おいしい店とのつきあい方。

073 どこでも一緒? その18
ほんとうのお金持ちという人たち。

本当のお金持ちの人たちは、
一体、どういう生活を送っているんだろう。
素朴な疑問を持ったことがありました。
まだ若かった頃のコトです。
まず、本当のお金持ちってそもそもどんな人なのか。

普通の人は働かないとお金を稼ぐことができない。
相当に蓄財した人は、
働かなくても生きていくことができるけれど、
財産というものは使えば減る。
死ぬまでに使い切れないほど、
どんなに沢山、お金があったとしても、
それが減るというのはとてもさみしい。
お金に対して、さみしい思いを持つ人は、
本当のお金持ちとは言えないだろうと思ったのです。

減らない財産を持っている人。
そんな人はいないだろうか?

お金ではない、豊かな心とか、
歳を経るごとに増えていく経験だとか、あるいは知恵。
そういう無形の財産は減ることがない。
本当の豊かというのは、
そういうものの中にこそあるんだよ‥‥、と、
訳知り顔でいう人がいた。
たしかにそうだろうとは思うのだけど、
けれど減ることのないお金を持っている人の生活って
一体どういうものなのか。
若かったからということもあるのでしょう。
興味はどんどん膨らんで、無礼にも、
そういう人はいないかと
いろんな人に聞いて回った時期があった。

ちょうど当時、香港への進出準備をしていた
日本の大手小売会社のコンサルティングを引き受けていて、
しばらく香港に住んでた。
その事業に出資をしている人たちや
財界の人たちと知り合う機会もあって、その中には何名か、
スーパーリッチと呼ばれる人がいたのですネ。
不動産王であったり、貿易会社の経営者であったりと、
仕事はそれぞれ。
もう十分稼いだし、会社の業績も悪く無い。
寝ている間もお金が増えていくから、
お金が減るってコトを最近、心配はしないよね‥‥、と、
お金持ちであることをなんの衒いもなく自慢する人たちが
レセプションのパーティーに集まったのです。

これ幸いと、
毎日どんな生活をしているんですか‥‥、
と聞いてみた。

朝、起きる。
食事をして仕事にいって、
たまに買い物をして映画を観て‥‥、と、
聞けば本当に普通の生活。
ただ、最近した一番大きな買い物が飛行機だった、とか、
生活の「スケールと価格」の違いはあっても、
生活の内容自体はそれほど変わらぬというコトに、
ちょっとガッカリ、拍子抜け。

ならば、買うことができればいくらかかっても買いたい、
贅沢なモノってなんですか‥‥、と質問を変えてみた。
そしたら全員、
同じ答えを即答します。

「時間だね」

「香港で生きているというコト。
香港で仕事をしているというコトは、
すなわち時間に追いかけられているというコト。
香港人が手にするお金はみんな
『時間という印刷機』で
刷られているようなモノなんだよね。
だから、仕事のコトを考えず
ぼんやり時間を無駄遣いするというのが、
おそらく一番の贅沢だなぁ‥‥」

「西洋人にはヴァカンスという、
何週間にもわたって時間を無駄遣いする習慣がある
香港で働くボクたちは時間に対しては貧乏性。
何週間も仕事をしないコトなんて考えられない。
なにより香港を何週間も離れてしまうなんて
絶対できない相談で、だからあるものを考えだした。
この香港で、2時間、あるいは3時間。
時間を無駄に過ごす贅沢を、
サカキさん‥‥、明日ご一緒にどうですか?」

さてどこでどういう無駄遣い。
また来週といたしましょ。

サカキシンイチロウさん
書き下ろしの書籍が刊行されました

『博多うどんはなぜ関門海峡を越えなかったのか
半径1時間30分のビジネスモデル』

発行年月:2015.12
出版社:ぴあ
サイズ:19cm/205p
ISBN:978-4-8356-2869-1
著者:サカキシンイチロウ
価格:1,296円(税込)
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「世界中のうまいものが東京には集まっているのに、
 どうして博多うどんのお店が東京にはないんだろう?
 いや、あることにはあるけど、少し違うのだ、
 私は博多で食べた、あのままの味が食べたいのだ。」

福岡一のソウルフードでありながら、
なぜか全国的には無名であり、
東京進出もしない博多うどん。
その魅力に取りつかれたサカキシンイチロウさんが、
理由を探るべく福岡に飛び、
「牧のうどん」「ウエスト」「かろのうろん」
「うどん平」「因幡うどん」などを食べ歩き、
なおかつ「牧のうどん」の工場に密着。
博多うどんの素晴らしさ、
東京出店をせずに福岡にとどまる理由、
そして、これまでの1000店以上の新規開店を
手がけてきた知識を総動員して
博多うどん東京進出シミュレーションを敢行!
その結末とは?
グルメ本でもあり、ビジネス本でもある
一冊となりました。

2016-08-18-THU