にもかかわらず、
それでは不安を覚える喫茶店の経営者が
増えた時期がありました。
キッカケはファミリーレストラン。
それまでコーヒーは喫茶店で飲む嗜好品。
昼食を食べたあとに、食堂から場所をうつして
喫茶店で午後の仕事のはじまり時間までを
ユックリくつろぐ‥‥、
というのがサラリーマンの一般的な過ごし方。
ところが気軽な値段のレストランで、
食後にコーヒーが飲めるようになったのですね。
しかもほとんどのお店がコーヒーはお替わり自由。
食後ばかりか、コーヒーを飲みながら料理を待って、
食事しながらコーヒーを飲み、
そのまま食後もコーヒーを片手にくつろげる。
その便利で快適なコトに
当時の日本の人たちは熱狂しました。
1980年を境にコーヒーは、
ワザワザ飲みに行くものから、
食事のついでに飲むものになっていった。
ファミリーレストランにお客様を奪われた
喫茶店の経営者たちはうろたえました。
奪われた客を奪い返す。
それがたしかに商売の鉄則のひとつではあり、
それでかなりの割合の喫茶店では
食事の提供をはじめたのです。
そもそも自分の責任において
商売をはじめるような人たちです。
勉強が好きで、試行錯誤することをいとわぬ
勤勉な生き方を当たり前と思うから、
一旦、工夫をはじめるともうとまらない。
件の喫茶店の開業法を伝授する学校にも、
料理作りを学べる学科がいくつもできて
それはそれで人気を博した。
学校を経営する立場から言えば
それはよろこばしいコトだったのでしょうけど、
同時にそれはシアワセな喫茶店の終わりのはじまり。
スパゲティーを売ればランチにお客様がやってくる。
おいしいコーヒーを食後につけて、
それをよろこぶ人もいるけど、
結局、原価があがって利益が減っていく。
ファミリーレストランの人気の料理の
ハンバーグを作れば夜にも人がくる。
けれどそのためには厨房を改装しなくちゃいけなくて、
借金が増えて結果、儲けを減らしてく。
なにより肉が焼ける匂いがこもるお店の空気は、
コーヒーだけを飲みにきてくれる
「儲けさせてくれるお客様」にとっては
決しておいしくないモノ。
お腹いっぱいにならないモノでおなじみさんをもてなして、
結局、絶対に損をしないはずの喫茶店が、
お腹いっぱいを売り物にして良さをなくして潰れていった。
それが1990年の
日本中の街のそこここでおこった出来事。
そういえば、スターバックスのサンドイッチが、
最近、分厚くなった。
あぁ、とうとう、スタバも
かつての喫茶店のようになってしまうのか‥‥、
って心配したけど、実際食べてみれば
分厚くなりはしたけれど、
ボリュームアップというわけじゃなく
量そのものはほとんど変わらず。
つまり、パンと具材のバランスが変わっただけで、
やはりそれはコーヒーをおいしくたのしむための
お供でしか無いというコトがわかって、ホっとしました。
スタバはまだまだ大丈夫。
ところで日本には
「虫養い」というステキな言葉があるんです。
来週、それを考えましょう。
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