この「グツグツ」という部分が、
とんこつスープ作りで重要なところ。
骨の入った鍋を沸騰させる。
すると骨からにじみだした脂が一緒に沸騰します。
沸騰するということは、
鍋の中のすべての物体が
泡立ちながら撹拌されるというコトでもあります。
水と油、あるいは脂を撹拌するとどうなるか。
最初はまじりあわない両者が、
徐々にとけ合いやがてトロンと白濁しはじめる。
「乳化」という現象ですね。
ドレッシングの瓶をカシャカシャ振ると、
最初は別々だったお酢の層と
油の層が混ざり合ってクリーミーになる。
その現象を、沸騰した泡の力で手に入れる。
乳化した水と脂をそのままグツグツ沸騰させると
鍋の中の温度があがる。
水の沸騰は100℃です。
だから、例えばかつお節でとった出汁のような液体は、
どんなに鍋で沸騰させても100℃以上になることはない。
けれど、脂が混じった水は100℃を超えて温度があがる。
温度が上がった鍋の中では、
猛烈な勢いで脂肪やタンパク質が旨みに変わっていく。
それがとんこつスープの旨味の素‥‥、というわけです。
煮詰めれば煮詰めるほど旨味は凝縮、コクを生む。
だから何日もスープを煮詰める店もある。
当然、カサはどんどん減ります。
煮詰めるということは、
つまり、水分がどんどん
蒸発していくというコトですからネ。
鍋の中のスープは、2分の1になり3分の1になり、
そしてやっと丼の中に注がれるコトになる。
コストがかかります。
原料費という直接的なコストだけでなく、
水道代やガス代。それに鍋の前でスープの状態を
絶えず確認して作業する人の給料まで、
時間をかければかけるほどコストはかかる。
スープにこだわったラーメン屋は儲からない。
そういう業界の鉄則があったりもして、
なんとかとんこつ系ではないおいしいスープを作ろうと、
みんな一生懸命、試行錯誤をするのだけれど、
なかなかこのとんこつに代わるスープが見つからない。
|