時間的には映画に似ていて、
けれど積極的にたのしむ姿勢がないと
たのしくないという点で、やはりそれは旅に似ている。
コース料理をスタートするとというコトは、
2時間ほどの旅のはじまりというコトに
なるのだろうと思うのです。
旅の一番最初に、
その旅の安全と成功を祈って行う儀式が「乾杯」。
ボクはそう思うことにしています。
船旅の安全を託す相手は、船のキャプテン。
レストランならば、それはシェフ。
だからまず、シェフに対してグラスを軽くかかげます。
安全に運航する船に乗って旅をしたとして、
それだけで旅がたのしいモノになるかというと、
そんなことはない。
旅を一緒にするお供の人と協力しあって
たのしい旅にする努力をしないと船の旅は退屈。
海の上ではどこに逃げることもかなわず
ぼんやり、波を眺めるだけになる。
レストランの旅もおんなじ。
同じテーブルを囲む人たちが、互いに助けあって
たのしい旅にしようという気持ちがないと、
2時間をぼんやり過ごすハメになる。
だからテーブルを囲むみんなにグラスを捧げて、
みなさまよろしくお願いします。
と、そうお願いをする。
レストランにおける乾杯は、
二度、グラスをさりげなく捧げて終わる。
グラス同士をあわせるコトはバッドマナーですか?
と聞かれることがよくあります。
それは状況次第。
乾杯用の飲み物が入った器次第でしょうか。
分厚いビールのジョッキはガシャンガシャンと、
威勢よくぶつけあって景気づけをするためのモノ。
ためらわず音を立てて乾杯しましょう。
その時もまず一回目はジョッキを宙に掲げて、
みんなで目を見合わせる。
シェフの代わりに、酔っぱらいの神様に祈りをささげて、
それからガシャンガシャンとジョッキをぶつける。
元気がでます。
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