長年、ブログを書いてきました。
ほとんどがレストランで食事したときに
感じたコトを書いていて、
もう20年近くも続けています。
読んでくださっている方が少なからずいて、
それがきっかけでお目にかかったり、
あるいはお目にかかった方から
「ブログを読んでたのしませいただいてます」などと、
声をかけてくれる機会に恵まれたりします。
はじめてお目にかかる方から、よくこう言われます。
「サカキさんって、グルメでらっしゃるんですネ」と。
グルメという言葉が居心地悪く、
くすぐったい気持ちになります。
「グルメ」を辞書でひくと
「美食家」とか「食通」と説明がある。
ついでに「美食家」を辞書で引いてみると、
「ぜいたくでうまいものばかりを好んで食べる人」であり
「グルメ」と書いてあったりする。
ボクは贅沢なものばかり食べているワケじゃない。
なにしろ、マクドナルドの
ソーセージマフィンが大好きだし、
何枚せいろをお替わりしてもお腹いっぱいにならない
贅沢な蕎麦より、立ち食いそばの方が好きだったりする。
だからグルメじゃないんです‥‥。
そう言っても
「いや、でも贅沢なモノも
召し上がってらっしゃるし、
何を食べてもおいしそうに表現されるから、
グルメでらっしゃるに違いない。」
と、ボクをグルメと呼ぶ人がいる。
おそらくそれは、ボクを褒めるつもりで
言ってくれるに違いない。
‥‥、のだけれど、やっぱり居心地悪く、くすぐったい。
グルメのもうひとつの意味。
「食通」を辞書で引くと、こんな風に説明がある。
食通とは、料理の味や料理の知識について詳しいこと。
またそれを詳しく知っている人物のことである‥‥、と。
たしかに、若い頃からおいしいものに対しての
好奇心が強かった。
どこかにおいしいものがあると聞けば、
行って食べてみなくちゃ気がすまない。
レストランのコンサルタントをしている、
ということもあって、知らず知らずのうちに料理のことや、
レストランの裏側のことに関する知識が蓄えられた。
普通の人が知ることができない秘密も、あれやこれやと。
そういう意味では、
たしかにボクは食通的なグルメのひとり。
レストランに行って、
「知識全開」になってしまうコトがときにある。
例えばこんなふうにです。
ココのシェフはあの店、出身のまだ若い人。
なるほど、修行した店の料理を
上手にアレンジしているなぁ‥‥。
でも、さすがに経験が不足しているのか、
出身の店の料理に比べると迫力にかけるところが見え隠れ。
それに、彼以外のスタッフが
未熟で人数も少ないんでしょう。
だからか提供時間がときに遅れる。
仕入れも安定していないのか、コースで食べると
料理によってレベルにばらつきがかなりある。
サービススタッフの気遣いも未熟で、
厨房との連携もギクシャクしてる。
ワインリストも、このクラスのお店にしてはパッとしない。
やっぱりまだまだ独立するには早かったかなぁ‥‥、
別の店に行けばよかった。
‥‥、とそんなふうに思ってどんどん不機嫌になる。
あぁ、今、グルメ気取りになっちゃったなぁ‥‥、
って反省します。
つまりボクにとって、「グルメ」というのは
ちょっと不機嫌なムードをもった言葉なんです。
だから、「サカキさんはグルメですね」って言われると、
居心地悪く感じてしまう。
ボクのコトをグルメという人に、
何を食べてもおいしんです‥‥、っていうと、
「グルメなのに不思議ですね」
って怪訝な顔で見られちゃう。
代わりに、この料理はもうちょっと工夫すれば
もっとおいしくなるのにネ‥‥、って
ちょっと不機嫌な顔していうと
「さすがグルメですね」と言われる。
自分の口に合わないコトを自慢げに語るコト。
自分はもっとおいしい料理を知っていると言うコトで、
褒められるのがグルメという人。
‥‥、だとしたらボクはグルメとは呼ばれたくない。
自分の口に合わないコトがかなしくてしょうがない。
もっとおいしい料理があるかもしれないけれど、
こんなにたのしく食事ができたことが
うれしくてしょうがない。
それがボクの食事に対する姿勢であって、
だからおそらくグルメではない。
世にいうグルメでないとするなら、
一体ボクは何者なのでありましょう。
次回、答えをさぐりましょう。
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「牧のうどん」「ウエスト」「かろのうろん」
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博多うどんの素晴らしさ、
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