うちの店のサービスをチェックしてもらえませんか。
‥‥というような依頼がやってくることがあります。
昔は簡単に引き受けることができました。
こちらが用意したチェックリストをもとに
チェックして採点すればよかった。
どの店、どの会社も同じような基準で
サービスをしていた時代があったのです。
同じような採用基準で、同じように教育をし
同じような「良いサービス」を目指して
店舗が運営されていた。
だからひとつのチェックリストで
ほとんどすべてのお店のチェックができたのです。
ところが今ではチェックリストを作ることから
はじめなくてはいけないのです。
かつてお店がお客様に対して行うべき‥‥、
と言われていたサービスのフルセットを
すべて提供しているお店は少なくなった。
お店の状況。
スタッフの数や経験、習熟度。
お客様の期待にあわせて提供すべき
サービスの内容は変わって当然‥‥、
それが今の日本の飲食業の実態で、
だからそれぞれのお店が目指すサービスの基準を知ることが
サービスチェックの最初の仕事。
教育マニュアルを預かって読み、
教育担当の人に会って
どんなサービスを目標としているのかを聞いて、
その内容を反映させたチェックリストを用意する。
それはお店のサービスに対する考え方が
多様化したということ以上に、
お客様がお店に求めるサービスの基準が
多彩になったということなんだろうと思うのですね。
基準が多彩になったと同時に、
チェック、採点の仕方も変わった。
昔は理想的なサービスを100点として、
そこから引き算で評価していた。
みんながサービスの理想を求めて
一生懸命頑張っていた時代。
つまり「100点を目指す」ことが
当たり前とされた時代だったから、
経営者からも現場で働いている人たちにとっても
それはウェルカム。
チェックしながら、これはよりよいサービス力を
発揮してもらうための叱咤激励になるんだ‥‥、
と思ってチェックしていたものです。
それが今では足し算式の評価が普通になっちゃった。
チェックのスタートは50点です。
お店によってその50点の基準はさまざま。
ある店においてそれは
「お客様を不快にさせないサービスの水準」。
あるいは
「そのお店にいる人たちすべてが確実にできるサービス」。
サービスとしては最低限の内容から、
良かったと思った部分を加点して得点を出していく。
最近の若い人たちは、打たれ弱い。
叱られることに慣れていない人が多いから、
褒めて育てなくちゃいけない‥‥、
だから引き算じゃなくて足し算の方が効果的と思って、
今では仕事だけじゃなく、
プライベートで外食するときも足し算でお店を感じ、
評価するようにしている。
「足し算でサービスをたのしむ」ためにまず必要なのが、
サービスを次の公式でうけとめること。
サービス=作業+α
そしてその「+α」の部分に入るのが
「言葉」
「仕草」
「笑顔」
の3つ。
作業は食事をするにあたって
最低限、必要とされる仕事のことで、
それに言葉や仕草、あるいは笑顔がくわわることで
はじめて作業はサービスになる。
そしてそれら3つの要素の質や分量が多ければ多いほど、
そのサービスはすばらしいものになるんだという考え方。
そう思ってお店とつきあうことで
ボクは最近ストレスをあまり感じるコトがなくなった。
来週詳しくお話しましょう。