売りたいものが伝わって、
しかもたのしく迷えるわかりやすい
メニューが用意されていれば5点。
今日のおすすめを聞いて、
気の利いたチョイスを勧めてくれて6点。
あなたの好きな料理はなに? って聞いて、
即答してくれて7点。
実際に、食べたことのある料理を勧めてくれたら8点。
さて、今日は10点満点のメニュー、
のこり2点のお話です。
ひとつは
「食べる立場であるわたしたちの
希望に敬意を払ってくれる」
かどうか。
店が売りたいものばかりを熱烈に薦めるお店があります。
ボクは肉を食べたくてしょうがないのに、
今日のお勧めは魚だからだと一生懸命。
おすすめの魚の話ばかりする。
魚料理で有名な店ならかわる。
そういうお店で肉を食べたいというボクの方がトンチキで、
その思い違いに気づくようにと一生懸命、
魚の話をしてくれるのであれば、
それは純粋な親切心からなのだろう‥‥、
と納得できる。
けれど肉を食べたいというお客様の話に上の空で、
魚の話ばかりするのはなにかあるんじゃないか。
いらぬ詮索をしたくなる。
特別安い魚を沢山仕入れちゃったのかなぁ‥‥。
ならば売ったら売っただけ儲かるから
売り切りたいのかもしれないなぁ。
それならまだしも。
ひょっとしたらたくさん仕入れすぎた魚がだぶついて、
早く売れないと駄目になっちゃうから
あんなに強烈にアピールしているのかもしれない。
‥‥、なんて思って
どんどん気持ちが冷めてしまったりする。
そういうメニューブックもあります。
例えば先日いった居酒屋チェーンのメニューが
すっかり変わっていて、表紙を開くと
「当店の人気のメニュー10選」が紹介されてた。
よく売れているメニュー10種類なんだろうなぁ‥‥、
と思ってよくよく見ると、
その中に新商品であるはずのメニューが紛れ込んでる。
「人気メニュー」といいながら
「人気がでてくれるとうれしいなぁ」
というメニューに違いなく、
そういえば昔からあるメニューにしても
簡単にできるものばかりが並んでる。
人手不足の時代です。
だから手間を欠けずに売上を作りたいという
お店の都合はわかる。
でもそういうメニューばかりを売ろうとすると
サービス精神はどこにいったの‥‥、って思ってしまう。
ちなみにページを1枚めくると、
このチェーンの創業当初からずっと売り物にしているという
肉豆腐の紹介を、見開き2ページをつかって紹介してた。
たしかにおいしい。
そして手軽な値段であることはわかるのだけど、
これにしたって原価が安く、
仕込んでおきさえすれば
すぐに提供されるスピードメニュー。
だからこうして売りたいんだよな‥‥、
って思われるとしたらなんだか勿体ない。
売りたいものを売ることは大切なこと。
けれどそのためにセールストークばかりを練習しても
しょうがない。
お店のわがままを聞いてもらう前に、
まずお客様のわがままを聞く。
説得上手になるには、聞き上手になる。
これってコミュニケーションの基本の基本ですものネ。
ボクの自宅の近所に中国の人がやってる
中華料理のお店がある。
そこに元気で人気のおばさんがいて、
料理のことを聞くとなんでもよく知っている。
すごいネ‥‥、って感心すると、
だって私はこの店の料理を
まかないでもう何十年も食べているもの、
って当たり前のように言う。
忙しいときには厨房に入って料理を作る手伝いもする。
だから作り方もわかった上ですすめてくれる。
これほどの説得力はなかなかないに違いなく、
しかもきのこが苦手だから
この料理からきのこを抜いて作ってもらうこともできる?
なんていう面倒くさい質問にも誠意をもって答えてくれる。
そんなおばさんが
メニューの説明をほとんど終わったタイミングで
「豆苗炒めもおいしいよ」って必ず言う。
おいしい。
けれどすごく儲かる料理で、だからでしょうネ‥‥、
必ず薦める。
ボクの中ではこのおばさんは「豆苗おばさん」(笑)。
儲かるものを勧めてくるって、
それだけ見ると嫌なことだけど、
お店の料理を知ってる人から親切にされ、
笑顔で勧められると悪い気がしないものです。
つまり、メニューの説明における最後の1点は
笑顔とウィット。
そろそろ注文の時間となりました。