とあるリゾートホテルから電話があって、
なぜだかうちのレストランの評判があまりよくないから
アドバイスをして欲しい。と、それが仕事の内容でした。
世界に通用するハイクオリティーなスキーリゾート、
というのがそこのキャッチフレーズで、
1人1泊分の費用が、どうでしょう、
おそらく今なら夫婦2人で
ハワイ旅行ができてしまいそうなほどに高くて、
けれど誰もがそれを高いと言わなかった。
そういう時代だったのですネ。
見事なゲレンデを間近に控えた場所にあり、
当然、まわりに民家もなければ商業施設もないような場所。
食事を含めてほとんどすべての活動が、
ホテルの中で完結しなくちゃいけないわけです。
だから1日3食分の食事も宿泊費の中に入ってる。
レストランは一ヶ所で、近所の町の
老舗ホテルから引き抜いた和食、洋食、
中国料理のシェフが揃って料理を作る。
滞在費に見合うだけの料理を提供しなくちゃと、
コース料理を提供していて、朝や夜は評判がよい。
なにしろ腕のいいシェフが混雑時でも、
100人ほどの料理を作ればいい状態で、
だから食材が許す限りお客様の食べたいものを
作って差し上げるコトができる贅沢。
皆様、2時間、3時間、
たっぷり時間をかけて堪能されていかれます‥‥、
と支配人が胸はっていう。
けれどランチは評判がまるでよくない。
みなさまイライラされるのです‥‥、と。
聞けば夜のコースを若干軽く、
1時間ほどでお召し上がりになれるよう
早く提供しているのですけど‥‥、というのだけれど、
スキーを滑るコトが楽しみでやってくる人たちにとって
昼の1時間はどれほど長く感じるか。
そう指摘すると、そうだろうと思って
カレーをお出ししたらばしかられた。
どんなカレーとその時のモノを再現してもらったら、
普通のカレーで、たしかに法外な宿泊費を払った人は
絶対怒るに違いないもの。
わかった、それならこうしなさい。
カレーの中に煮込んだ牛肉をゴロゴロ入れて、
ご飯の上にはソテしたフォアグラ。
カレーが嫌だという人のために、
オマールエビを1尾丸ごとつかったやきそば。
あるいはパスタにキャビアを乗っけて出しなさい。
1品出すのにかかって10分。
熱々じゃなく、すぐに頬張れ舌を焼かずにすむように
料理の温度は適温で。
希望の方には予約をとって、
保温容器に入れたステーキサンドと、
ポットに入れたコーンポタージュを
ゲレンデ脇のレストハウスにお持ちなさい。
そしたら絶対、喜ぶからと。
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