いちねんせいになるみんなへ、
『Say Hello!』 |
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ほぼにちわ! そろそろ桜の季節ですね。
この春、別れと出会いを経験された方も
おおぜいいらっしゃると思います。
ある保育園の先生から
「『Say Hello! あのこによろしく。』を
卒園式で配ります」
と、おしらせをいただきました。
そこで、「ほぼ日」は、この保育園の卒園式に
そーっと、おじゃましてきましたよ!
先生の名前は、千葉洋介さん。
横浜にある保育園で、
年長組を毎年受け持っている、
いわば「送り出し」のエキスパートです。
「この本を見つけたとき、
『「ほぼ日」の本だなぁ』と思って、
何の気なしに手にしたんですよ。
ぼくは、とくべつに犬好きでもなかったから、
ごくふつうに、パラパラとページをめくっていって。
そうしたら、この本のなかに書いてあった一行に
目が奪われてしまったんです」
その一行とは?
本の最後のほうにある、
“みんな、いまごろ、なにしてるのかなぁ。”
だったのです。
「この一文は、
巣立って行った子どもたちの顔を思い浮かべては
ぼくが年中言っている、口癖なんです。
ほんとに、そのまんま
"みんな、いまごろ、なにしてるのかなぁ。"
って、毎日、思ってます。
この一行を見て、この本を、
今年卒園する18人の子どもたちに
渡そうと決めました」
千葉先生の保育園では、
2歳から6歳までの4年間を、
朝7時から夜7時まで、
子どもたちがすごします。
いっしょにごはん、いっしょに昼寝、
どろんこ遊びに、たくさんの行事。
言葉もろくに話せない、
トイレにもひとりで行けなかった
ちいさな赤ちゃんたちが、すこしずつ
個性いっぱいにおおきくなり、
それぞれはなればなれになって、
今日、保育園から巣立ちます。
「この本を、いま、子どもたちが見ても
かわいい犬の本だね、と思うくらいでしょうね。
この本に何が書いてあるかは、
いま、わからなくたっていいんです。
本棚に差しておいてくれればいい。
大きくなっていく途中で、ときどき開いて、
『あれ? あれれ?』と感じるときが
きっと来るでしょうから」
年長組のなかで、
いちばんのいたずら好きだったKくん。
卒園式では、なぜか何度も
首を傾げていました。
「この本に出てくる犬は
ジャックラッセルテリアといって、
とても飼いづらい犬だ、と書いてありました。
そこがなんだか、子どもたちとそっくりでね。
子どもは、大人のためにいるんじゃないから、
従順なわけがない。
Kくんにも、いろいろと手を焼きましたよ。
そんなKくんが、式のあいだじゅう、
首を傾げている。
理由を訊いてみたら、
『なんか、よくわからないきもちなんだよ。
なんだろ、なんだろ』
と、答えてくれました。
それが、みんなと別れる寂しさなのか、
小学校へ行くうれしさなのか、わからないけれども、
この本のことも、子どもたちはそんなふうに
少しずつわかっていってくれると思うんです」
Kくんのそんな姿を見て、千葉先生は
涙が止まらなかったそうです。
『Say Hello! あのこによろしく。』を
受け取った子どもたちは、
千葉先生の予想どおり
「ワーかわいい!」
「本がシッポになってる!!」と
おおはしゃぎ。
ここまでみんなでおおきくなったんだね。
新しい環境に向けて
今日で、はなればなれになってしまうけど、
きみの本棚に入れて、
ときどきページをめくってみてね。
そして、いつか大人になったとき、
おぼろげでもいいから、
覚えていてくれているといいですね、
"みんな、いまごろ、なにしてるのかなぁ。"
と思っている先生がいたことを。
千葉先生、
『Say Hello! あのこによろしく。』を
すてきなことに役立てていただいて
ありがとうございました!
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2005-03-31-THUの記事を再構成しました。 |
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