おいしいモノにこだわると、店をたくさん作れなくなる。
すごくおいしいモノよりも、誰が作っても、
いつ食べても同じように感じる
「安定したほどよいおいしさ」を作り出すことが
外食産業で成功する秘訣なんだと、
当時はそれが定石だった。
当然、コンサルタントとしてのボクも、
その考え方にしたがって、
いつでも誰でもおいしい讃岐うどんが作れるようにと
工夫をあれこれ。
麺は冷凍麺を選びました。
当時、最高水準の冷凍技術をもったメーカーと、
日本を代表する製粉会社との
コラボレーションとでもいいますか。
オートプログラム式の茹麺機にポトンと落とせば、
いつも同じ状態のうどんが出来る。
なによりコシ、歯ごたえになめらかなのどごしは
かなりの自信が持てる出来栄え。
そもそもうどんは「麺より出汁」が大切だから、
その麺は出汁ののりの良さを再優先して
店の厨房ではなるべく手間をかけぬようにと考えたのです。
さて、その出汁です。
出汁はとてもデリケート。
出汁をひいた直後がもっともおいしくて、
時間がたつと劣化する。
どこか一ヶ所で作った出汁を、
例えば車でゴトゴト運ぶと、タプタプ空気と混じりあい
短時間でも味が変わってしまったりもする。
だから理想は、店舗ごとに出汁を作れればいいのだけれど
営業用の出汁をとるには大きなスペース、
高価な設備が必要となる。
できればお店の代わりに
出汁を作ってくれるところがあればいいのだけれど‥‥、
と思案しました。
出汁やスープを大量に製造しているメーカーならば
日本全国に何ヶ所もある。
けれどそういうところにたのんでしまうと、
どこにでもある大量生産の出汁になってしまうのですネ。
だからなるべく小さな工場。
できれば家族でやっているようなところがよかった。
条件は、良質な水を大量に使うことができる場所。
大きな釜が常備されていること。
釜で炊き出した出汁を冷水で冷ます設備を持っていること。
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