オーダーバイキング。
定額料金でメニューの中から
好きな料理を食べたいだけたのんで
テーブルに運んでもらって食べるという、
今や日本のいたるところで見受けることができるシステム。
この連載を書きはじめたときには、
一般的とは言えなかった。
今のように増えるだろうとも思えなかった。
だって、飲食店の経営の定石をもって考えると、
おおいに合理性を欠いていて、
だからいつかは先細って行くだろう‥‥、
と当時は思っていたのです。
セルフサービスを前提とした
普通のバイキングレストランにおいて、
おしゃれにふるまう方法に関しては書いた。
(編集部註:こちらやこちらをどうぞ。)
けれどオーダーバイキングにおいて、
ステキなお客様と思われるにはどうすればいいのか‥‥、
ということを書くことをしなかったのはそういう理由。
だから今回は、オーダーバイキングのおしゃれな楽しみ方をテーマにしばらく考えてみようと思うに至ったわけです。
そしてまずその前に‥‥。
オーダーバイキングとは一体何モノで、
どのようにはじまってこれからどうなっていくんだろう
というようなことを考えてみようと思います。
そもそもなぜボクが、
オーダーバイキングというシステムを
合理性を欠いたものだと思ったか。
それはお店にとって利益を削る仕組みだったから。
バイキングレストランが成立する唯一の条件は
「人件費をいかに節約するか」
という一点につきるのです。
レストランの食材にかかる原価はだいたい3割。
多く使っても4割前後。
ところがバイキングレストランでは
半分近くが原価となります。
だからバイキングレストランは
セルフサービスを前提としないとなりたたない‥‥、
なのにオーダーバイキングの店では
サービスが提供される。
それを「サービス精神旺盛」と考えるのは
お客様の勝手な解釈、
経営的には明らかに合理性を欠く行為。
ちなみにここ20年近くの日本の外食産業は、
産業まるごと合理性を欠いてしまって、
だからとんでもない状態になっちゃっている。
そのことに関しては、後ほどゆっくり
説明しようと思っているけど、
合理的でないのに
それが続いてしまっているということは、
必ず裏がなにかあるということ。
まずその裏を考える。
ちなみにオーダーバイキングという言葉そのものが
日本でしか通用しない言葉。
だってバフェをバイキングというのは日本だけだし、
そのバイキングをオーダーするとは
まるで意味が通らぬ造語。
おそらく日本にしかないシステムでもあり、
オーダーバイキングのことを考えるということは
つまり、日本の外食産業の特別な特徴を
知ることになる‥‥、のだろうとも思います。
さて、そんなオーダーバイキングが
どんなお店ではじまったのか。
そこは街場の中国料理の店でした。
20年くらい前からでしょうか‥‥、
ポツリポツリとオーダーバイキングを
取り入れる店がではじめた。
当時はオーダーバイキングなんて言葉はなくて、
ただ「90分食べ放題・飲み放題」
という謳い文句で人気を博した。
そういう店に共通する特徴は、
中国出身の人たちが働いている気軽なお店。
店そのものは新しくはなく、
おそらく昔からあっとお店を
居抜きで使っているのでしょう‥‥、
看板とメニューだけが新しい。
なるほどなぁ‥‥、と思いました。
中国出身の人たちならば人件費が安くすむ。
居抜きの店を上手に使えば、投資も減る。
その分、原料費をかけることができると思えば
オーダーバイキングのようなアイディアも
現実のサービスとして導入することができるのだろう‥‥、
と。
それも確かにオーダーバイキングが生まれた
側面のひとつではあった。
けれどもっと重要なことが実はあった。
かつてのボクにはその洞察力がなかったのでしょう‥‥、
最近になって昔のコトを思い出し、
なるほどそうかと思い至ったある理由。
オーダーバイキングの店に
四川料理を売り物にしたお店はなかった。
ほぼほとんどの店が広東料理が得意なお店。
まぁ、20年ほど前の
オーダーバイキング中華レストランが
生まれはじめた頃には、
今のようには四川料理は一般的じゃなく、
中国料理のお店のほとんどは広東料理系の店。
だから当時はそれが当たり前と思っていたのだけれど、
今でもオーダーバイキングを得意にする
中国料理のお店の主力商品は広東料理。
なぜなんでしょう‥‥。
答えは来週。
なるほどなぁ‥‥、って理由です。
2018-07-19-THU