Cacco

Kanoco × Hobonichi

耐熱ガラスの老舗メーカーHARIOが、
職人の技術をつなげるために始めた
「HARIO Lampwork Factory」。
この工房で、「Cacco」のイヤリング
「泡沫 / うたかた」がつくられました。

冷たく硬いはずのガラスなのに
不思議に、どこかやわらかい印象。
それはきっと、ひとつひとつが、
職人さんの手仕事でつくられているから。
量産品のための機械ではできない
繊細な、そして自由な造形です。

ファクトリーの成り立ちや制作のことなど、
HARIOの中村まどかさんと、
ワーカー(職人さん)の平野さやかさんに
工房のある小伝馬町のショップで
お話をうかがいました。

HARIO Lamp work Factoryで
                            「Cacco」のガラスのイヤリングができるまで。

職人の手仕事だからできる、
ガラスのアクセサリー。

――
ほぼ日とKanocoさんでつくる新ブランド、
「Cacco」の最初のラインナップに
ガラスのイヤリング「泡沫 / うたかた」があります。
これを手仕事でつくってくださったのが、
HARIO Lampwork Factoryです。
中村
お声かけいただいて、ありがとうございます。
――
「泡沫 / うたかた」は、Kanocoさんが
HARIOさんのアクセサリーを幾つも持っていて、
気に入って使っていたというのがスタートでした。
Caccoというブランドを立ち上げるにあたって、
光とか水とか、透明感のあるもの、キラキラ光るもの、
そういう自然のイメージを大切にっていうことがあって、
それならHARIOさんにお願いするのがいい、と。

▲ 光や水の粒をイメージしてつくられたイヤリング。
透明なガラスは、どんな色や素材の服にも自然になじみ、
その色を取り込んで輝きます。
映り込む風景によって変わる表情も、魅力です。

中村
私たちみんな、とてもうれしかったんです。
じつは、私自身も、Kanocoさんが
ずっと前から好きなモデルさんでしたし、
今回のデザインを担当した内山も、
ほんとにもうドンピシャの世代なんですね。
ですから、すごく光栄な気持ちで。
――
HARIO Lampwork Factoryが
アクセサリーを手がけていることは、
私たちはもちろん知っていますけれど、
一般的には、HARIOさんというと、
コーヒーメーカーやティーポット、
耐熱ガラスのボウルとか保存容器などを
最初に思い浮かべるかたも多いと思うんです。
そもそもこのファクトリーは
どういうことから始まったんですか?
中村
HARIO Lampwork Factoryは、
法人化が2015年で、
ブランドとしては今年で8年目になります。
企画が始まったのは2013年です。
きっかけは東日本大震災だったんですね。
茨城県の古河の、周りは田んぼ、というような場所に
私たちの食器の工場がありまして、
そこは煙突がなくて、電気溶解炉でガラスを溶かすんです。
そこが、震災の影響で電気がストップしてしまって、
ガラスが固まって使い物にならない状況になりました。
プールほどの炉に固まったガラスをくだいてできた
カレットというものをどう活用していこうか、
というところに直面したときに、
バーナーワークでアクセサリーを、
という新しい展開が生まれたんです。
――
そうだったんですか。
固まってしまったガラスを生かすために。
中村
それが、まずひとつの原点だったんですね。
さらに遡りますと、HARIOというのは、
そもそもはガラス製の理化学製品の会社なんです。
吹きガラスやバーナーワークの技術で、
手仕事でそういった製品を作っていたことが
もうひとつの原点ですね。
――
そちらの歴史はもっともっと古いんですね。
HARIOさんそのものは、いつごろからあるんですか。
中村
1921年です。
――
わあ、100年を超えてるんですね。
中村
そうですね。始まりは神田なんです。
今、ほぼ日さんの本社がある神田にあって、
最初は煙がモクモク出るような工場だったようです。
そこから徐々に大きくなっていって、
周辺環境への配慮ということもあって、
転々としていく中で古河に移ったのが1971年。
70年代にはもう煙突のない工場を実現させていたんです。
――
へえー。
その時代に機械化もされて。
中村
古河工場ができるときに機械化が導入されたんですが、
職人の手仕事というものはやっぱり必要なんですね。
でも実際には働く場は小さくなって、
職人が減り、手仕事も途切れてしまう。
その技術をなんとか守り、繋いでいきたいという
会社としての思いもあったんですね。
そういった背景が重なり合って始まったのが、
HARIO Lampwork Factoryなんです。
――
お仕事が継続的にあれば、
職人さんたちの技もずっと続きますものね。
アクセサリーを、っていうのはなぜ?
中村
バーナーワークとの相性ですとか、
お客様が手に取りやすい価格帯を追求して、
アクセサリーになったというのはありますね。
大きいものをすべてバーナーで作ろうとすると、
お値段がかなりお高くなってしまうんです。

