糸井 | ようするに、図体が大きくなっちゃったら、 個々のプレイヤーの「市場性」は出てこないと。 |
安森 | うん、出ないね。 でも、常にお客さんと接している「売り場」、つまり、お店のほうには、いるんだよね。 |
糸井 | 「市場性」を持ってる人が? |
安森 | いるんだ。 |
糸井 | おもしろいですよねぇ。 むかしのたとえで言ったら、「本部の人」が陸大出の士官候補生で、 売り場にいる人たちが、 まぁ、兵隊になるわけじゃないですか。 |
安森 | うん。 |
糸井 | ところが、士官は育ってこないのに 兵隊のほうから どんどん「ゲリラ戦」を仕掛けられる人が 生まれてきてるってことですよね、それ。 |
安森 | うん、そう。 |
糸井 | それってやっぱり、常にお客さんと接している 「前線」だからなんでしょうね、お店が。 |
安森 | たとえばね、ある地域に 当社のパートタイマーのおばちゃんたちが、 5〜6人、出ていっちゃった。 |
糸井 | ほう。 |
安森 | で、彼女たちが何をやってるかというと、 店長をやってるんです、そのモールで。 |
糸井 | つまり、やれちゃうわけだ。 |
安森 | 一般的なお店のパートタイマーだったら、 レジのオープンからクローズまで、 ぜんぶを任せるようなことは、たぶんない。 |
糸井 | ええ。 |
安森 | ところが、ロフトでは、開店から閉店まで、 りっぱに「店長」が務まるわけ。 |
糸井 | つまり「市場性」があるんですね、 そのおばちゃんたちには。 |
安森 | 他社からも必要とされる人材なんです。 それって、ある意味では、とてもうれしいことでね。 |
糸井 | ぼくも「まわりに呼ばれる人」になれって よく言ってるんですけど‥‥。 |
安森 | そのとおりだよね。 |
糸井 | みんなに「あいつ、呼ぼうか」って言われる人。 なにか特別な才能があるわけでもないのに、「おまえ、ちょっといてくれよ」って 言われる人って、大切だと思うんですよね。 |
安森 | うん、わかります。 でもさ、そういう人の大切さって、既存の企業の「組織図」には うまく当てはめられないんですよ。 |
糸井 | ああ、興味ありますねぇ、そういう話。 |
安森 | あ、そう? |
糸井 | ウチも、まともな組織図から はみ出しちゃうような会社なものですから。 |
安森 | じゃあさ、ちょっとだけ話すとね‥‥。 たとえば、「本部」って「現場」にたいする上位概念だと思われてるでしょ。 |
糸井 | 一般的には、そうなんでしょうね。 |
安森 | でも、当の「本部」を眺めてると、 自分たちの「お客さま」がいったい誰なのか、 ぜんぜん、わかってないんですよ。 |
糸井 | はあ‥‥そうなんだ。 |
安森 | いろんな書類には、ことあるごとに 「お客さま本位の‥‥」なんて書くのにね。 |
糸井 | ええ、ええ。 |
安森 | 本部にとってのお客さんって、 いわゆる「お客さま」じゃないでしょ。 |
糸井 | ん? |
安森 | 「店舗」なんですよ。 |
糸井 | ‥‥お店がお客。 |
安森 | 第一義的に、本部の仕事というのは、 「現場」なんですよ。 |
糸井 | なるほどね‥‥。 |
安森 | だから「お客さまの暮らしをサポートします」なんて お客さまの暮らしをサポートしてるのは、現場。 |
<続きます!> | |
2008-08-20-WED |