タモリ先生の午後 2008。 「スロー人」のすすめ。


第11回 30小節に1発の男。
タモリ あるクラス会のときにね、朝飯を食ってたら
自分の女房のじまん話だけを
えんえん、しゃべり続けるやつがいたんですよ。
糸井 迷惑ですねぇ(笑)。
タモリ まぁ、ちょっとくらいならいいですよ?

でもね、なんで、
こんなにも聞き続けなきゃならない?
いい加減、みんなウンザリしてたんです。

糸井 ええ、ええ(笑)。
タモリ で、どう切り上げようか、この場を‥‥と。

そのとき、その「ふだんは無反応なやつ」の
「30小節に1発」が、出た。
糸井 出ましたか。
タモリ いいタイミングで、ポソッと
「ちょっとオレ、うんこ行ってくる」。

糸井 ははははは(笑)。
タモリ そしたらみんな、いっせいに立ち上がって
「おーおー、オレもオレも!」っつって。
糸井 堰を切ったように(笑)。
タモリ そんな全員がね、同時にってありえないでしょ。
でも、そのひとことが、みんなを救った。
糸井 いい話だなぁ(笑)。
タモリ ちなみに、この「30小節に1発」のやつは、
もうずーっと長い間、なぜか
飲み会で一銭も払わないことになっている。

糸井 す、すごいねー(笑)。
タモリ もう、何十年と飲んでんですよ?
その間、ビタ一文も、払わない。

ぜんぶで5人の仲間なんだけど、
会計は、もう「はじめから4で割る」と。
糸井 ふだん、その人は
どんなことをなさってるんですか?
タモリ コピーライターですね。
糸井 あ‥‥そうですか(笑)。
タモリ で、電話をしてもね、朝から夜の10時くらいまで、
ずーっと会社にいるんです。

同い年なんですけどね、そいつは。
何をそんなに、やることがあるのかと。

で、そいつの奥さんに
「仕事、すっごく忙しいんだね」って聞いたら、
完全に博多弁で
「さばけきらっしゃれんと、あん人は」(笑)。

糸井 「さばききれないだけだ」と(笑)。
タモリ 他にも、同じようにテンポは遅いんだけど、
それに加えて「強弱の激しいやつ」とかもいて。
糸井 (笑)
タモリ その「強弱の激しいやつ」は
これまた別の「ヘンなリズムを刻むやつ」を
ずーっと攻撃してたりしてるんです。
糸井 それを見てるんだ、みんなで(笑)。
タモリ そう、キャンキャンやってんのを、みんなで見てる。

「おまえはいつも口だけで何にもしないじゃないか、
 むかしからそういうやつだったよ、
 今回も結局、ぜんぶオレに押し付けやがって、
 高校時代から、ほんとに変わってないな‥‥」と。
糸井 責め立てるわけですね。
タモリ 言われてるほうも「ヘンなリズム」ですから、
「うん、うん、うん」って
ちょっと笑いながら、聞いてるんですよ。
糸井 かなりヘンな状況ですねぇ、それは(笑)
タモリ で、じぃーっと聞いてて、最後にひとこと、
「今日はいつもより厳しいな」って(笑)。
糸井 いい、いい(笑)。
タモリ あっちのほうでは、
「30小節」ごとの「ドーン!」が、入り。
糸井 いいですねぇ‥‥その会。
タモリ いやいやいや‥‥、
全員、60越えてんですよ!

糸井 でも、なんだか
楽になれそうじゃないですか(笑)。
タモリ まぁ、楽にはなれるけども(笑)。

<つづきます>


2008-01-07-MON