社長に学べ!

うっとりしてしまった

糸井 だから、ロフトというお店の性格も
安森さんと、似てきてるんでしょうね。
安森 うーん‥‥そうなのかな?
糸井 だって、こういうおしゃべりの時間も含めて、
「ムダ」ってキライじゃないでしょう?
安森 それは、そうかもね。
糸井

ロフトだって、同じだと思うんです。

たとえば、そんなには売れない商品を、
ムダだといって引っ込めてたら、
ロフトという店には、ならないわけで。
安森 ああ、それは、そうだ。
糸井 でしょう。
安森

ただね、仮に経常利益が「3分の1」に
なったとしたら‥‥?

「ムダなものは、外せ」って指示が出ますよ、
いくらロフトといえども。
糸井 はい、はい。
安森 でもね、そうするとね、もっとダメなんです。
つまり「売れないもの」も、必要なんです。
糸井 お店というものには。
安森

ええ、売れない商品を外していくと
どこへ行っても置いてある商品しか残らない。

それがね、結果として、
ロフトという店の魅力を削いでいくんです。
糸井 他の店と同じになっていくんだ。
安森 そう、おもしろみが、まったくなくなる。
フシギなものでね。
糸井 一人の消費者として想像してみても、
「売れてる商品しか置いてない店」って、
ちょっと、息が詰まりそうですね。
安森

とはいえ、ビジネスでやっているわけですから、
いくら「おもしろみ」とはいえ
まったく売れないものを
ずーっと置いておくわけにもいかない。

そのあたりの「さじかげん」を、
現場がどこまで的確にやれるか。

そしてそれは、
「どれだけ、お客さまを見てるか」ってことに
かかわってくるんだと思うんです。
糸井 なるほど、そうですね。
安森

いま、ちょっと思ったんですけど、
アメリカみたいに
文化的背景の異なる人たちが集まるところでは、
同じものを大量に並べておいても、大丈夫。

受け取るほうの価値観が、バラバラだから。
糸井 ああー‥‥。
安森 でも、日本みたいに、
あるていど、
おなじような価値観の人間が集まるところでは
さっきの「おもしろみ」というか
「他とはちがうもの」が混じってないと、
息が詰まっちゃうんだろうね。
糸井 そうかもしれませんね。
安森 だってさ、アメリカのウォルマートなんか、
どこへ行っても、みんな同じでしょ。
糸井 みごとなくらいですよね。
安森 「百貨店」という大型小売店が
厳しくなってきたのも、たぶん、そこですよ。
糸井 ‥‥そうか。
安森 だって、どこの百貨店に行っても、
1階は「ルイ・ヴィトン」とか「シャネル」とか
宝石のお店じゃないですか。
糸井 たしかに「おもしろみ」は混じってないですね。
安森 でしょう。
糸井 百貨店の1階なんか、
タダの芝居なんかやっててほしいですね。
安森 ものを売るの、辞めたっていいよね。
糸井 京都のロフトって、いい意味で、
1階が「いい加減」じゃないですか。
安森 ああ、ちょっとゆるいかもね。
コーヒー屋があったりなんかして。
糸井 それが、いいんですよ。
ここにいてもいいんだって感じがして。
安森 そうね。
糸井

あの1階のゆるさがね、
お客さんを上の階に上げるんですよ。

もしも1階が、
高級ブランドのお店とかだったら‥‥。
安森 うーん、新宿のロフトがダメだったのは、
そういうことなのかもしれないな。
糸井 そうですか。
安森 まあ、誰がいけないわけじゃなく
「出すぞ」って言ったのはオレなんだけど‥‥。
三越ってブランドとさ、新宿って地名にね‥‥。
糸井 うっとりしちゃったんですね。
安森 そ。
<続きます!>
2008-08-22-FRI
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