SNSがキッカケで
予約が取れなくなってしまうお店があります。
1ヶ月待ちなんてまだ地味な方。
数ヶ月待ちだとか、あるいは半年待ちだとか。
かつて、2年先まで予約でいっぱいなんですよ‥‥、
というお店もありました。
さすがに、数ヶ月前にとった予約の当日に、
どうにも都合のつかない別の用事が入ったりすると
キャンセルしなくちゃいけなくなる。
そのキャンセル分の席を待つための
ウェイティングリストまでできたりして、
これも考えてみれば形を変えた行列なのでありましょう。
行列でお待たせして申し訳ない。
あるいは予約が殺到してしょうがない。
皆様にご迷惑をかけております‥‥、
と本当に迷惑だと思っているのであれば、
その迷惑を解消する手立てを取るのが
経営者として良心的な行動のはず。
いくつか方法があるでしょう。
1つは客席を増やすこと。
そうすれば確実に予約は取りやすくなるし、
行列の長さは短くなる。
けれど客席を増やすだけでは、
座ったはいいけれど料理がなかなかできません。
結局、座って待つ時間が長くなるから
厨房の設備も大きくしなくちゃいけない。
手間もかかるしお金もかかります。
2つめは、行列が恒常的にできるから、
お客様に申し訳ないと
大きな店に思い切って移転すること。
当然、行列は短くなって、
あぁ、お客様にご迷惑をかけることがなくなったと
ホッとしていたら
「あそこの店は引っ越して
大きな店になった途端に料理の味が落ちた。
だから最近、行列がなくなったんだよ」
なんて噂が立って、
結局、お店を閉める羽目になっちゃった‥‥、
なんて悲喜劇めいたことが少なからずあるのが現実。
行列の先にあるものが目的でなく、
行列そのものを目的に並ぶ人があまりに多い。
あった行列ができなくなることは致命的。
今まで取りにくかった予約が、
いつもすんなり予約できるようになると、
なんだかありがたみが薄れるように感じてしまう。
予約のしづらさを解消したり、
行列を短くするのに一番簡単な手段は?
販売価格をあげればいいのです。
並んでも食べたいほどに価値のある料理、
何ヶ月、待ってでも行ってみたいお店なのだったら
もっと高い値段をつけてもいいはずで、
でも値上げするのなら待つのはやめようと
思う人もいるに違いない。
行列が出来るほどに「お値打ち」な料理なのであれば、
その値打ちに見合うだけの価格にしても、
お客様に迷惑をかけるわけじゃない。
他のどのお店にも類を見ないほどに、
オリジナリティーがあって
この店にこなくては
楽しむことができない料理であれば、なおさら。
値段をあげても価値を認める人たちだけで、
お店が十分満たせるくらいの値段をつける。
それが本来の経営というものなのだけど、
値段をあげるとお客様が並ばなくなる、
そのことを不人気の証ととらえ、
ますますお客様が来なくなってしまうことが怖くて、
値段をあげられない。
‥‥そういうお店がほとんどで、
つまりそういうお店における最大の売り物は
料理でもサービスでもなく、
「行列」だったり「満席」なのだというコト。
それもひとつの商売の仕方だろうから
しょうがないとは思うけれど、ちょっと切ない。
世の中には、なぜこんなに高いんだろう‥‥、
と不思議に思うお店があります。
例えば高級なホテルのロビーラウンジ。
コーヒー1杯に1000円だとか
1500円だとかという値段がついている。
高級なホテルだからその高級に合わせた
値段がついているんだ‥‥、
と理解することもできるけれど、
ホテルのロビーラウンジという場所は
おいしいコーヒーを味わうためにあるわけじゃない。
メインの目的は「待ち合わせをした人と
確実に会うことができる場所」であるということで、
その目的を正しく果たすためには、
いつも満席では困るのです。
ましてや行列ができるほどに
人気があってはならないわけで、そのため値段を高くする。
そう言えば、パンケーキが大人気だった頃、
とあるホテルのロビーラウンジの支配人が、
うちのパンケーキもおいしいんだと
何気なくSNSでつぶやいた。
そのつぶやきがきっかけになって、
ラウンジは連日満席。
ウェイティング。
支配人が叱られること、叱られること。
パンケーキ目当ての人たちがロビーに溢れて、
そのラウンジばかりかホテル自体の機能が
おおいに損なわれることになってしまった。
飲食店をはやらせるとは、簡単だけど難しいこと。
そうそう、ボクのお店を贔屓にしてくれた
裕福なおじぃちゃんは、
どこそこのお店に行列ができているよという
話を聞くにつれ、
「オレが行く店なんて、いつも予約がとれるし、
中には予約しなくてもいつも入れる店ばっかりだ」
と言っていた。
どんなお店にいかれるんですか? と聞くと、
うなるほどに上等で、しかも高価な店ばかり。
そしてそれらお店の特徴は、
「素人評論」に無縁のお店だったのでした。
さて来週から、SNS的世界をひとつ深めて、
飲食店と向き合うとはどういうことか‥‥、
と考えてみたいと思います。
発行年月:2015.12
出版社:ぴあ
サイズ:19cm/205p
ISBN:978-4-8356-2869-1
著者:サカキシンイチロウ
価格:1,296円(税込)
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「世界中のうまいものが東京には集まっているのに、
どうして博多うどんのお店が東京にはないんだろう?
いや、あることにはあるけど、少し違うのだ、
私は博多で食べた、あのままの味が食べたいのだ。」
福岡一のソウルフードでありながら、
なぜか全国的には無名であり、
東京進出もしない博多うどん。
その魅力に取りつかれたサカキシンイチロウさんが、
理由を探るべく福岡に飛び、
「牧のうどん」「ウエスト」「かろのうろん」
「うどん平」「因幡うどん」などを食べ歩き、
なおかつ「牧のうどん」の工場に密着。
博多うどんの素晴らしさ、
東京出店をせずに福岡にとどまる理由、
そして、これまでの1000店以上の新規開店を
手がけてきた知識を総動員して
博多うどん東京進出シミュレーションを敢行!
その結末とは?
グルメ本でもあり、ビジネス本でもある
一冊となりました。