われわれ「600億」の会社がね、
ずーっと生き延びるだなんて
のんきに考えてるほうがおかしいんですよ。
糸井 じゃあ、仮に、ロフトがそうなって
ぽんっと放り出されても、困らないように?
安森

逆にいえば、企業ってのは、
そういう役割も担わなきゃならないと思う。

で、ひとりひとりの従業員が、
なにかのプロフェッショナルになっていく。
糸井 つまり「選手になる」ってことですね。
安森 そう。
糸井 じゃ、ロフトの本部は、小さくしたんですね。
安森 いや‥‥大きくなっちゃうんだよな、これが。
糸井 え。
安森 ははははは。
糸井 いや‥‥「ははははは」って。
安森 ほら、ぼく、相談役だからさ。
糸井 そんな(笑)。
安森

だからね、相談は、どしどし受けますよ。

受けますけどね、相談を受けたら
「おっきいなぁ」って言ってる、いつも。
糸井 そうですか(笑)。
安森 いや、でもさ、たしかに
大きくしたのはオレかもしれないけど、
それを小さくするのが、
残ったキミらの仕事ではないのか、と。
糸井 いいですねぇ、相談役(笑)。
安森 いいでしょ(笑)。
<続きます!>
2008-08-19-TUE
前へ 次へ