オリジナルは、クリアなガラスで。

――
ここ数年でラインナップがすごく増えましたねえ。
技のバリエーションも増えている感じがすごくします。
中村
今、カタログに載っているだけでも、160種ぐらい。
店舗も増えて、アクセサリーのお店だけで、
全国に6店舗になりました。
――
職人さんの仕事も増えて、素晴らしいですね。
店舗のご当地のオリジナルもあるんですか?
ここには江戸の名物、べったら漬けのモチーフのものが。
中村
そうなんです。
たとえば名古屋のお店限定で、
シャチホコのしっぽをイメージしたものがあったり。
――
楽しく作ってらっしゃる感じが伝わってきます。
そういうオリジナルが作れちゃうわけですよね。
思いついたアイデアをすぐに形にできちゃう。
中村
フットワークは軽いと思いますね。
いちばんはじめの材料のところから、
デザイナーも職人さんも、自社内にいますから、
作りたいものを、すぐ形にできるんです。
――
全部丸ごと、できちゃうんですね。
中村
そうですね。丸ごとできます。
アクセサリーは細いガラスの棒を
バーナーで溶かしながら作るんですが、
その材料も自社工場でつくっています。
今、日本の耐熱ガラスメーカーで
ガラスを溶融する工場を持っているのは、
うちだけなんです。
中村
HARIO Lampwork Factoryでは、
他社とのお仕事では色を使うこともあるんですが、
オリジナルは、クリアを大事にして物を作っています。
そこは、うちのブランドの信念でもあるというか。
自社工場のガラスが透明というのもあるんですけれど。
――
形や大きさはすごく自由だけれど、
そういうポリシーがあるんですね。
中村
異素材との組み合わせや、
加工によって質感を変えるものはあるんですが、
ガラスそのものはクリアで、やっています。
――
ああ、真珠や金箔と組み合わせたりとか。
それも透明なガラスと引き立て合う感じで。
この透明感こそ、HARIOのもの、っていう。
中村
ちょっと、手前味噌ではありますが(笑)。
――
今、職人さんは何人ぐらいいらっしゃるんですか。
中村
この小伝馬町では、20名未満ぐらいですが、
全国に、ここを含めて7拠点ありまして、
合計すると、60、70人ぐらいの規模になります。
職人さんも、若い女性が多いのが
特徴的かなっていうふうに思っていまして。
こちらの平野はガラスの学校で勉強して。
平野
そうですね。専門学校に通いました。
――
平野さんは、勉強しているときから、
ここがあるのはわかってらしたんですか。
平野
一度、学校に行く前に問い合わせし、
経験者ではないと難しいのでと
ガラスの学校を紹介していただきました。
――
もともと、アクセサリーが作りたかったんですか。
平野
そうですね。学校にはアクセサリーが作りたくて入学して。
自分の作りたいものと、この会社の作ってるものが
ちょうど一致して、
あらためてこちらに入りたいなと思って。

