乗組員やえの疑問

雷が落ちたらどうなるの?

スカイツリーおじさんの解説

もちろん大丈夫なように設計しています。
東京スカイツリーは世界一高い自立式電波塔ですから、
当然、高い確率で落雷を受ける可能性があります。
関東地方の年間雷雨日数、タワーの高さから算出した
予測落雷回数は年間十数回です。

建物の設計においては、
「JIS規格」に準拠した、避雷針などの雷保護設備を
設置する義務があるのですが、
現在の日本においては、新旧2種類の「規格」があり、
どちらに基づいてもよいことになっています。
東京スカイツリーのように600mを超える
高さの建築物は例外的なものですから、
一概に、「新しい規格」にあてはめると、
無駄が増え合理性を欠いてしまう面もありました。
また一方で、
国際的な標準規格は2006年に改定されており、
それと比べれば、日本の雷保護に関する「規格」は
整備途上にあるともいえそうです。

そこで、東京スカイツリーの雷保護計画は、
国際的な規格の動向も踏まえて考えました。
まず、「旧規格」の考えに則り、
日本の法規で設置を義務付けられている
受雷部(意図的に雷を落とす箇所)を
タワー最頂部に設けました。
さらに、確実な雷保護を行うために
タワー塔体と東京スカイツリーイーストタワー屋上に
自主的に受雷部を設置することとしました。

タワーにおける受雷部は、
頂部避雷針、ゲイン塔および塔体の鉄骨など
全てが受雷部となりえます(だって鉄骨ですからねー)。
また、メンテナンスデッキ、手摺、
展望台外壁パネルなども
受雷部として耐えうる構造として、
それらがタワーの主鉄骨と「電気的」に
接続されるように計画しています。

要は、雷がタワーのどこに落ちても、
「雷がタワーの主鉄骨を通って地下にアースされる」
という仕組みなんです。

タワーの主鉄骨は溶接または高力ボルトにより
接続されていますから、
これは「電気的」にもつながっているわけでして、
タワー全体が「一本の電線」のように機能するのです。
雷は、タワーに落ちたところから主鉄骨を流れ、
基礎杭の中にある鉄骨へ流れて、
最後は地面の中へと、電気を放出します。
もちろん、落雷発生時には
大きな電流が構造体に流れることになりますが、
必要な対策を施すことによって、
ひとや施設に悪影響がないことを確認しています。

ところで、
「もし、タワーの構造体に触れている時に
落雷があったら?」と思う方がいるかもしれません。
でも、それも大丈夫です。
これは、
「なぜ電線にスズメがとまっていても感電しないの?」
という不思議と一緒なんです。
電線とスズメの関係でご説明しましょう。

感電とは、体に電流が流れて傷害を受けることですが、
では、どういうときに感電が起きるのでしょう?
まず、一本の電線に止まっているスズメは、
止まっている電線の電圧
(街の電線であれば6600Vまたは200V)を
帯びますが、
電気の通り道が無いため
体に電流が流れることはありません。
これを専門用語では「等電位」というようです。

でも、もし、変わり者のスズメが
1本の電線の上に片足で立ち、
もう一方の足を他の電線や電柱につけたら、
電気の通り道が出来て感電します。
かわいそうなスズメですね。
だから、人が一本の電線にぶら下がっても
感電しない可能性が高いです。(絶対試さないように!)

もう一つ、
一本の電線にスズメが2本の足で立っていても、
足から足へは電流が流れそうな気がしますよね。
……ばれましたか(笑)。
実はちょっとだけ流れています。
でも、電気を流すために作られた電線は
抵抗(電気の流れにくさ:単位はΩオーム)が
ほとんど0Ωです。
動物も水分があるので、電気が流れますが、
抵抗は高いため、ほとんどの電気は電線を流れて、
スズメには流れません。
流れても影響が無い程度になります。
また、実際には電柱の電線は被覆がしてありますから、
たぶんスズメに電流が流れることはありませんけどね。

なお、落雷時に地上でタワーの構造体に触っていても、
タワーの場合、地面も鉄骨の一部(電線の一部)ですから大丈夫です。

日本には雷神様の信仰があります。
雷神様のおわす空に近い東京スカイツリーですが、
その高さを利用して、
継続した雷撃電流の観測とその特性の解明を目的に
東武タワースカイツリー・東京大学・電力中央研究所
による共同研究が予定されています。
雷神様とも仲良くできるといいですね。

ちなみに、電気設備設計者の渡邊薫という者は、
アフロカツラと角をつければ雷様そっくりな愛嬌です。

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2011-07-12-TUE