南麻布のテンプル大学ジャパンキャンパスから
六本木方面に歩くと、
麻布十番商店街にたどりつきます。
ここの一画で、
和菓子店の亀澤堂(かめざわどう)を営む三代目の方から、
ツアー質問箱、最後の質問集めをしたいと思います。
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亀澤堂。麻布十番大通り沿いにあります。
昭和7年創業です。
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営業中に、おじゃまいたします。
「なんのことか、
あんまりわかってないんですけども、
よろしくお願いします」
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そして、いつも10種類くらいの
つくりたての和菓子が並んでいます。
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葭原さん、新しい和菓子の開発などは
ご自身でされるんですか。
「和菓子の勉強会のような集まりがあって、
そこで情報交換したりします。
あたらしい材料や、
作り方や作り方を学んで
できそうかどうかやってみて、
試作を重ねていくんですけどね」
勉強会が。
「うん。そこではとにかく
自分の未熟さみたいなものを知って、
帰ってくることが多いでしょうか(笑)。
勉強会にやってくるのは、もちろん
和菓子屋さんばっかりです。
和菓子屋さん、
みんないっしょうけんめいやってんだ、
ってことがわかるんです」
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商店街のお店同士でも
いろんな相談をすることがあるそうです。
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亀澤堂さんで、
いちばんのおすすめのお菓子は‥‥
「この『麻布遊』(あざぶゆう)でしょう。
だってここは麻布ですよ? なんちゃって」
けしがまぶしてあって、
おいしそうですね。
「こしあんをぎゅうひでくるんで
けしの実をつけます」
私は麩まんじゅうが好物なんですが、
今日は売り切れなんですね。
「そうです。売り切れで、残念。
麩はね、変わってて、
なんでか、ゆでるんですよね」
調理法が?
「そう。ふつうはおまんじゅうって、蒸すでしょ?
温泉まんじゅうとかも、みんなそうです。
だけど麩は、蒸すとうまくいかない。
ゆでてプクッと浮かんできたらできあがりなんです」
“ゆで”に疑問が?
「なんだかね」
お客さまには、どういう方が多いですか?
「そうですね、やっぱり
おみやげものにされる方もいらっしゃるので、
年配の方が多いです。
日々のおやつを買いに
ちょこちょこ来てくださる方もいるし、
近所の人が、用事も兼ねて
おしゃべりに来てくださったり。
そのかわり、ぼくもそのお店に
ちょこちょこおじゃまするし」
用事というのは?
「おもにまぁ、行事の打ち合わせや調整です。
商店街の行事って、意外にたくさんあるんですよ。
夏には大きな納涼まつりというのがあって
数か月前から
月に4〜5回、みんなで打ち合わせしたりします」
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店内左にある小さな机で
打ち合わせをすることも多いのだそうです。
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お店を経営なさっていて、
いちばんうれしいことは何ですか?
「商売してて、やっぱりうれしいのは、
同じお客さんがもういちど来て
おいしかったよ、とかなんとか、
言ってくださるときです。
そのためにもがんばんないと
いけないんですけどもね」
今日は、谷川俊太郎さんへの質問を
集めにうかがったんですが‥‥
「さっき、麩をゆでるのは
不思議だと言いましたけど」
はい。
「あずきは、なんで煮るのかな?
知ってます? あずきは誰が最初に煮たのか」
‥‥あずきを、煮る?
「不思議なんですよねー。
豆なんだから、炒めたり炒ったり
かつおや昆布のダシで煮たりしても
よかったんだと思うんだけど、
なんで煮たのかなー」
ええっと‥‥
「コーヒー豆は、誰かがまず
そのまま舐めたらしいんですよね。
舐めたらなんだか元気が出るみたいだ、
ってことになって。
コーヒーはわかりやすいんだけど」
それで、焙煎して、
粉にしてお湯で濾して飲んだ‥‥
いやあの、そのほうが、複雑な気が‥‥
「あ、そういやそうだね」
‥‥煮るものって、あずき以外にも
いろいろ‥‥
「あるよね、ははは、そういやそうだね」
お、お米も‥‥
「あ、はははは」
ははははははは。
「お米ね? なんで炊いたんだろね?
なんでついておもちにしたんだろね?
そういや、わかんないことばっかりだ!」
ははははは。
「そうだ、そうだ!」
葭原さん、毎日あずきと
つきあってるからですね。
「あずきをとって、
干したり削ったり砕いたりして、
お湯の中に落としちゃったんだ、きっと。
解決しちゃったよ」
いろいろやってみて
いちばんおいしかった料理法が
いまに残ってるって感じなんでしょうかね?
「‥‥そうだねぇ。そうだ、そうだ!
わははははは」
「いまの質問、なし、なし!」
葭原さんは
素材と調理法の関係を
いつも考えていらっしゃるんですね。
「ちょっと待ってくださいね、
ちゃんとした質問を考えるから‥‥」
いいや、あずきはなぜ煮るのか、で
いきましょう。
「だめ、だめ!
じゃあね、じゃあですね、
ぼくがよく考えることを、もうひとつ。
前に働いてたとき、
よく疑問に思っていたんですけど‥‥
これはちょっと、ほんとによく思ってて」
では、はい、お願いします。
「すごくいいことを
偉そうに言ったりすることが、
自分にもときどきあります。
そういうことを好きな人もいるかもしれない。
だけど、そういうときは、
そのことがたいていできてないですよね」
はい。
「いや、自分でもよく思うことなんですけどね。
これでがんばるぞ、と、胸をはって言うのは、
おめぇがいちばんできてないじゃないか、
って人なんですよ。
どうしてそれを口にしちゃうのかな。
自分の目標の、ちょっと上を
言っちゃうってことなのかな?
宣言する人がなんでダメなのか。
それを谷川さんに訊きたいです」
なるほど。
「ついつい、今回の目標は○○でいきましょう!
なんて、前に出て胸をはって
口走っちゃうでしょう。
それは、いいことなんですか?」
いいかわるいか‥‥どうでしょう。
「ねぇ?」
そちらの質問、質問箱に
集めさせていただいてもいいですか?
では、いただきます。
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葭原さん、ありがとうございました。
また来ます、亀澤堂。
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5か所をめぐったツアー質問箱、
このあたりで、終了したいと思います。
さて、いくつ集まったでしょう?
2010年の元旦から、
谷川俊太郎さんによる
回答編がはじまります。
どうぞお楽しみに。
そして‥‥みなさん、よいお年を!
(回答編につづく)
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