レストランとは分業でなりたった場所。
シェフは厨房を守る人。
ウェイターはお客様をもてなす人。
その役割分担はお店が高級になればなるほど厳格で、
ホールスタッフが厨房の中に入ること
そのものを禁ずるルールを持ったお店があるほどなのです。
厨房の床の汚れを、
お客様をもてなす場所に持ち込むことは無粋だから
という理由もありはするけれど、プロ同士。
互いの仕事を尊重しあい、邪魔せぬ配慮と思えば納得。
家庭的なお店や、合理性を売り物にしたお店になると、
調理人が自らホールにやってきて
料理をサーブしてくれたりする。
でも高級なお店の場合、
お客様が「シェフに会いたい」と言われぬ限り、
調理人はホールに決してでていかぬもの。
お店の出入りも勝手口からと、定めるお店もあるほどです。
なにしろかつて、帝国ホテルの名料理長、ムッシュ村上が
「ホテルの調理人たるもの、
ときに一張羅を着て自分が務める
ホテルの正面玄関を堂々とくぐり、
メインロビーの雰囲気を味わうべき」
と言って、業界が仰天した。
そんなエピソードがあるほど、
それぞれのスタッフが守るべき場所は明確に決まっていて、
他を侵すことなかれ。
そうそう。
そんな常識のフランス人が格付けをするガイドブックで、
果たして日本の寿司屋というのは
「高級なレストラン」として認められるべきなのか。
評価基準に忠実ならば、
調理人が自ら料理をサーブするお店なんて、
どうあがいても星はつかない。
ましてや雑居ビルの中にあり、トイレも共同トイレという、
そんな貧しい場所にある店が日本最高峰の寿司屋と呼ばれ、
そこに星をつけなくてはどんな店にも星の付けようがない、
と知ったときの彼らの敗北感を思うと痛快。
つくづく、日本の食文化とは独特です。
|