お湯をください。
熱いお湯。
Hot waterじゃなくて、Boiling waterを
カップに持ってきてはくれませんか、とお願いをした。
湯気をもくもく立てながら、カップがひとつ。
ストンと置かれ、日本人はこんな熱い湯を飲むのかい‥‥、
ってな感じの顔でウエイターが去っていく。
お皿の上のベーコンをペーパーナプキンでキレイに拭う。
それをバキバキ、手で割って熱湯の中にドサッと投入。
カップソーサーで蓋してしばし、待つ人となる。
出汁が取れぬかと思ったのです。
3分ほども待ちましたか。
蓋を開けると、おいしいにおいがすでに鼻をくすぐります。
カップの中をみるとお湯にほんのり色がついている。
スゴく薄めたコーヒーみたいな。
あるいは薄いコンソメのような色をしていて、
口に含むとほのかな塩味と深い風味が広がってくる。
ベーコン独特のスモーキーな香りが強くはあるけれど、
口に広がる豊かな旨み。
そして思った。
これは「洋風の出汁」なんだ‥‥、って。
ガリガリベーコンが奥歯で潰れたときに感じたなつかしさ。
素材の力強さを素直に味わえる単純な味をたのしめる
アメリカ料理を食べるにつけて感じる
物足りなさの理由は「旨み」が足りなかったんだ。
‥‥、とも思ってひたすら、ベーコン汁を飲み、味わった。
これでボクはこのアメリカでもやっていけるぞ‥‥、
と思ったわけです。
そしてそのとき、ベーコンって奴は
アメリカのかつお節に違いない‥‥、
と確信するに至ったのです。
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