スピーディーに、繊細に。

――
今回のご依頼の最初は、Kanocoさんのイラストから。
そこから考えていただいたんですよね。
中村
小さな光の粒を耳たぶに沿わせるイメージで。
完成までの間には、
Kanocoさんにフィッティングしていただいたり、
ご希望やご意見をいただきながら。
装いのワンポイントになる
デザインを目指すのであれば、
もうちょっと細かい粒が集まったような感じを
表現できたらっていう、デザイナーの内山の考えと、
微調整を加えながら進みましたね。
――
そうでしたね。
結局5回ぐらい試作をしていただいて。
最終的には、いろいろな大きさの粒が
ランダムに集まっているようなスタイルに。
中村
職人ともずいぶん相談しながら、
図面もつくって、作業してもらいました。
――
そして実際に作ってくださったのが、平野さん。
とっても繊細なお仕事ですよね。
これは、粒々をたくさん作ってから
くっつけていくんですか?
平野
いえ、1個1個作りながら、
続けて玉をつけていくような感じです。
――
えっ。じゃあ、最初の、始まりのところは‥‥。
平野
ひとつの玉から始めるんです。
材料のガラス棒をよく焼いて溶かして、
元の玉にくっつけて、っていう繰り返しで。
――
ひと粒から、増殖していくみたいに。
平野
そうです、そうです。
ガラスとガラスをつける、溶着っていうんですけれど、
そこをしっかりつけるのが難しいんです。
つけながらよく焼いて、つけて、よく焼いて、
玉と玉のつなぎ目が割れないように、
しっかりとつけていくんです。
――
平面同士じゃないから、そこが甘いと
取れやすかったりもしそうですね。
材料のガラス棒は、太さが何種類かあるんですね。
作るアイテムによって使い分けるんですか。
平野
そうですね。選んで。
一番細いのは直径が2ミリで、
今使ってるのは3ミリの棒ですね。
3ミリが、大の粒も小の粒も作りやすいので。
――
それを、図面にそって作っていく。
玉の大きさも何種類もあって、立体的で、
数もたくさんですよね。
平野
最終的な形や大きさも同じになるように、
サイズ感にも気をつけながら。
玉の位置がちょっとでもずれると…。
――
どんどんずれていっちゃいますよね。
そうするとできあがりが変わっちゃう。
平野
そうなんです。
中村
この立体感と、溶着をしっかりという、
その狭間が難しい。
平野
そうですね、一番難しい。
全部の方向から焼いて、みたいな。
――
それ、すごく集中する作業ですよね。
平野
はい、すごく集中します。
ちっちゃい粒は目を集中させて、
つけていくんですけれど、
熱を当て過ぎると、ガラスが溶けきってしまって
丸じゃなくなっちゃう。
――
うわー、つらーい。
しかも、どんどんやっていかないと、
固まっちゃうんですよね。
これ、どのくらい時間がかかるんですか?
平野
えーっと、そうですね。
私の感覚だと、片耳20分ぐらい、
両耳で40分ぐらいなのかなぁと思います。
――
ええっ!速い!
こんなにたくさんの粒なのに。
あ、でもゆっくりやっていたらダメなんですものね。
綺麗な丸い玉を作ることがまずあって、
さらにそれをスピーディーにくっつけていく。
同時に集中もしなくちゃならない。
それは大変です。
平野
そうですね。
ひとつひとつの玉の形がわかるようにしつつ、
よく溶かしながらつけていかなくちゃならないんです。
――
そんなふうに作ってくださってるんですから、
これはますます大切にしなくちゃ、と思いました。
こういう感じのものは、
今までもお作りになってたんですか?
平野
HARIO Lampwork Factoryでは、
丸がつながったデザインのものはいくつかあって、
ちょっと慣れてはいたんですけれど。
――
まっすぐに並んでいるものや、
輪になっていたりするものですね。
平野
はい、そうなんです。
でも今回のような、
粒が全方位でつながってるデザインは、
なかなかやったことがなかったので、
そこはすごく難しく感じたんですけれど。
かわいいデザインでもあるので‥‥、
はい、がんばりました(笑)。
中村
耳たぶのカーブにできるだけ綺麗に沿うように、
というのも、たいせつなポイントですね。
ですから、ガラスももちろんなんですけれど、
金具をどこの位置につけるかっていうことも、
かなり慎重に、確認しながら進めました。
――
みなさんががんばってくださって。
ここまで大小中の粒がギュッとしてるものは
今までにない感じですよね。
Kanocoさんもすごく喜んで、満足されて。
中村
私たちもうれしいです。
モチーフが多少ボリューミーでも、
人を選ばず、シチュエーションを選ばず、という、
クリアガラスのいいところが出せたと思います。
――
たくさんの方が身につけてくださって、
キラキラを楽しんでいただけると思います。
ありがとうございました。

(おわり)

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