シンイチロウ。
来週の水曜日の夜。
特別なスケジュールがないようだったら
ワタシをパーティーにエスコートしてくださらないかしら。
エマからそんな誘いを受ける。
セントラルパークの西側に住んでるお金持ちたち御用達の、
投資銀行が新しい本店ビルを作ったの。
そのお披露目をかねてレセプションがあって、
招待されてる。
クライアント用のサロンを、
「あの」レストランのシェフが
マネジメントしているらしい。
企画会社の広報を担当していると、
いろんなレセプションの招待状がやってくる。
銀行のオープンレセプションなんて
まるで関心がないけれど、
そのサロンだけでも見てみたいかなぁ‥‥、って。
退屈なおじさんばかりがいそうな気がして、
一人で行く気がしないのよね。
だからお願い、付き合って!
「あの」レストランというのは、
4人で行けば4人のウェイターがぴたりとかしずき、
ミネラルウォーター一杯に
シャンパン並の値段がついているというので有名な店。
その店でシェフをするということは、
すなわちアメリカのフランス料理界を代表するに
等しいとさえ言われる名店でもあるレストラン。
予約とることすらむつかしい、
そんなお店のシェフが関与しているサロンって、
一体どんなものなんだろうと、それを見てみたくはあった。
けれど、堅苦しいのは勘弁だからと、
ボクは断るつもりで聞いてた。
どんなお料理が出るかはわからないけど、
モエ・エ・シャンドンが100ケース、
そこのセラーに運び込まれたって噂があるの。
それって魅力的じゃない?
なんとそれは聞き捨てならん。
当然、レセプションにはシャンパンがふるまわれるはず。
それにあわせて、「あの」レストランのシェフが
何かを準備するとしたらば、行かなきゃ痛恨。
「その日は特別用事もないし、
ボクでよければ付き合うよ」と。
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