今日の本題に入る前に、
先日発信されたニュースをひとつ。
消費税が来年の10月にあがるにあたって、
財務省と経済産業省がクレジットカード会社に対して、
加盟店から受け取る手数料率に
上限を定めるように求める方針だという。
今のところ価格の3%を
ガイドラインに折衝中なんだというのです。
その目的は中小企業において
キャッシュレスで支払った人に
ポイントを還元することで、
消費税率があがったあとの消費の冷え込みを
なんとか防ごうとしている政府。
でも今のままだとキャッシュレス決済を促せば促すほど
中小企業店の経営が圧迫される。
そのため根本的な部分に手をつっこむ。
民間の契約行為にまで政府が関与するなんて前代未聞。
そこまでして、キャッシュレス社会を
後押ししようとしているのでしょう。
だとしたら、将来、昔話になってしまうかもしれない
今日のお話。
たしかに、現金で決済するよりカードを差し出し、
サインひとつでお勘定をすませてしまう方が、
格好良く見えたりします。
10年近くも前のことでしょうか。
ミラノに行って、ドゥオモ近くのカフェで
お茶を飲んだときのことです。
レストランの視察でのコト。
2つのテーブルを10人ほどで囲んだ。
お勘定をとお願いすると、
お茶とはいえちょっとした値段になりました。
割り勘でみんなからお金を集めて
支払うのも無粋に思えて、
ボクがカードで払っておきましょうということにした。
その旨を伝えると、
クレジットカードを通す決済端末が
テーブルまで運ばれる。
無線でした。
当時、そういう端末があるということも珍しく
自分で自分のカードを端末に通して
暗証番号を自ら入力という、
その一連の作業がまるで未来の作業をしているようで、
かっこいいなぁ‥‥、と思ったものです。
日本でもこういう決済が
これから当たり前になるんだろうねぇ‥‥、
とテーブルを離れることも忘れて
みんなで盛り上がっていた。
そしたらボクたちの近くでお茶を飲んでたカップルが
席をおもむろに立ち上がり、
お店をさっさと出ていった。
ちょっと目立った2人でした。
体のラインがくっきりとでた
真っ赤なワンピースを着た女性。
匂い立つという表現がぴったり来るような
艶っぽい、40代半ばくらいでしょうか‥‥、
彼女をエスコートしている男性は
プラチナグレーの縮れ毛を軽く束ねた熟年男性。
細身のパンツに素足で
グッチのスリップオンを履いていました。
情熱的に手を握り合い、
見つめ合ってずっと親しげに話をしていた。
あれ、お勘定はとテーブルの上を見ると、
男性が飲んでいたコーヒーカップの下に
1枚、お札が敷かれて残ってる。
何度もここに来ているのでしょう。
来るたび、同じものを飲み、同じ金額を払って帰る。
カードを差し出す必要もなく、
サインする必要すらないこの格好良さは
まるで別次元と感心しました。
その滞在ではこんなこともありました。
ミラノの次の滞在地、フィレンツェで
ビステッカ・アッラ・フィオレンティーナを食べようと
その専門店にみんなででかけた。
アメリカ的にいえばティーボーンステーキです。
分厚い骨付きの肉をみんなで分け合う。
店中の人が同じものを食べ、
ワインを飲んでたのしくなっていくいい店で、
グループ客も多かった。
隣のテーブルがちょうどボクたちと同じく
10人ほどのグループで、肉をもりもり平らげ、
アイスクリームも終えた頃。
グループの一人が手を上げペンを持つような仕草をし、
ウェイターに向かって宙で文字を書く仕草をする。
お勘定書をもってきて‥‥、っていう合図ですネ。
すかさず勘定書が届いたかと思うと、
彼は両隣の人と丁寧に、その勘定書をチェックする。
もう一度、今日食べたものを反芻するかのように
じっくり、文字と数字を確かめたかと思うと、
グラスをもって立ち上がる。
それからの一部始終にボクたちの目は釘付け。
来週に続く、といたします。